次のふなっしーを作るのはキミだ? 着ぐるみの作り方

エンタメ

公開日:2014/1/23

 4万円。

 サラリーマンの月の小遣いではない。

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 今や日本を代表するゆるキャラと言っても過言ではない船橋市非公認キャラ・ふなっしーの「着ぐるみ」製作費である。

 千葉の小売店店主がツイッター上にイラストを発表したことから始まったふなっしー。昨年末には紅白歌合戦に出演し、今度は切手にもなるという「ふなっしー伝説」を目の当たりにして、「次は私が!」と夢見る人も、町おこし村おこしのために、今まさにゆるキャラを生み出そうとしている人も大勢いることだろう。

 そして、その多くが「でも、お金かかるんだろうな、着ぐるみを作るのって」と、予算の数字を見てため息をついているのではないだろうか? だが、4万円、なのである。

 ゴジラやウルトラマン、仮面ライダーといった特撮映画のスーツは、「1体何百万円もする」とよく聞くし、専門の業者に4万円で着ぐるみ製作を発注するのはかなり無理がある。

 おそらく、ふなっしーの生みの親の人は、知り合いのコスプレ衣装などの造形ができる人に、材料費を含めた4万円で「作って」とお願いしたのだろう。

 筆者が高校生時代に文化祭で「仮面ライダーショー」を上演するために、四苦八苦して安い材料を探し求めた時代とは異なり、今は、インターネットやホームセンター、100円ショップなどで、安くて使える「素材」が安価で容易に手に入る時代だ。工夫次第で、着ぐるみを安く作ることができる。

 しかし、最大の壁は「どうやって作ればいいの?」という根本的な話だろう。

 何事もそうだが、造形は特に経験がモノを言う作業だ。そこで、経験者のノウハウが分かりやすく、実践的に書かれた『ヒーロースーツの作り方』(ヒーロースーツ製作委員会/グラフィック社)を読んでみることにした。

 本書では、「バトルスーツ」「着ぐるみ」「ヒーローマスク」の3つに分けて、かなり具体的で実践的な「作り方」が紹介されている。

 「着ぐるみ」パートでは、パソコン上でソフトを使い、「Photoshop」によるデザイン→「Silo」で3Dデータ化→「ペパクラデザイナー」で型紙作成、という過程を踏んで、実際のウレタンシートや布生地、プラ材料などを加工して立体物を作って行く過程が、ソフトの使い方を含めて実に分かりやすく説明されている。

 本書のオリジナルキャラ「Pink」の頭部は、ウレタンシートをペーパークラフトのように切り貼りして軽くて丸っこいベースを作り、表面をパイル生地などの布で覆い、目玉をプラ板の加工で作っている。

 内容としては、中級者~上級者向けで、しかもパソコンソフト使用が前提となっているため「4万円は無理じゃん」──なのだが、「着ぐるみ」はそもそも「コスプレ」であり、「服」だと考えれば、衣装の型紙は、服飾関連の型紙を流用できるし、着ぐるみの大きな頭部などの立体を作るために必要な型紙は、インターネット上にフリーで公開されている「ペーパークラフト」で似たモノを探し、型紙をもらって代用できる。材料もまたしかり、ホームセンターや100円ショップのグッズで代用することで、予算も手間も省ける。

 その上で、加工を開始してみて「どうしたらキレイにできるのかな?」という「もう一歩」という部分を、本書を見たり、ネットで自作を公開している先人たちと交流しながら、自分なりのやり方を見つけていけばいい。

 あの世界に羽ばたくくまモンですら、初代の着ぐるみは別キャラのような、オモシロ着ぐるみだった(現在は3代目)。

 筆者の「仮面ライダーショー」のときは、予算不足や技術は、工夫と熱意でカバーした。いきなり人間サイズで作るのが心配であれば、デザイン人形やG.I.ジョーのような1/6サイズのフィギュアで試作品を作ってみるのもいい。まずは手を動かすこと、そこからすべてが始まるのだ。

 最後に「ゆるキャラ」の提唱者、みうらじゅん氏の「ゆるキャラ3か条」を紹介したい。

1.郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること。
2.立ち居振る舞いが不安定かつユニークであること。
3.愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせていること。

 最初からデザインを完全再現した着ぐるみを作れなくても、愛情を込めて作ることが、そのゆるキャラの愛らしさを生み出すことになるはずだ。

文=水陶マコト