頭がおかしいとしか思えない!? パンツ禁止の学園マンガがスゴい!

マンガ

公開日:2014/2/22

 日本はどうなってしまうのか…思わずそんな言葉が漏れてしまうような作品が登場した。その名も『私立はかない学園』(紺野あずれ/双葉社)。大人気ライトノベル『僕は友達が少ない』(平坂読:著、ブリキ:イラスト/メディアファクトリー)の略称「はがない」と勘違いしてしまう人もいるだろうが、もちろん全く関係ない。注意しておくように。

 さて、この『私立はかない学園』だが、タイトルからもおおよその予想がつくように、マンガのジャンルとしては、いわゆる“おバカマンガ”に該当する。簡単にストーリーを説明しよう。

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 男女ともに下着の着用が禁じられた学園を舞台としたラブコメディである。 以上! もういい、もうお腹がいっぱいだ。なにをどうやったらこんな発想が生まれてくるのだろうか。作者はある意味で、天才じゃないのか…おっと、このマンガのおバカエナジーにあてられて、はしょりすぎてしまった。気をとりなおして、ちゃんとストーリーを紹介しよう。

 小学校から大学まで一貫教育の私立校である私立儚衣学園。その学園において、だれもが憧れる品行方正で可憐な女の子、清和院花緒は、学園のほとんどの生徒からの支持によって新生徒会長に就任する。儚衣学園には新生徒会長が就任した際、新しい校則をひとつ作ることができるというルールがあった。就任当日、花緒が発表した新校則は「パンツの着用を禁止」というもの。ノーパンのまま生活することで、スカートがめくれないように日々気を配り生活することができ、それが品位や振る舞いの向上につながるというのだ。何を言っているかわからないと思うだろうが、大丈夫、同感である。とにもかくにも「下着禁止」という校則が実行されることになり、生徒たちは戸惑いながらも、受け入れる努力をしていく。いったい彼ら・彼女らの学園生活はどうなってしまうのか…ハラハラドキドキノーパンライフの開幕でぃ! というもう乾いた笑いが出てくるようなお話なのである。

 さて、その一風どころか、「未来に生きてんな!」と言わざるを得ない校則によって、実際のところどんな学園生活になるのだろうか。作品の中身を少し覗いてみることにしよう。

 朝は校舎に入る前に風紀委員による「ノーパンチェック」がある。うん、まあのっけからなかなかのインパクトだが、予想していた範囲と言っていいだろう。予想したくもないのだが。次に、廊下にはスカートを少し押さえ、もじもじしながら顔を赤らめた女の子たちの姿が目立つ。これは……良いな! 男のS心が刺激されるというか、思わず抱きしめたくなるというか、恥ずかしがる女の子は、良い! 地位も名誉も投げ出して、守ってあげたくなる!

ちなみに部活時も下着禁止は適用されるため、登場人物のひとりであり、生徒会の副会長である深草夕夏なんかは、絶大な被害をこうむってしまう。なぜなら、彼女はテニス部であるからだ。そうあの、普段でも短いスカートを履いて激しい運動を行うため、頻繁にパンチラ(まあアンダースコートなのだが)が拝める、男にとっては夢しかないようなスポーツ、テニスを下着禁止でやるはめになるのである。サーブを打つたび、ラリーを続けるたび、なんだったら身体を動かすたび、あえてどこがとは言わないが、丸見えになってしまうのだ。おいおい、これ、テニス界の新しい夜明けじゃね? と思われた方がいるのなら、同意はするが、あまり大きな声で言うと変態認定されてしまうので、心に留めておくだけにしよう。しかし、大きな地位と権力を持っている方ならば、ぜひルールを変えていただきたい。そのためならば、何回だって頭を下げよう。おっと、話がずれてきたので、戻すとしよう。

 下着禁止の校則で被害を被るのは女子だけではない。意外なところで、男子も被害にあっているのだ。その内容は、非常に言いにくいものである。そこをあえて、幾重にもオブラートを重ねて言うと、男子の下半身の一部が屹立した際に、ノーパンであることによって丸バレになってしまうのだ。これは、重大な問題である。男は、授業が終わる5分前や居眠りしていて起きたときなど有事の際には、パンツで必死に押さえることによって、なんとかやり過ごしているのである。それができなくなる……考えるだけで恐ろしい。この状態を指して、登場人物のひとり、男子キャラの菱丸八尋は言う。「“パンツ禁止令”は男に対しても ものすごい精神力を求められるんだよ!」と。そう、もはや男に残された手は、精神を無理矢理抑えることだけなのだ。これは、下手すると悟りを開く覚悟で挑まなければ、平穏な生活は送れないだろう。

 とまあ、こんなぶっ飛んだ内容の本作。作者である『こえでおしごと!』(ワニブックス)で一躍時の人となった紺野あずれが単行本で出したコメントにはこんな一文がある。「ちょっと頭のおかしい漫画ですが楽しんでいただければ幸いです」。さすがである。自覚していながらも、こんな内容のマンガを描くなんてさすがである。もはや歴史に名を残すレベルだ。もし可能であるならば、こんな作品を生んでくれてありがとうと、ハグしてキスしたいくらいだ。

 そんな『私立はかない学園』、ネットでも評判は高く、「テニス部以外の部活がどんなふうに描写されるか期待!」「ネジが一本どころじゃなく、百本単位で外れている。だがそこがいい!!」「実写化、いや舞台化はよ」といったコメントがあふれている。ある意味で未来を先取りしまくっているこの作品。“おバカマンガ”好きならば一見の価値は十分にある。さあ、ぜひ一読し、ともにこのぶっ飛んだ世界観に浸ろうではないか。

文=オンダヒロ