人はいつまでできるのか? 大人のためのセックス入門

恋愛・結婚

公開日:2014/1/17

 極端に言えば、生物にとって「セックス」は元来、子孫を残すための「生殖行為」だ。他の生物同様、人間の男性と女性も「つがい」となり、セックスをし、子を産む。

 しかし、子どもを望まない男女間にも、子育てを終えた男女間にもセックスは存在する。セックスには生殖行為のみならず、肉体的な快感があり、愛する人との心のつながりを感じる喜びや感動があるからだ。
では、人はいつまでセックスできるのか?

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 女医・宋美玄さん監修の本書『大人のセックス 死ぬまで楽しむために』(講談社)によれば──。

セックスに年齢制限はありません。
「したい」という気持ちがあるならば、何歳になったからできないということはないのです。(宋さんのまえがきより)

 とはいえ、人間の体は加齢と共に体力や機能が衰える。男性であれば勃起不全になったり、女性であれば性交痛や更年期障害で濡れにくくなったりするなど、物理的な障壁が発生するようになるのも実情だ。

 また、「性欲があると思われるのは恥ずかしい」「自分の性欲は異常なのか?」などと感じ、パートナーと肌を合わせることも、人に相談することもできなくなってしまう精神的な壁も存在する。

 宋医師によれば、著書『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)の出版後、1万通以上届いたという感想のハガキの大半が高齢の男性・おじいちゃんたちからのものだったというし、クリニックには年を重ねた女性たちがセックスの悩みを抱えて訪れるという。つまり、老若男女を問わず、性的な欲求を持っていながら、相談もできずに悩んでいる人が大勢いるというわけだ。

 本書は、そんな慎ましい日本の男女のため、『週刊現代』(講談社)のレポートを元に、読者の体験談などを交えて、「死ぬまでセックスするため」の具体的な方法を紹介している。

第1章「五感と脳で楽しむ熟練のセックス」
第2章「第二次性感帯を見つけよう」
第3章「今夜からできるラブ・マッサージ」
第4章「ピストンを卒業したあなたへ」
第5章「EDとその対策」

 具体的な内容は本書を読んでいただきたいが、「挿入と射精だけがセックスではない」ということが、様々な角度で書かれている。

 違和感を感じる人もいると思うが、セックスを「好きな人とつながる心地良さの共有」と広義に捉えるならば、「心」がつながっていれば挿入・射精がなくても気持ち良いセックスはできる、と本書は呼びかけているのだ。

 それゆえ、本文中はもとより、「宋美玄のまとめ」でも繰り返し主張されているのが、「セックスはコミュニケーションである」という部分だ。互いの気持ちを思いやり、自分の気持ち良さだけではなく、相手の気持ちや体に合ったことを、優しい気持ちでしてあげることが「大人のセックス」において最も重要なのだ。また、性的な欲求を表に出すことに抵抗のある女性を、決して恥じることではないとリードしてあげる優しさが男性には必要なのだと、宋女医のコメントから読み取ることができる。

 繁殖だけを目的に生きる生物から進化し、「心」を持った人間だからこそ、セックスという行為に、その先のつながりを求めたくなる。それはどれだけ年を重ねても、修行して心を鍛えようとも変わることなどないはずだ。

 最後に、本書にある江戸時代の清僧・良寛のエピソードを紹介したい。70歳を過ぎても40も年の離れた弟子の貞心尼に恋をした良寛は、こんな歌を読んだという。

ぬば玉の 今宵もここに 宿りなん
君がみことの いなみがたさに
(今宵もここに泊まりたいというあなたのことを帰れと断り切れぬ私よ)

 人生50年の時代に70歳の良寛和尚がセックスを求めていたのならば、「死ぬまで」セックスすることなど、決して難しいことではないのかもしれない。

文=水陶マコト