IT業界に就職は古い!? グローバルで活躍できる寿司職人になる方法

ビジネス

公開日:2014/2/15

 駅前を歩けば、2貫で105円といった格安な回転寿司店を目にすることが多くなった。いっぽう、職人がカウンターの目の前で握ってくれる立ち店は、世間の価格破壊や出前の減少等の影響で、閉店するケースも増えている。ところが、海外に目を向けると、“和食”がユネスコの無形文化遺産に登録された追い風もあり、寿司店を含めた和食店が大きな盛り上がりを見せているという。そうした情勢に魅力を感じ、日本で寿司を学び、海外で寿司店を起業する人が増えているらしい。

 東京・西新宿に、寿司職人養成スクール「東京すしアカデミー」がある。合理的なカリキュラムと指導を受けることで、短期間で寿司の技術が学べる学校だ。「脱サラして海外で寿司店を開きたい、出張寿司を始めたいという人たちが少なくない」と書かれているのは、同校の校長である福江誠氏の著書『日本人が知らない世界のすし』(日本経済新聞出版社)。本書には海外特有のロール寿司や、海外での寿司業界事情、海外に進出した寿司職人たちの成功例が多く記されている。

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 そこで今回、本書に記されている内容を深堀りすべく、福江氏に直撃インタビューを試みた。海外の寿司店事情や、職人になるための就職活動の現状を、熱く語っていただいた。

――まず、海外ではロール巻きが人気とのことですが、理由があるのでしょうか。

福江:現地の方々の舌に合う味に仕上げられている、いわゆるご当地寿司ですね。日本で有名なカリフォルニアロールも、そもそもは、生モノが苦手なアメリカ人に、寿司が受け入れられるように工夫されたもの。本格派を好む方々から賛否両論がありますが、私はご当地寿司を評価します。日本で食べられるパスタのナポリタンだって、イタリアにはありませんからね。寿司が海外で普及するために、大きな役割を担っていると思います。

――海外における寿司店では、地域ごとに特徴はありますか?

福江:アジアでは生モノの輸送ルートも整い、新鮮なネタを扱えるようになったので、本格的な握り寿司を楽しむことができます。ヨーロッパや北米では、まだロールのような独自の寿司が多数を占めています。

――日本で寿司の技術を学び、海外で働く方が増えている要因として、何が考えられますか?

福江:これまで職人になるには、10年近くに及ぶ厳しい師弟制度が主流でしたが、すしアカデミーでは1年間で技術を学べるので、業界志望者の選択肢となりました。英語の授業もあるので、海外での就労もバッチリです。現地では職人の需要が増しているので、待遇に関しても、日本と同等かそれ以上のところが多いですよ。

――学校設立当初、古くからの職人さんや既存の寿司店からの反応はいかがでしたか?

福江:今、寿司店で修行を続けられる若者は少なくなっていて、業界は人手不足が続いています。当校は基礎力と志のある人材を育成し、ご紹介できるため、皆さまからご期待の声をいただいています。

――海外で働く場所として「自分が行きたいところで働くのがベスト」と書かれていましたが、オススメはありますか?

福江:まず、基礎をしっかりと身につければ、長期にわたって活躍できる力を得られます。ですので、まずは日本の寿司店で勉強をするか、正統派な寿司を握らせてもらえるアジアがオススメですね。また、起業には、経済的に急成長中のベトナムやカンボジア、インドネシアが狙い目です。

――次世代を担う若者へ、伝えたいメッセージはありますか?

福江:若者には、どんどん海外へ行ってほしいですね。日本にいては気付けない日本の良さや、海外の食文化の豊かさを学べます。職人として働くときは、その街で一番といわれる店で、堂々と握ってほしい。小さくても、ピラミッドの頂点に立っていただきたい。そうすれば、後輩たちのレベルも上がっていきます。英語は中学までの文法と単語を、寿司の技術は基礎をきちんと身につけましょう。和食の伝道師として、世界中に日本の良さと美味しさを伝えることで、お客さまを笑顔にしてあげてくださいね。

 福江氏によれば、アジアでは今後5年以内に、10万件以上の和食店が新規に立ち上がると予想している。そう、今こそ、寿司職人になるべきタイミングなのだ。その手で、夢をつかんでみてはいかが?

文=八幡啓司