大沢樹生・喜多嶋舞の托卵疑惑騒動で注目! DNAが人間の全てを決めるのか?

科学

更新日:2014/1/28

 年末に突如巻き起こった、元光GENJIのメンバー大沢樹生の托卵騒動。前妻である女優・喜多嶋舞との間に生まれた17歳の長男について、大沢がDNA鑑定をしたところ、実子である可能性が非常に低いと発言した。ところが、喜多嶋や渦中の長男もその事実を否定し、事態は収拾のつかない泥仕合となっている。

 騒動の真偽はともかく、気になるのはDNAや遺伝子がすべてを決定するかのような、DNA至上主義ともいうべき風潮である。実際に、大沢がDNA鑑定をするきっかけになったのも、長男の健康状態や2008年に再婚した現在の妻が身ごもった子どもが死産だったことから、自身のDNAに問題があるのではという疑念を持ったからだという。

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 こうしたDNA至上主義に警鐘を鳴らしているのは、ニューヨーク大学心理学科教授などを務めるゲアリー・マーカス氏である。氏は著書『心を生みだす遺伝子』(大隈典子訳/岩波書店)で、「生まれと育ち(遺伝と環境)」についてあまりに簡略化された議論を反証している。

 その大前提として氏は「遺伝子がいかにヒトの性質や能力に影響を与えているかを理解するには、まずゲノム(ある生物のもつ一揃いの遺伝子群)が青写真であるという、よくある考え方を捨て去らなければならない」という。遺伝子地図や染色体地図という言葉を耳にする私たちは、遺伝子の配列によって個人の性質が決定されていると思いがちだが、それは大きな誤解だという。

 その理由を「青写真では、そこに描かれている要素と実際の建築要素の間に直接的な対応がある。遺伝子と生物の細胞や構造の間にはそのような一対一の対応が存在しない」「一パーセント異なる青写真は一パーセント異なる建築物を生みだすことになる。しかしながら、一パーセント異なるゲノムは非常に異なった心を生むことになる」などと説明している。

 さらに環境に応じて進化してきた動物を例に、「経験それ自体が遺伝子の発現を変えうる」「遺伝子の役割は、単に新生児の脳と体を作るだけではなく、絶えず変わり続ける世界にうまく対応できるだけの柔軟性を持った有機体を作り出すことである」と指摘している。

 つまり、遺伝子というのは現時点で解き明かされ、考えられている以上に複雑であり、かつ環境によって変容するということ。「遺伝子は環境がなければ役に立たず、生き物は遺伝子がなければ環境にうまく対応することができない」と氏が言うように、「生まれ」(遺伝)と「育ち」(環境)のどちらが勝るということではないのだ。

 DNAという言葉が身近になった現代こそ、もう一度遺伝子に対する過剰な期待や誤解を正す、知識の普及が必要なのかもしれない。