書店員オススメ! 2013年私的おすすめ本5選

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/22

毎日膨大な量の本に接し、本の知識なら誰にも負けない“本のソムリエ”としてとっても頼りになる書店員さん。今回は、南は熊本から北は小樽まで転勤歴5回、書店歴11年の喜久屋書店太田店の久原栄二さんに“2013年私的おすすめ本”5冊をセレクトしてもらった。

北村太郎の全詩篇』 北村太郎 飛鳥新社 1万2600円
「われわれは/どこから来ないで/どこへ行くべきかどこへ…」。このフレーズがずっと私の中を巡っています。新刊書店で入手困難だった詩人の全詩篇にようやく出会うことができた、幸福な一年。

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忘れられたワルツ』 絲山秋子 新潮社 1365円
「恋愛とはすなわち雑用である。不要でなく雑用である」で始まる短編集。震災の前と後の私たちの心象風景が軽妙なタッチで描かれている。必要な雑用をいかに生きるか、人生そのものが雑用か。

蚊がいる』 穂村 弘 KADOKAWA メディアファクトリー 1575円
人気歌人の最新エッセイ集。赤と青を基調とした横尾忠則氏の装丁が美しい。これぞ本。独特の言語感覚と日常に対する妄想と現実との格闘。その文章の笑いの中に、光る真実が隠されている。

こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』 渡辺一史 文春文庫 798円
進行性筋ジストロフィーの鹿野靖明氏とボランティアたちの闘いを丹念に追った2年4カ月。不自由な主人公の強烈な生きる姿勢。人が人として生きるには、やっぱり人が必要だ。自由でも不自由でも。

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』 角幡唯介 集英社文庫 630円
チベットの奥地ツアンポー峡谷に残された秘境「空白の五マイル」。未踏の地を巡る冒険家たちの足跡を追う若き冒険家の単独行の記録。死に近づくほどに、生が輝く。「若きカヌーイストの死」に涙が。

ダ・ヴィンチ1月号「本のソムリエ」より