「週刊文春」連載開始でまさかの大ブレイクの予感! 伝説のマンガ家・桜玉吉とは何者なのか?

アニメ・マンガ

2014/1/22

 あの伝説のマンガ家、桜玉吉が帰ってきた。しかも、超メジャー雑誌『週刊文春』(文藝春秋)誌上に連載という土産を持って。そう、宮藤官九郎や伊集院静、小林信彦、林真理子などのそうそうたる連載陣に混じって、しれっと『日々我人間』という作品を連載しているのである。もう往年のファンからすれば歓喜とともに驚愕で「玉吉が文春で描いてる……いったいなにが起こったのかだれか説明してくれ」「文春100000000部買った」「どういう繋がりがあって文春へいったんだ?」などの声がネット上ではあふれた。

 おっと、どうやら「桜玉吉って誰? なんで伝説なの?」というふとどき者もいるようだ。大丈夫、そんなに不安にならなくても大丈夫だチェリーボーイたちよ。そんな君たちのために、誰でも簡単にサクッとわかる桜玉吉コーナーを設けさせてもらった。以下をよく読んで頭に叩き込んでおくように!

 桜玉吉は『ファミ通』(エンターブレイン)がまだ『ファミコン通信』(創刊はアスキー、のちにエンターブレインが発行)だったころに、ゲームを題材にした『しあわせのかたち』というマンガを描き人気を集めた作家である。しかし、その『しあわせのかたち』も連載が後半になるにつれ徐々にゲームをテーマとしなくなり、「おまえ」「コイツ」「べるの」といったメインの登場人物の露出も減少。代わりに作者である桜玉吉が前面に出るようになり、「ゲームを題材としたマンガ」から「作者の近況を綴った日記マンガ」へと変貌を遂げていく。ゲーム誌なのに釣りなどを題材にするばかりか、今までのコミカルな作風や絵柄をかなぐり捨て、超リアル志向に走った「しあわせのそねみ」という中編を突然はじめたりで、もうやりたい放題。メイン読者であろう、ちびっ子たちを完全に置いてけぼりにし、完全独走を繰り広げた。しかし、その自由奔放っぷりに魅せられたファンも数多く、カルト的な人気を博していくのである。

 『しあわせのかたち』の後は、メインを「作者の近況を綴った日記マンガ」にし『防衛漫玉日記』『幽玄漫玉日記』『なぁゲームをやろうじゃないか!!』『御緩漫玉日記』といった作品を発表。印税で株を買ってネタにする、ネタのために有限会社をたちあげる、ネタになるだろうと同人誌を作るといった体と金を張ったギャグだけでなく、離婚したことをマンガでさらりと明かす、盲腸で入院したことを事細かに描く、気になる女性へのアプローチなど、赤裸々といってももの足りないくらいに自分をさらけ出す姿勢で、多くのファンを獲得していく。

 しかしそういった愉快なマンガを描く一方で、桜玉吉自身の精神の疲弊、精神的に追いつめられていく過程や憂鬱などで身動きがとれない様を痛々しいほどまでに描き、現実と幻想を織り交ぜた表現などで高い評価を得て、一部で伝説的なまでの人気となる。だが、桜玉吉の精神の疲弊は徐々に深刻さを増し、休載が目立つようになってしまう。休んでは描き、休んでは描きを繰り返していたものの、とうとう長い休載期間に突入する。

 そんな桜玉吉が、カルト的かつ一部で伝説的なマンガ家が、超メジャー雑誌『週刊文春』で連載を開始したのである。この驚きと喜びは、ここまで目を通してくれた方には、幾ばくかでもお分かりいただけたことだろう。

 なんだか、全然サクッとわかる説明になっていないが、ここは愛ゆえのものだと思って勘弁してほしい。

 ちなみに『日々我人間』だが、メジャー誌での連載ということで、大衆向けになっているかと思えば、特にそんなことはなく、スタイルはいつもの「玉吉風」。日々のアレコレをネタにし、マンガとして描いている。例えば、ある回では、ジャージの上下で小便をしていて、ちょっと急いでナニをしまいこんだときの絶望的な「あ…」を表現。「ジャージのゴムテンション残尿問題難儀アリ」と締めくくった後に、ワク外に「一体、何人の読者の共感を得られるのだろうか?」と書いたりしている。ああ、良かった。いつもの桜玉吉だ。しかも、連載作品は1ページの半分以下というごく小規模で描かれている。『しあわせのかたち』で大コマを使うことに怯えるというマンガを描いていた桜玉吉らしいといえば桜玉吉らしいのだが、神経を尖らせてページをめくらないと読み飛ばしてしまう可能性があるので注意が必要だ。

 おっと、ここで「おい、『コミックビーム』(エンターブレイン)はどうした!?」という古参ファンの方の声が聞こえてきそうだ。ご安心を。長期休載明けの復帰作である短編を収録した『漫喫漫玉日記 深夜便』(エンターブレイン)が発売されているのである。かつての連載作品である『御緩漫玉日記』(エンターブレイン)の最終巻の発売からじつに約6年ぶりとなる、4コマではない桜玉吉の新作である。

 この新作では、2011年3月11日から2013年夏頃までの玉吉の日々が描かれている。長期連載をもたず、4コマと、ちょっとしたイラスト仕事のみを糧に生活する玉吉。冒頭では、自宅のネット回線を解約したため、4コマを送るときに漫画喫茶を利用していること、4コマと、ちょっとしたイラスト仕事のみでは暮らしは成り立たたず、生活がすでに破綻しつつあることが描かれている。重い出だしだが、数ページ後では、AVをUSBメモリに落とす姿が描かれており、『御緩漫玉日記』で描かれた『コミックビーム』編集長・奥村勝彦とのエロDVDを巡る騒動から垣間見えたAV好きの面が、まだ残っていることに安堵の息が漏れてしまうだろう。しかし、桜玉吉はだんだんと漫画喫茶に入り浸っていき、ついには寝泊まりまでする。朝に他人の目覚まし音で目を覚まし、朝食を求めて一時外出、散歩などをして戻ってくるといった、もう漫画喫茶を利用しているというより、拠点としている桜玉吉の姿は、有限会社を設立し、税金対策で車を買い、果ては伊豆に家を買ったことを知る往年のファンからすれば涙を誘うだろう。そのうえ、自宅にあるさまざまなものをネットオークションで売却し「糊口を凌ぐ日々を送っていた」と明かされるくだりなんて、思わず仕送りをしたくなるほどだ。

 しかし、2013年は『日々我人間』の連載や『漫喫漫玉日記 深夜便』が出た「玉吉イヤー」、2014年もこの勢いは続くだろう、玉吉の生活はがぜん裕福になるに違いない。いや、前みたいな暮らしにはならないまでも、せめて人並みの生活が送れるくらいまでには戻ってほしい。ファンからすれば、そう願わずにはいられないのだ。