40歳以上の8割が将来要介護に? 新たな国民病「ロコモティブシンドローム」

健康

公開日:2013/12/18

 「メタボ」に続く、新たな国民病として注目されている「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」、略して「ロコモ」。これは筋肉や関節、骨などの「運動器」が衰えることで、日常生活の動作がスムーズにできなくなり、要介護のリスクが高まる状態のことを指す。

 「介護」と聞くと、つい祖父母や両親を思い浮かべがちだが、実はコレが大間違い! なんと要介護になるか、ならないかの分岐点は「40歳からの生活」にあるのだそう! というのも、40代からゆっくりと、でも確実に運動器の低下が始まるためだ。現在、「ロコモ」とその予備軍にあたる人は全国に4700万人といわれ、運動器の低下を意識することなく生活を続けていると、40歳以上の5人に4人が将来は要介護になる恐れがあるという。

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 椅子から立ち上がるだけで膝が痛い。膝が痛いから歩けない。どんどん足腰が弱って、気がつけば寝たきりに…なんて恐ろしいことにならないためにも、さっそくロコモ予防を始めたい! でも、いったいどうすればいいのか。クルム伊達公子選手や福原愛選手などの指導もつとめたフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一さんの指南書『姿勢を変えて、ロコモ対策超入門』(扶桑社)をひもといてみよう!

 まずは、本書に収録された「ロコモ度チェック」で、自分の体の状態をチェック。下記の項目にひとつでも当てはまればロコモ予備軍だ。

1、家の中でつまずいたり滑ったりする
2、階段を上がるのに手すりが必要である
3、15分くらい続けて歩くことができない
4、横断歩道を青信号で渡り切れない
5、片足立ちで靴下がはけなくなった
6、2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1リットルの牛乳パック2個程度)
7、家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)

 また、“老人姿勢”(膝が曲がり、がに股気味で猫背になっている姿勢)をとりがちな人も要注意。「(老人姿勢になっている)若い女性を見かけることも多く、彼女たちが中高年になったときに健康でいられるかが気がかりです」と中野先生。耳が痛い! そしてコワイ!

「ロコモになってしまう大きな要因は筋力の低下にあります。そして、その筋力の低下が如実にわかるのが“姿勢”です。(中略)じつは、姿勢の悪い人が正しい姿勢をとっても、長時間それを維持するのは無理なのです。その理由は、筋力が低下しているから。筋力が低下して体の土台が崩れ、バランスを失っているから姿勢が悪くなるのです」

 体のゆがみ=骨のゆがみなのかと思いきや、ほとんどは筋肉の問題だと中野先生。前後左右の筋肉の硬さや筋力が違うと、骨格は筋力の強いほう・硬いほうに曲げられ、これがゆがみの原因のひとつになるのだそう。つまり、美しい姿勢をとるには、筋力と柔軟性のバランスを整えねばならないのだ。

 さらに、筋力をアップして、姿勢が美しくなれば、ロコモの不安が解消されるだけでなく、肩コリや腰痛にも効果アリ。脂肪も燃焼しやすくなり、ダイエットにもつながるというから一石三鳥だ! 難点があるとすれば、毎日筋トレをするのがツライこと。ちゃんと続けられるだろうか?

「最初からハードなトレーニングをする必要はまったくありません。具体的には、(1)筋トレで筋肉を鍛える (2)ストレッチで柔軟性を高める (3)姿勢を崩す生活習慣を見直す これらの3つを実行するのが理想です」

 というわけで、姿勢も正しくなり、筋力もつくエクササイズのなかから、通勤中に電車の中でカンタンにできるものをご紹介しよう!

●電車バランス立ち(足幅を広げる)
1、荷物は後ろで持ち、肩甲骨を寄せるようにする。
2、両足の母指球とかかとを意識して重心を乗せる
3、肛門を軽く締め、腹部を意識してバランスをとる。

 ポイントは、肩の力は抜いて行うこと。カバンを後ろ手に持つことで肩甲骨を寄せやすくなり、猫背にならなくなる。さらに、不安定な状態なのでバランスを司る小脳のトレーニングにもなる。上手にできるようになったら、足幅を狭めていくのが◎だとか。

 本書では、ほかにも「階段のつま先立ち上り」や「骨盤を立てた姿勢で座る」など、暮らしの中で上手に運動強度を高めていく方法が盛りだくさん。お風呂で、キッチンで、テレビを見ながらでもできる、“ながら”ストレッチ&トレーニングも紹介されている。

 いつ始めても遅くないのが筋力トレーニング。いつまでも若々しく過ごす未来のために、さっそく今日からロコモ対策をとりいれてみては?

文=矢口あやは