【バレンタイン】義理チョコなんてやっつけろ ―ブンガク!【第20回】―

公開日:2014/2/13

 中高生を中心に大人気の「ライトノベル」(通称ラノベ)。最近ではテレビアニメ化などの影響でファン層も拡大しています。そこで、ラノベって言葉は知ってても読んだことがない、という初心者向けに“超”入門コラムをお届け!代表的な作品の紹介や、楽しみ方について、作家や絵師など関係者への取材も織り交ぜながら、ラノベ風の会話劇でお送りします。毎月第1・3火曜に更新予定!

制作協力:代々木アニメーション学院 / 文=カンダ ユウヤ 絵=ましま


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~ブンガク部~

今川凜子(笑)
「やっほー! みんな、おはよう。私達、大学入試が終わったよ!」

中島優斗(困)
「……お、おはよう」

石田健(普)
「あ、先輩方、おはようございます。それと入試お疲れさまッス!」

今川凜子(普)
「ありがとう、まあ、まだ合格発表はまだだけどね」

中島優斗(困)
「……テスト用紙が一枚……それと二枚……」

桜井智樹(普)
「え~と、てか、なぜか、優斗先輩だけ、ボロ雑巾のようにくたびれていますけど、先輩はどうしたんですか?」

今川凜子(普)
「ああ、これね。地獄のテスト勉強をして疲れたみたい。優斗君、合格ラインぎりぎりで大変だったの。まあ基本、彼は追い込まれないとフルパワーが出せない性格だしね」

石田健(普)
「あ、分かります。確かに先輩そういう感じでしたものね。で、いまは知恵熱で頭がオーバーヒートって感じですね。なるほどな~」

今川凜子(笑)
「ふふ、だってさ、優斗君!」

中島優斗(困)
「はは、テストはもう来世までしたくないです、あはは……」

今川凜子(笑)
「まあ半分、壊れているけど彼も合格ラインは突破している筈だから多分、大丈夫だと思うけどね」

桜井智樹(普)
「……あはは、『バカとテストと召喚獣』(※1)風に言うと先輩達はバカとテストとメガネっ子といったところかな……」

バカとテストと召喚獣

『バカとテストと召喚獣』(井上堅二/エンターブレイン

「こんな教室は嫌じゃああっ!!」 文月学園、ここでは進級テストの振り分け試験の成績で厳しくクラス分けされる。リクライニングシートに冷暖房完備の贅沢な教室であらゆる秀才が集まるAクラス、そしてボロい備品に卓袱台と腐った畳だけの最低教室のFクラス。そしてこの学園で自信満々にテストの結果を受け取った主人公、吉井明久を待っていたのはまさかの最低のFクラスであった。それから明久は対クラス戦争で上位の教室を奪うという危険な賭けに巻き込まれ、学園が開発した試験召喚獣を使い、彼は密かに憧れる健気な少女・瑞希の為に迷走し始める。

石田健(普)
「見たまんまだな。でも先輩、ご苦労様です、な~む~」

桜井智樹(怒)
「拝むなよ、縁起が悪いわ!」

今川凜子(笑)
「ああ、そういえば私みんなにちょっとした贈り物があるんだった」

桜井智樹(普) 石田健(普)
「ん?」

今川凜子(笑)
「じゃーん! もうすぐバレンタインデーだから、みんなにチョコの贈り物ね」

桜井智樹(普) 石田健(普)
「あ、ありがとうございます!」

今川凜子(普)
「ハ~イ、どうぞ~」

桜井智樹(笑)
「うん、女子にチョコもらうとか、僕、初めてだな、ありがたや~」

石田健(普)
「そうなのか、智樹。俺はよくクラスの女子とかにもらうけどな」

桜井智樹(怒)
「マジで!? 羨ましい、このリア充がッ!」

今川凜子(普)
「……はい、優斗君にも」

中島優斗(困)
「……あ、僕にも?」

今川凜子(普)
「優斗君は受験をがんばったから少し良いチョコをあげるね」

中島優斗(笑)
「そっか、なんか、それ嬉しいな……ありがとう」

今川凜子(普)
「うん、どういたしまして、どうぞ」

中島優斗(笑)
「……チョコ、いただきます」

今川凜子(普)
「……あ、それとホワイトデーのお返しは期待しているからね、みんな。もちろんお返しは“倍返し”で!」

中島優斗(困) 桜井智樹(困) 石田健(困)
「ぶふぉッ!?」

~一方、その頃~

中島直斗(普)
「(唯ちゃん、あれから元気ないみたいだ……ブンガク部に来てもこの頃あんまり喋りたがらないしだし、どうしたんだろ? う~ん、あれ、そこの教室の窓際にいるのは唯ちゃん!?)」

佐藤唯(普)
「……」

中島直斗(普)
「……あ、あの、唯ちゃん」

佐藤唯(普)
「……あ、直斗君?」

中島直斗(普)
「どうしたの、こんなところで?」

佐藤唯(普)
「……ああ、今年のことを思い返していました。ブンガク部のこととか、学園祭とか、そして部のみなさんのこととか」

中島直斗(普)
「……なんかあったの?」

佐藤唯(困)
「いいえ、なにも……」

中島直斗(普)
「何もないにしては最近、妙に元気なくない?」

佐藤唯(困)
「それは……」

中島直斗(普)
「何でも良いから話してみてよ、それに前に唯ちゃんに引きこもりの頃の悩みを聞いてもらったから今度は僕が相談に乗るよ。それなら唯ちゃんも少し気分も晴れるだろう」

佐藤唯(困)
「……そういえばそうでしたね。でも、その台詞は直斗君にしては少し生意気ですね」

中島直斗(困)
「そ、そう」

佐藤唯(笑)
「ふふ、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらって悩みを打ち明けますね。……実は私、家の事情で海外に戻ることになりました」

中島直斗(困)
「え!? そんな……」

佐藤唯(普)
「その事で部の皆さんに言いづらくってどうしようかなと思い、ここ最近ずっと悩んでいていました」

中島直斗(普)
「じゃあ、唯ちゃんは、いつまで日本にいられるの?」

佐藤唯(普)
「今年の二月の終わりには帰らないと行きませんね」

中島直斗(困)
「それ、すぐじゃないか!?」

佐藤唯(普)
「はい。だからコンテストの方も参加が難しくなってしまって……」

中島直斗(普)
「そうだったのか……なんか何も知らなくて、ごめん」

佐藤唯(困)
「いいえ、私の方こそ隠していてごめんなさい。まずは最初に直斗君や皆さんに言わなくちゃいけないことだったのに……」

中島直斗(普)
「う~ん。……ねえ、唯ちゃん」

佐藤唯(困)
「はい?」

中島直斗(普)
「あのさ、僕から一つ提案、なんだけどさ。せめてコンテストだけでも出てみない」

佐藤唯(困)
「でも私には時間が……」

中島直斗(普)
「だから、僕と一緒に作品を作らない。『精霊と神曲楽士』(※2)みたいにさ」

神曲奏界ポリフォニカ

『精霊と神曲楽士』(※2)
『神曲奏界ポリフォニカ ウェイワード・クリムゾン』(榊一郎/ソフトバンククリエイティブ)

精霊が力を持つ世界。『精霊(スピリット)』、彼らは神曲楽士の奏でる楽曲を糧とし、さまざまな力を発揮する。そして彼らを操ることのできる人間、『神曲楽士(ダンティスト)』はそんな精霊たちと契約し、互いに社会で共存しながら日々を過ごしていた。見習い神曲楽士の主人公、タタラ・フォロンとキュートな最上級の精霊コーティカルテはある日、初めての仕事で精霊の放つ力“精霊雷”を集める依頼を受け、依頼先へと向かう。そしてそこで二人は不思議な事件へと巻き込まれていく。

佐藤唯(普)
「え、二人で作品を!?」

中島直斗(笑)
「そう、二人で、それなら時間も作れるし、唯ちゃんもコンテストに出れるでしょ」

佐藤唯(困)
「でも、良いんですか? 私と一緒に作品を書いても?」

中島直斗(笑)
「いいさ、それに前の恩返しって訳じゃないけど唯ちゃんにはここでの思い出を一つでも多く作っていってもらいたいからね……」

佐藤唯(普)
「……思い出作りにですか?」

中島直斗(笑)
「うん」

佐藤唯(笑)
「……ふふ、直斗君も言うようになりましたね。……ならコンテストに向けて頑張らないといけませんね」

中島直斗(普)
「唯ちゃん……!?」

佐藤唯(笑)
「……ぜひ、願いします。コンテスト頑張りましょうね、直斗君!」

中島直斗(笑)
「うん、二人で最高の作品を作ろうね!」

佐藤唯(笑)
「はい……あ、そうだ。直斗君、コレあげます!」

中島直斗(普)
「ん、これは……」

佐藤唯(笑)
「今日はバレンタインデーですよね。だからチョコの贈り物を……」

中島直斗(笑)
「……あ、ありがとう。チョコとか貰うのは初めてだから少し何だか照れちゃうな」

佐藤唯(笑)
「こちらこそ今日はありがとうございます、直斗君!」

……つづく

次回予告

今川凜子(笑)
「こんにちは今川凜子です!」

佐藤唯(笑)
「同じくこんにちは佐藤唯です!」

今川凜子(普)
「唯ちゃん、久しぶり。この頃、元気がないって聞いたけど大丈夫?」

佐藤唯(笑)
「はい、心配させてしまってすいません。でも、もう大丈夫です!」

今川凜子(笑)
「そっか、なら、よかったね」

佐藤唯(笑)
「はい、では……」

今川凜子(笑) 佐藤唯(笑)
「次回の『ブンガク!』もお楽しみに!」