ユーザー3億人突破 LINEを生み出した企業哲学とは?

業界・企業

2013/12/9

 LINEのユーザー数が全世界で3億人を突破した。開発したのは、韓国のインターネットサービス最大手のNHNの日本法人、NHN Japan(現・LINE株式会社)。実はLINEは日本で誕生し、世界へと広がって行ったサービスなのだ。一体何故NHNは世界を巻き込む大ヒットを生み出すことが出来たのだろうか。そのアイデアはどのようにして生み出されたのか。

 コグレマサト・まつもとあつし共著『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?』(マイナビ)では、LINE誕生の秘話やその人気の秘密について解き明かしている。本書の中にはLINE誕生の立役者となった執行役員の舛田淳氏へのインタビューも記載されており、舛田氏はLINE誕生の経緯について語っている。

 LINEは知り合い同士の雑談的であるが深いコミュニケーションを目指して作成された。知り合い同士の会話は、他のSNSよりもエモーショナル豊かな表現が必要となる。スピードやリアルタイム性はもちろんのこと、いかに感情をシンプルに伝えられるかということが重要だったそうだ。そこで誕生したのが、スタンプ。従来の絵文字や顔文字はテキストを入力して絵文字を選ぶという2段階のプロセスが必要だったが、スタンプはそれを押すだけでダイレクトに感情を伝えられるインパクトあるデザインと大きさだ。これは、グループインタビューで「可愛い」とも「キモイ」とも賛否両論の意見があったデザイン案をベースとして作られたものだという。賛否両論の意見が出た案を「一番感情が動いた」と判断。当初は喜怒哀楽を基本型としていたが、コンテクストの中で初めて意味が決められるようなスタンプも追加した。例えば、金髪のジェームスが転がっていたり、ブラウンがたたずんでいたりする等、それ自体には明確な意味がないが、使っている人の性格や相手との関係性、それまでの文脈、時間帯などで意味合いを変えられる余白のあるスタンプを戦略的にデザインしていった。これがスマホの初心者、特に20〜30代の女性をターゲットに人気を博し、爆発的ヒットを実現させたのだという。

 コグレ氏によれば、LINEは他のネットサービスと異なる普及の仕方をしたらしい。一般的にネットサービスは、ネットに詳しい者達がそのサービスのファンとなった後に、一般的な人達にも普及していく。だが、LINEはIT業界出身者の間では当初は「SkypeがあるのにLINEを使う意味が分からない」「テキストチャットはFacebookのメッセージ機能で十分だ」と不要論が強かったにも関わらず、一般ユーザーの高い支持を勝ち得ることが出来た。非IT系の人々にとっては、アドレス帳を元とした友人達とコミュニケーションの場であるLINEはシンプルで受け入れやすかったのだ。

 イム・ウォンギ著『LINEを生んだNAVERの企業哲学』(吉原育子:訳、実業之日本社)によれば、韓国NHNは、当初、スマートフォン事業では苦戦を強いられていたという。韓国NHNは検索ポータルサイト「ネイバー」での成功に固執し、それをスマートフォンのメッセンジャーアプリに応用した「ネイバートーク」をLINEが誕生する4ヵ月前にリリースしたが、ライバル企業のアプリにおされていた。だが、本社が日本法人をプロ集団として信頼し、LINEの開発を任せきったこと、会社で何か起こるたび、首脳部が互いのホットラインですぐに集まるのも意思決定の素早さが効を奏し、LINEのヒットを実現したようだ。

 イム・ウォンギ氏によれば、NHN本社には、「ユニークなサービスはユニークな職場生活から生まれる」という企業哲学があるという。ユーザーの潜在的なニーズを見いだし、そこでの問題点を確実に解決したサービスを実現しようという思いから、スタッフが自由に打ち合わせするスペースと接客スペースが隣り合わせになったカフェテリアを設け、スタッフに時間の許す限り、様々な人と会話をさせ、アイデアの誕生を誘発させようとしているらしい。

 メディアの形態が変わっても、人のニーズは変わらない。LINEは絵文字とともにメールを楽しんでいたガラケー時代のケータイと人との付き合い方を元として、iモードのあり方を念頭に起きながら誕生したという。LINE誕生の背景には、ユーザーをとことん見抜く企業風土があるのだ。日に日にユーザーを増大させていくLINE。そのアイデアの出し方はもしかしたら新しいメディアを生み出す参考になるかもしれない。

文 =アサトーミナミ