「あの大雪は原発推進派が降らせた人工雪!」って… 人が陰謀論を信じる理由

社会

2014/3/7

 2014年2月9日。東京都知事選挙開催の東京が、近年まれに見る大雪に見舞われたのは記憶に新しい。その中で、ネット上にある奇妙な思想が広まっていた。「東京都内に降った大雪は人工雪だ」という説である。概略をまとめると、原発推進派が投票率低下をねらい、溶けづらい大雪を降らせ、あろうことか雪の中に車をスリップさせる薬剤が含まれていたというのだ。ネット上には人工雪の検証動画まで上がっており、現代にはびこる“陰謀論”の一つとして、世間の一部をにぎわせた。

 一時期前の都市伝説ブームも記憶に新しいが、とりわけネット上では陰謀論が取り沙汰される機会も多い。今回の“都知事選人工雪説”だけではなく、秘密結社のフリーメイソンや、地震兵器“HAARP”による東日本大震災の人工地震説など、どこかでふと耳にしたことがある人も少なくないだろう。一見、根拠がありそうでないのが陰謀論の特徴だが、人がなぜ陰謀論を好むのか。なぜ陰謀論へ傾倒してしまうのかを、竹下節子氏の『陰謀論にダマされるな!』(ベストセラーズ)をもとに検証していこう。

 本書の中では、都内某所にて2カ月に一度行われるという陰謀論の会議の様子が描かれている。その中で、陰謀論には心理学的に2つの特徴があると綴られている。

 ひとつは、人間の持つ「信仰や非合理なもの」にすがる本能的な部分である。幅広く体系化された科学がありながらも、宗教やならわしに傾倒する人たちは少なくない。細かな事例を取っても、例えば、日常で「占いのラッキーカラーを信じる」といった行動を取る人たちも少なくないだろう。陰謀論を信じる根底には、人間が本来持つ“得体の知れないもの”を信じるという部分が隠されている。

 もうひとつは「人間の行為や歴史的事象を論理的」に求めるという部分だ。本書の中ではフランス革命が引き合いに出されていたが、人間は、偶然が重なり合ったものごとには“理由がある”という固定観念を持っている。そのため、細かな点と点をなかば強引にも、線へと結びつけてしまう習性があるそうだ。また、その裏には“理由が見つからないことに対する不安”も見え隠れしている。

 ただ、本書では必ずしも陰謀論を真っ向から否定していない。陰謀論が「社会の不安や緊張のガス抜き」として機能することについては、ある種の心理的セラピーのひとつとして解釈されている。あくまでも陰謀論を「知った」と語る当人が、みずからの不安や緊張をやわらげる手段として使うならば、健全だというのだ。

 しかし、陰謀論が誰かの手を離れ、不安や緊張をより広めるために使われはじめることには警鐘を鳴らしている。本書では、陰謀論の行き着く先が「ここではないどこか」「今ではないいつか」と表現されている。根拠も実体もない陰謀論を信じる人たちの絶対数が増えてしまえば、いずれ「破壊に向かう」という危険性も示唆されている。

 今後もおそらく生まれ続けるであろう陰謀論。話のネタとしてふれる程度ならよさそうだが、どっぷり浸かってしまうのは危険だ。情報に振り回されることなく、みずからの“目”や“耳”を信じて生きていくのがよいかもしれない。

文=カネコシュウヘイ