2013年の文庫小説TOP10は有川浩、東野圭吾など人気作家が独占

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/22

毎年年末の恒例企画『ダ・ヴィンチ』の「BOOK OF THE YEAR」。その年の総決算となる同特集号が今年も発売された。ダ・ヴィンチ読者、書店員、文筆家など、本好き4619名の声を集め、小説、コミック、趣味・実用書など各ジャンルのランキングが発表されている。

文庫部門で上位を占めたのは、今年の「好きな作家ランキング」で男女各部門トップに輝いた人気作家。有川浩が1・2・4位を、東野圭吾が3・7位に複数ランクインという結果に。『県庁おもてなし課』『植物図鑑』『真夏の方程式』の上位3作に関しては、どれがトップになってもおかしくない僅差の接戦。あらためて2人の圧倒的人気が証明された。

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もう1人、複数作品でランクインを果たしたのは湊かなえ。『夜行観覧車』『花の鎖』はどちらも「ドラマがよかったので原作も読んでみたくなった」「湊かなえはイヤミス以外も面白い!」といった声が多数寄せられた。

全体を見渡してみると現時点ですでに映画・ドラマ・マンガ化されている作品が多数を占める。もともと安定した人気を誇ってきた作家が、メディア化の後押しで新規読者を獲得して一気にブレイク、という構図はいまや文芸界の王道パターンだ。

新人作家の奮闘も見逃せない。8位の『神様のカルテ2』は現役医師である夏川草介が、第10回小学館文庫小説賞を受賞したデビュー作の続編。櫻井翔&宮﨑あおい主演で映画化され、10・20代の若い層を中心に支持を集めた。

9位は田中慎弥の『共喰い』。芥川賞受賞会見での「もらっといてやる」発言が波紋を呼んだ著者だが、文庫化にあたって新たに収録された瀬戸内寂聴との対談が興味深い。「筆一本でやっていくしかない」という覚悟、幸福への恐怖など、自身の内面が赤裸々に吐露されていて読み応え十分だ。

2013年はベテランの人気作家に票が集中する順当な結果となった。来年は次の時代を担うであろう、新たな才能の登場にも期待したい。
同誌では1位有川浩のインタビューを掲載。喜びと2014年への抱負を語っている。

「BOOK OF THE YEAR 2013」文庫ランキング
1位 『県庁おもてなし課』 有川 浩 角川文庫 740円
2位 『植物図鑑』 有川 浩 幻冬舎文庫 720円
3位 『真夏の方程式』 東野圭吾 文春文庫 720円
4位 『キケン』 有川 浩 新潮文庫 578円
5位 『夜行観覧車』 湊 かなえ 双葉文庫 680円
6位 『バイバイ、ブラックバード』 伊坂幸太郎 双葉文庫 680円
7位 『新参者』 東野圭吾 講談社文庫 735円
8位 『神様のカルテ2』 夏川草介 小学館文庫 690円
9位 『共喰い』 田中慎弥 集英社文庫 441円
10位 『清須会議』 三谷幸喜 幻冬舎文庫 600円

構成・文=阿部花恵/ダ・ヴィンチ1月号「ブック・オブ・ザ・イヤー2013」特集