「いいとも!」のノベライズ!? テレビ番組の妄想短編小説集を読んでみた

テレビ

2013/12/17

 映画やテレビドラマ、アニメなどの映像原作を小説にした書籍──いわゆるノベライズ作品は、今どき珍しいモノではない。小説でしか味わえない表現や心理描写があったりして、本編とはまた異なる楽しみ方がある。

 だったら、「バラエティ番組やCMをノベライズしてみたら面白いんじゃない?」と出来上がったのが『ノベライズ・テレビジョン』(天久聖一/河出書房新社)だ。

テキスト系妄想メディア「ワラパッパ」にて初出となった本作は、「笑っていいとも!」や「開運! なんでも鑑定団」といった有名テレビ番組をはじめ、「発毛コンテスト」や「一発屋芸人」、果ては「ドモホルンリンクル」までも、ノベライズしてしまった(あくまでも、天久氏の妄想に基づいたフィクションです!)。

 一体どのように、これらのテレビをノベライズしたのだろうか? 独断と偏見で選んだ2作品を紹介しよう。

■「笑っていいとも!」をノベライズする

おなじみお昼の定番「笑っていいとも!」の主人公は、もちろん司会者タモリさん。その書き出しが、いきなり「いいとも」だ。

「髪、切った?」
思わず口に出し、訊いた。
(本文より引用)

 長年「いいとも」を見ている視聴者なら、一度は聞いたことがあり、けれど決して乱発されることのない、いかにもタモリさんらしいフレーズで、これが「テレフォンショッキング」冒頭のゲストのやりとりであることが分かる。

今度のドラマの役作りで切った、とはにかむゲスト女優のリアクションを見ながら「そうか、もう主演を張れるほどに成長したのか……。森田の脳裏に、はじめて彼女と出会った日の光景が、まざまざと蘇った(本文より)」と、テレフォンショッキングの会話で進むのかと思いきや、物語は予想外の方向へ進んでいく。

 ゲストに送られた「花輪」の差出人の一人、「KABA.ちゃん」。彼の名が、森田に違和感を与えるのだ。その理由は、「もう一週間連続、花輪を贈っていた」「彼はこの一週間ですでに三回、KABA.ちゃんの名を読み上げていた」からである。長年、日本の昼を守ってきた完璧主義の司会者にとって、短期間に同じ名前を三度も読み上げることは「失態」なのだ。

 そして、森田はゲストとのトークを続けながら思案する──「なぜ、自分はKABA.ちゃんの名を何度も読み上げたのか?」と。

 その果てに行き着いたのが──アメリカコンプレックス(笑)。日本の戦後はまだ終わっていないのだと、思考はあらぬ方向へと広がっていくが、森田は番組を無事に進行する。そして、その先に待っていた“笑撃”の結末とは…。

■「開運! なんでも探偵団」をノベライズする

 「いいとも!」の主人公がタモリさんであったのに対し、こちらの主人公は地方での「出張鑑定団」に参加した、老舗旅館の女将・文絵さん。彼女が鑑定を依頼したのは、亡き夫の形見である『青磁の花生け』。

 「心の中で夫に詫びながら、十万円の値を書いた(本文より)」文枝が見つめるのは、審査員の「あの人」だ。

 うぐいす色の紬を颯爽と着こなし、繊細な手つきでお宝をささげ持つ。ためつすがめつ眺め口髭の下に微笑を浮かべながらも、メガネの奥から放たれる眼光はぞっとするほど冷徹だった。(本文より引用)

 おなじみ鑑定士軍団の「あの人」を、見事にノベライズし、お宝鑑定を受ける人の気持ちをつぶさに描写していく──と思いきや、やはりここからが本書の本領発揮。なんと、文枝と鑑定士は、女将と客として数十年も前に出会っていたのだ。形見の花生けを譲って欲しいと鑑定士が声をかけたのをきっかけだった。オファーは断ったものの、一週間ほどの滞在の間に女将の心は動く。

 はじめは冷たい印象の彼だったけれど、ぼそりと冗談をつぶやいたり、真顔でごはん茶碗を鑑定してみせるなど、見掛けによらないユーモラスな一面に、私もしだいと惹かれていった。(本文より引用)

 そして、明日には鑑定士が宿を去るという夜、ロマンスは訪れる。「ご主人は、相当な目利きだったようですね」「あなたを妻に選ぶなんて」と伝えた彼に、彼女は「親同士の決めたお見合いでしたのよ」と笑って返すが、その心は鑑定士の目に見ぬかれていた。そして……

──私はその夜、鑑定、された。(本文より)

 形見の花生けをきっかけに再び相見えた女将と鑑定士。そして、出された鑑定の結果とあの決め台詞──「いい仕事、してますねッ!」

 野次馬根性的な興味をそそるあの鑑定番組の裏にこんなドラマを想像できるなんて、本当にいい仕事してます!

■ノベライズは広がり続ける

 紹介した2番組以外にも、ひねりの利いた視点で描かれたノベライズがズラリと並ぶ。

 「アタック25」では、参加しながらみじめな結果を味わった出演者と家族の心温まる物語が描かれ、「コボちゃん」では、見た目がそっくりだという理由で「コボちゃん」と呼ばれニートになってしまったエヴァンゲリオン好きな若者シンジくんの物語が、エヴァの名台詞や主題歌歌詞などとシンクロしながら描かれる(オチも秀逸)。
「志村、うしろ!」「ジャパネットたかた」「笑点」など、全32編の妄想短編小説を読めば、見慣れたテレビを新鮮な気持ちで見ることができるはず!

 日々の暮らしにマンネリを感じているあなたに、オススメなノベライズ。恋人や夫婦関係をノベライズしてみても面白いかも?

文=水陶マコト