整形費用は2000万円以上! 百田尚樹も認めた超整形美人の光と闇

暮らし

公開日:2013/12/6

 「まさに『モンスター』のヒロインそのものだ!」。これは、百田尚樹が『超整形美人』(ヴァニラ/竹書房)の帯に寄せたコメントだ。

 本書は、ヴァニラによる初の自伝的フォトエッセイ。表紙でニッコリとほほ笑む不自然な美貌――大きな目、すらりと高い鼻、とがった顎――を持った女性が、著者のヴァニラである。もちろん、美貌を手に入れたのは、『モンスター』(百田尚樹/幻冬舎)のヒロイン田淵和子と同じ美容整形という手段。合計2000万円超え、手術回数は30回以上だという。

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 驚くべき数字と彼女の姿は、テレビや雑誌などでセンセーショナルに取り上げられることが多い。事実、今年10月に放映されたテレビ番組では、彼女の整形歴、過去、そして豊胸手術の密着映像を公開。直後に、ネットでは“整形モンスター”という揶揄も飛び交った。

 ヴァニラを物語るときのお決まりのエピソードは、こんな感じだ。小中学生時代に「ブサイク」といじめられ、父親から「ブス」「いらない子」とののしられ、外見コンプレックスを克服するために、夜の世界へ。クラブのホステスとして整形費用を稼ぎ、思いのままに美容整形をくりかえしている――。

 だが、人間とはそんなに一面的ではない。本書からは、常にヴァニラが貫き通してきた「負けたくない」「自分の力で自分を変えて逆境に打ち勝ちたい」という姿勢を垣間見ることができる。

 たとえば、小学生時代。彼女はどれだけいじめられても、家庭環境によるストレスで自家中毒にかかり点滴で栄養を取る生活になっても、「負けたくない」と学校を休むことはなかった。高校時代、ダンス部に入ったのも、バンドのボーカルに憧れ、人前に出るのに慣れたかったからだ。

 彼女がホステスという“接客業”に就くことを決めたのも、単純なお金ほしさだけが動機ではなかった。お金を貯めるだけならば、借金をしても、別の水商売の道を選んでもよかっただろう。高校時代、バイトに明け暮れた彼女は、こう回想している。「友だちは同じファストフード・バイトでもレジやフロアをやっていたけど、人前に自分の顔をさらしたくない私にはできない仕事だった」。そんな彼女がホステスになった目的は――「初対面の人と話すのが苦手で、それを克服したかった」。

 この仕事は、しばらくの間彼女を苦しめることになる。仕事を始めてから1年ばかりは、客の前に出てもこわばった笑顔を浮かべながらも、まったく話せないまま。なめらかに場を盛り上げる先輩たちを前に、いたたまれない気持ちになったりもした。

 彼女は常に、自分を変えたいともがき苦しんでいた。外見だけではない。自信がなく、小さく縮こまって、自分への悪口に反論もできない自分を脱ぎ捨てたかったのだ。

 整形で得た美貌は、彼女の外見だけでなく内面も変えたことだろう。初めて整形で手に入れた二重まぶたは、「初めて自分の顔を、愛おしい」と思わせてくれた。外見を変えるに連れ、「うつむいて歩いていたけれど、前を向けるようになった」。彼女は、自分自身の手で自分を変えたという達成感、そして自分こそが自分の人生の舵を切っているという実感を手にしているに違いない。

 現在、人前に出るヴァニラは、カスタムした体を見せつけるように露出し、自信に満ちた表情と口調で話している。しかし、そこにはときおり臆病でオドオドした少女のまなざしがよぎる。本書では「強がることで本物の強さを手に入れた」とのセリフがたびたび出てくるが、ヴァニラは精神的な強さを手に入れる意味では、まだ成長途中なのではないだろうか。

 『超整形美人』を手にしたら、ぜひカバーを外してみてほしい。そこには、中学校の制服を身にまとったヴァニラの姿がある。彼女は変わった。しかし、そのほとんどは外見だ。

 もし可能ならば、もっと内面的にも成熟したころ、新たなカバーもう1枚をかけて『超・超整形美人』を書いてほしいと願う。外見がどのように変化するにしろ、自らの力で人生を切り開いた女性の半生こそ、整形を揶揄する言葉などかき消すほどの強さを持っているはずなのだから。

文=有馬ゆえ