日本で大ヒットも…、米国で苦戦中の4つのマンガ

海外

2014/3/15

 海外でも人気を博す日本のマンガやアニメだが、なかには文化の壁を越えられず、苦戦を強いられる作品もある。NY在住の米国人エージェントのC氏に、出版されたものの、その結果があまり芳しくなかったという作品をその理由とともに紹介してもらった。 

  • JoJo's Bizarre Adventure
  • Kitaro
  • Wandering Son
  • Slam Dunk

■『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦/集英社)“JoJo’s Bizarre Adventure”
 日本では大人気の「ジョジョ」シリーズ、米国でウケない理由はいくつかあるようだ。最近は、新しいアニメーションやビデオゲームのおかげで認知されつつあるが、初めて登場したのは10年前で、その際のマーケティングは、失敗例として有名だとか。ストーリーは、暴力的、宗教的問題がある部分の表現とイラストを変更。同様に登場人物名も変えてしまったため、潜在的ファンはそれを支持しなかった。
 ネットのおかげで、再びジョジョコミュニティは広がっているようだが、「ジョジョ」シリーズは、巻数が多いため、絶版も相次ぎ手に入れるのが難しい状態。同様に内容は変更されているが、最近になり電子版がリリースされたので、これから巻き返しを図れるかも!?

■『ゲゲゲの鬼太郎』(水木しげる/講談社、他)“Kitaro”
 過去5年もの間で、古典的なマンガの翻訳出版は、トレンドになりつつある。手塚治虫作品や竹宮惠子作品、より最近のものでいえば、岡崎京子作品などがリリースされている。こういった古い作品の多くは、贅沢なワイド版ペーパーバックか豪華なハードカバーで出版されている。その多くは、リテラシーのある人やマンガに造詣の深い読者が対象だ。水木しげるの戦争マンガや『のんのんばあとオレ』は、カナダの出版社からすでに翻訳されていて、売上げも悪くなく、賞賛された作品が、『ゲゲゲの鬼太郎』は、ほとんど商業支持を得ていない。というのも、この作品の英語版の存在があまり知られていなかったのだ。日本の妖怪マンガの最高峰ともいえる作品をうまくプロモーションできなかったのは非常にもったいない。

■『放浪息子』(志村貴子/エンターブレイン)“Wandering Son”
 放浪息子は、ジェンダーについての感動長編ストーリーで、そういったトピックスは、ほとんどのマンガ出版社やマンガ読者にとって、革新的なものだった。このようなジャンルは、読者が「マンガ」と位置づけるには難しく、外される内容なのだ。なので、出版関係者達もどの程度この作品が受け入れられ、広がっていくのか予測がつかなかった。
 これらの本は、ワイド版ではなく高値なハードカバーでリリースされ、ビジュアルは秀でているが、300も400もページ数があったら売れないだろう。また、年に1回程度のリリース間隔は、マンガの鮮度が薄れ、読者をキープするのは難しい。2012年には、米国で最も権威あるマンガ賞のひとつ、ウィル・アイズナーマンガ業界賞にノミネートされ、2013年には、米国図書館協会から優れたグラフィックノベルの1冊として選出されたが、今後は、寄付や定期購読を募るなどの方法をとらないと、シリーズ化していくのは難しいだろう。

■『スラムダンク』(井上雄彦/集英社)“Slam Dunk”
 米国と日本のメディア市場の反応が乖離した一番の例が『スラムダンク』。米国ではスポーツは巨大産業で、世界でも資金と権威がある企業などが、スポーツチームを購入するといった背景がある。喜劇的なマンガとリアリティの強いスポーツを結びつけるのは米国人にとって馴染みのないことなのかも。今までのマンガに類を見ない、驚くほど熱く芸術的なマンガだが、苦戦の理由は、バスケットボールファンがたとえマンガを読むとしても彼らにとってのヒーローは、アスリートではなくスーパーヒーローという点。その上、桜木花道がプロではなく初心者で、練習を積んでいくストーリーは生ぬるく、米国人をイライラさせるのだ。若い子たちにとっては健全なストーリーかもしれないが、ティーンたちはスターに憧れるもの。出版社がNBAのバスケットボール選手をプロモーションに起用するなど面白い取り組みをしたものの残念ながら、ジャンプタイトルの中で、米国史上最も売れない作品となってしまった。

 ほとんどの米国の出版社がそうだと思うが失敗作は必然と現れる。だが、今後の米国のマンガ市場は、『進撃の巨人』『黒執事』『青の祓魔師』『チーズスイートホーム』など最近のヒットを手がかりに、回復していくことを願いたい。

 余談だが、日本ではコミックとともに映画も大ヒットしたヤマザキマリの『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)。現代日本にタイムスリップした古代ローマ人が登場し、日本の文化「お風呂」がテーマということで、米国人にも受け入れられそうだが、男性器が丸見えのカバーイラストが物議を醸すだろうと一部では懸念された。後に、該当部分にタイトルを載せるデザインの工夫が施され出版されている。

【お詫び】記事に誤りがあり一部修正しております。

構成=中川寛子