“ぼっち”は、1日当たりタバコ15本分の健康リスク? バカにできない“友だち”の効能

人間関係

更新日:2014/2/20

 Facebookでは楽しそうな写真をアップして「いいね!」を集め、LINEでは既読スルーや未読スルーに怯える。友だちは多ければ多いほど満たされる。常に誰かとつながっていたい。そんな“つながり地獄”と化してしまった現代だが、なぜそんなにも友だちが必要なのだろうか。いた方がいいのはなんとなくわかるが、いることによってどんな影響を受けるのかは具体的によくわからないはず。そこで、友だちについて心理学実験や科学的実験を行った結果から、友だちについて解説した『あなたはなぜ「友だち」が必要なのか』(カーリンフローラ:著、高原誠子:訳/原書房)から、友だちがいることで具体的にどんな影響を受けるのか見てみよう。

 まず、友だちがいることで勉強や感情面においても影響を受ける。ミシガン大学の研究者によると「友だちとの軽いおしゃべりが、暗記テストのスコアアップと注意力散漫の抑止力になる」という。ただし、「人と張り合う類いの会話」ではこうした効果は得られなかった。また、人は友だちとただ一緒に何かをするだけで幸せを感じるそう。しかも、その幸せは「感情の伝染」によってさらに高まる。特に、女性は友だちを身近に感じるとプロゲステロンという女性ホルモンが増加して不安になりにくくなるそう。「友だちが一人増えるごとに、孤独を感じる日が1年につき2日減少する」というから、みなさんが友だちを増やしたい。つながりたいと思うのは、ある意味本能的なものなのかもしれない。

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 そのうえ、友情はガン、心臓病、肥満といった健康面にも影響を及ぼすというのだ。米国のクリスタキスとファウラーが行ったネットワーク分析によると、友だちが肥満になると本人も肥満になるリスクが“ほぼ3倍”になり、たとえ遠方に暮らす友だちであってもそれは影響するそう。そして、友だちと談笑することで感じる痛みは約10%軽減され、友だちと一緒にいたり友だちのことを思い出すだけでも血圧は下がるという。さらに、ブリガムヤング大学の心理学教授ジュリアン・ホルトランスタッド博士によると、「仲のよい友だちグループのいる人の延命率は、どんな場合においても、仲間のいない人よりも50%高い」というのだ。社会的つながりをほとんどもたない人の死亡リスクは、1日あたりタバコを15本吸う人と同じで、肥満や運動をしない人よりもはるかに高いというから、健康のことを考えるなら、なによりも先に友だちを作ったほうがよさそう。

 だからといって、道具のようにただ増やせばいいというわけではない。ホルトランスタッドは、好ましい面と嫌な面、どちらの要素もある「アンビバレント」な友だちとの付き合いが多くなると、逆にうつ病や心血管障害のリスクが高まるという。また、UCLAの大学院生ジェシカ・チャンが行った実験によると、軽い悪ふざけやゲーム、スポーツといった気楽な競争ではなく、ネガティブで競争的な会話をしていると、体内に炎症作用を誘発するそう。それが慢性化すると、心血管障害、関節炎、うつ病を発症しかねない。それに、闇雲に増やしてみても「友だち候補の数があまりに多いと、結局はありきたりで満足度の低い関係が生まれるだけ」だというのだ。その証拠に、大規模な大学では小規模な大学よりも生活態度や信条、健康に関する行動などが似た人と友だちになるし、小さな大学のあまり似ていない友だち同士のほうが仲がよいという調査結果もある。

 精神的な面だけでなく、肉体にも影響を及ぼすという友だち。ただつながるのではなく、お互いにいい影響を与え合える関係を築くことが大切なようだ。

文=小里樹