米国人バイヤーが選んだ、アメリカでブレイクしそうな日本のマンガ ベスト5

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更新日:2014/3/17

 アメリカやフランス、中国、台湾…日本のマンガは、海を越えたその先々でヒットを生み出している。ここ数年、アメリカにおける日本のマンガ産業は停滞気味だそうだが、『進撃の巨人』は大ヒット。新たな作品で、巻き返しを図ってほしいところだ。
 今回は、マンガ評論家としての顔ももち、アメリカのマンガ出版社DCコミックスや日本の大手出版社での勤務を経て、現在は、NYで日本のマンガの買い付けをはじめ、様々な分野で出版物に携わる米国人C氏に、アメリカで出版されればブレイク間違いなしの日本のマンガベスト5をセレクトしてもらった。

1位
立川在住のブッタ×イエス 宗教の壁を乗り越えられるか?
聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)
聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)
  • 著者名:中村光
  • 発売元 : 講談社
  • 価格:596円

まだアメリカで出版されていない作品の中で、一番ヒットする可能性が高いのが『聖☆おにいさん』。作中に登場するハイレベルな“コメディ性”が理由。立川の小さなアパートで一緒に暮らす宗教家・イエスとブッタの概念は、キリスト教徒が多いアメリカ人にとって少し抽象的かもしれないが、思慮深く、ユーモラスな手法で描く日常は間違いなくウケるだろう。ポップカルチャーの多くは世界で通用し、『聖☆おにいさん』に出てくるような日本固有の概念は、他の翻訳マンガではほとんど見られないため、現地 の日本好きにとっても、興味深く洞察できそう。「鉛の文字」など、熱心な宗教家から、否定的な論争が生まれる可能性はあるが、自由主義的なアメリカの若者からの支持を得て、絶大な売上につながると予想。

2位
狙うは、ニューヨークタイムズベストセラーリスト
北斗の拳 (1) (ジャンプ・コミックス)
北斗の拳 (1) (ジャンプ・コミックス)
  • 著者名:武論尊
  • 発売元 : 集英社
  • 価格:421円

アニメは、すでにアメリカで放送され、実はマンガも過去に二度出版された『北斗の拳』。印象が薄いのもそのはず、初めてリリースされた時期が、まだアメリカに日本のマンガ文化が根付いていない90年代初頭。二度目は約10年前だが、わずかなヒットで終わった。その数年後に、発売は中止されてしまったのだ。だが、最近の大ヒット作『機動戦士ガンダム』や『ポケットモンスター』にみるアニメやマンガ読者の世代の関心を例にとると、プレミアム愛蔵版で再リリースするなど、コレクター層を狙うことで、ニューヨークタイムズベストセラーリストに上る『機動戦士ガンダム』、『セーラームーン』、『ブラックジャック』といった“classics”作品に並ぶ可能性は否めない。アニメのシーンを熟知しているファン層がいる点は大きい。

3位
ターゲットはBEATLESファン!?
僕はビートルズ(1) (モーニング KC)
僕はビートルズ(1) (モーニング KC)
  • 著者名:かわぐちかいじ
  • 発売元 : 講談社
  • 価格:576円

なぜ、この作品がリリースされていないのか、というほど、可能性を秘めている『僕はビートルズ』。うまくいけば、これまで翻訳出版された青年マンガの中でもビックタイトルになりうるだろう。アメリカでは、一般的にアニメを通してマンガを知る。脚色しにくい「青年マンガ」の扱いは難しくリスクもあるが、ビートルズファン=ターゲットと考えると期待は大きい。今なおビートルズはコアな音楽ファンだけでなく、一般的な音楽ファンの間でも話題に上るバンド。そのビートルズの音楽が題材ともなれば、現代ロックのとがった音楽要素をはらんだ“タイムスリップマンガ”に、アメリカのメディアや人々もいろんな意味で食いつくのでは?オノ・ヨーコが支持するかどうかはわからないが…。

4位
マンガヒットに繋がる、アニメの長所をほぼ網羅!
キルラキル (1) (カドカワコミックス・エース)
キルラキル (1) (カドカワコミックス・エース)
  • 著者名:あきづきりょう
  • 発売元 : 角川書店
  • 価格:605円

マンガの売上げを左右するのが、その前に放送されるアニメの存在。そして現在放送されているアニメ作品の中で『キルラキル』ほど熱いものはないだろう。高いアクションテイクを実現させているアニメーション技術は革新的。王道である“少年同士の友情“も存分に描かれている。それに加え、目立った女性キャラたちの存在も大きく、70年代のアクション映画を彷彿させる内容と思慮深いストーリーは、アメリカ人にとって、新鮮で興味深い。マンガアニメの長所のほとんどを包含していると考えると、マンガもヒットすることは間違いない。もし、『キルラキル』全体を創りあげる今の壮大なストーリーにいくつかの深みを足すことができるなら、2013年春に火がついた『進撃の巨人』以来のビックタイトルになるかもしれない。

5位
アメリカで“ゾンビ”以上のHIT題材はない!
アイアムアヒーロー 1 (ビッグコミックス)
アイアムアヒーロー 1 (ビッグコミックス)
  • 著者名:花沢健吾
  • 発売元 : 小学館
  • 価格:596円

最初の6巻くらいまでの内容を読んだ限り、おそらく過去5、6年の間に世に出た作品の中で、類を見ない最高のマンガだといえる。それくらい出来上がった作品だ。作者の花沢氏は、詳細にわたり美しい世界観を描きあげている。目新しくはないが、アメリカで“再高騰”中の「ゾンビ」の右にでる可能性をはらむものは、今のところ存在しない。一方、「ウォーキング•デッド」シリーズはアニメも大ヒットし、ハリウッドで制作されるゾンビ映画は年々増えているという背景はあるが、『アイアムアヒーロー』は、テンポの速い優れたストーリー、ビジュアルと、群を抜いて強烈な作品。たとえマンガで描かれる、混沌さと恐怖感に適切な英訳が見つからなかったとしても、確実にヒットを生むだろう。