シャキシャキと美味しい野菜炒めは「弱火」で作れる! プロの味を実現する裏ワザ

食・料理

公開日:2014/1/2

 年末年始に豪華なクリスマスケーキやチキン、おせちを食べていると、どうしても恋しくなるのが家庭の味。そんなときこそ、自分で料理してみてはいかがだろう。そこで強い味方となるのが、水島弘史著『野菜いためは弱火でつくりなさい』(青春出版社)。著者の水島氏は東京・恵比寿のフレンチレストランを営むほか、行列のできる料理教室の主催者でもある。そんな彼の特徴は、斬新な発想だ。

 野菜炒めといえば、強火でサッと炒めることが常識とされている。プロの料理人が強烈な火加減で、中華鍋を豪快に扱う場面を目にすることもある。しかし、書名にある通り、実は弱火が鉄則なのだという。「プロのコンロは火口(炎が噴き出す部分)と鍋の底の距離が家庭のものよりずっと離れていて、“遠火”になっている」とのこと。一方、家庭用のコンロでは、火の元にあるフライパンを載せる台の足が低くなっており、フライパンの底に火が近すぎるため「家庭のコンロは火が強すぎる」。つまり、プロが中華鍋を豪快に振る理由は「鍋の上方に輻射熱のドームのようなものができます。そのドームの中の熱で、あおられて宙に浮いた食材が加熱されていくというわけです」。

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 では、家庭で野菜炒めを調理するには、どうすればよいのか。
・冷たいフライパンに野菜をすべて投入する
・サラダオイルを野菜全体にまわしてかけて、よく絡ませる
・弱火(コンロのガス穴からフライパンの底までの距離の半分程度)で8分ほど炒める

 と、これだけ。固い野菜から先に炒める、なんて面倒なことも不要。使用する食材をすべて投入したら「2、3分に一度、下と上をざっとひっくり返すくらい混ぜて、約8分そのまま」でOK。

 こんな弱火で、シャキシャキとした美味しい歯ごたえの野菜炒めができる理由には、科学的根拠がある。「弱火でゆっくり野菜の温度が上がっていくと、内部の水分が急激に失われることはないからです」とあり、「ゆっくり加熱すれば細胞壁ペクチンが壊れにくくなる」ためだとか。弱火での調理はあせらず、ゆったりできるので初心者向きだ。しかも、炒めている間に、もう一品ぐらい作ることもできそう。

 美味しく仕上げるための大事な要素に“塩加減”を忘れてはならない。よくレシピ誌に書かれている「“塩ひとつかみ”“塩少々”“塩適量”“塩コショウで味をととのえる”“全体に塩をふって”“薄く塩をふる”」という表現について、「これ、何gの塩のことだかわかりますか? 僕にはさっぱりわかりません!!」と、著者は強く訴えている。そんな著者が導き出したベストな塩の量は「食材の重さ×0.8%」。これは「人間の体液の塩分濃度とほぼ同じ」とのこと。この分量は野菜炒めだけでなく、肉やサラダなどにも最適で、もはやソースやドレッシングがなくても、そのままでも美味しいという。

 こんな簡単な方法で、プロと同じぐらい美味しいものになるとわかると、今スグに試してみたくなるもの。その際に、必ず準備しておきたいのが…。

・計量スプーン
・キッチンスケール(0.1gまで測れるもの)
・電卓

 食材の重さを図って、塩加減を計算し、塩の分量を調節するのに必要だ。フライパンに関しては、テフロン加工されている500g程度のものでよく、軽くて扱いやすいから好都合とのこと。

 本書ではほかにも“肉も弱火で旨みたっぷりに焼ける”、“パスタを茹でるときは少量の湯と多めの塩(水1リットルに対して塩は15g)”、“包丁の刃が曲がっていたりせずにまっすぐであれば100円ショップのもので充分”など、今までの常識から考えたら驚きのアドバイスが満載。本書さえあればプロ級の料理ができてしまうので、正月太りに拍車がかかるかも。どうせ太るなら、美味しい料理で。

文=八幡啓司