2013年、心に刻みたい名作&決めセリフとは

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/22

毎年の年末恒例企画「BOOK OF THE YEAR」。本とコミックの情報誌『ダ・ヴィンチ』が主催する同企画では、ダ・ヴィンチ読者、書店員、文筆家など本好き4619名によるアンケートをもとに、2013年もっともおもしろかった本、心に残った本や人気ランキングなどをジャンルごとに発表している。今年を象徴する強いインパクトを残したタイトルを紹介する「○○おぶざいや~」では、各ジャンルの専門家が選んだ裏BOOK OF THE YEARを紹介。
野性時代』『週刊SPA !』『Quick Japan』など各誌でライターとして活躍する吉田大助が選んだのは、心に刻みたい決めセリフBEST7だ。

■『ほんだらけ』(本田 翼/原作 SDP 1785円)より

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「電線が赤色だったらみんな運命の赤い糸を信じると思う…」

モデル&女優の本田翼が企画から関わった、「最初で最後」の写真本。日常のさまざまな風景に布団を持ち込み、マンガ本を読んでは恍惚の笑顔。コスプレも本気度満点で、彼女のマンガ愛が伝わってきます。そして直筆のワンフレーズポエムが面白すぎる。「最近気になることは『背が伸びる』ということの仕組みです」。ホントだ気になる!(吉田)

■『七帝柔道記』(増田俊也 KADOKAWA 角川書店 1890円)より

「後ろを振り返りながら進みんさい。繫ぐんじゃ。思いはのう、生き物なんで。思いがあるかぎり必ず繫がっていくんじゃ。」

寝技中心の「七帝柔道」に魅せられ、北海道大学柔道部の門を叩いた主人公の青春記。延々と続く練習に何度も弱音を吐く。痛い。苦しい。勝てない。辞めたい! スポーツ小説の魅力の根本にあるのは、「なぜこのスポーツをするのか?」だ。その問いかけは、「なぜ人は生きるのか?」までタッチする時がある。答えは、読めば分かる。(吉田)

■『聖なる怠け者の冒険』(森見登美彦 朝日新聞出版 1680円)より

「役に立とうなんて思い上がりさ」

著者3年ぶりの長編小説は、怠け者が主人公。正義の味方の座を託されようとも、悪の組織に追い立てられようとも、彼はな───んにもしない。その姿勢が結果的に、世界を守る。人は「役に立とう」としてしまうから、ヘンテコなことになるのだ。しっかり、ちゃんと自分の人生を生きていれば、それだけで誰かの、何かの役に立つのだ。(吉田)

■『統合失調症がやってきた』(ハウス加賀谷、松本キック イースト・プレス 1365円)より

「簡単なことはするな」

お笑いコンビ・松本ハウスは人気絶頂で突然、消えた。統合失調症を悪化させたハウス加賀谷が、閉鎖病棟に入院したからだ。相方は、自殺衝動に駆られる魂の片割れに小さな言葉を送っていた。自分を壊すのは簡単だ。簡単なことは面白くない。だから俺はやらないお前もやるな! 2009年、コンビは再結成を果たした。感涙ノンフィクション。(吉田)

同誌では上記以外にも全7作品から名台詞を紹介。そのほかにも、お笑い評論化・ラリー遠田が紹介する「爆笑本BEST6」や、『このマンガがすごい!』編集部の薗部真一が選ぶ「記憶に残るコマBEST7」、そして書評家・杉江松恋が選定する「bokkiブックBEST8」などを掲載している。

選・評=吉田大助
(『ダ・ヴィンチ』1月号「ブック・オブ・ザ・イヤー2013」特集より)