パズドラ、Facebook、Google、Twitter…、IT企業が儲かるしくみ

業界・企業

更新日:2014/4/10

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 「広告でしょ?」と思うかも知れない。しかし、多くのネットサービスでの儲けを生んでいるのは広告だけではない。また広告と言っても、グーグルが提供するアドセンスと呼ばれるキーワード広告もあれば、企業が独自に営業して獲得するバナー広告もある。アマゾンなどの商品ページに誘導するアフィリエイトも儲けを生む仕組みのひとつだ。

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 『まいにち見るのに意外と知らない IT企業が儲かる仕組み』(技術評論社)の著者、藤原実氏はITやサブカルチャーに強い異色の税理士。華やかな新製品やサービスに目を奪われがちなこの業界の裏側の「しくみ」を、おカネの流れから丁寧に分かりやすい言葉で解説してくれている。

 例えば――人気のパズドラの儲けは、いわゆるアイテム課金やコンティニュー課金だけではない。リワード広告と呼ばれる、他のアプリへ誘導する広告からも生まれている。グーグルやアマゾンの利益率は実は意外と低い(研究開発や流通インフラに投資している)。逆にアップルのiPhoneは販売価格の70%近くが利益に――と言った具合に、切り口はあくまでもおカネだ。国内企業では、ソニーや楽天、NTTグループの稼ぎ頭は既に利益率が高い金融部門になっていることも、決算報告書などを紐解きながら明かされていく。

 巨大なグローバルIT企業が次々と生まれる米国に対して、日本は起業を目指す人が少ないと言われる。国もベンチャー育成に力を入れるが、著者はその原因が資金調達の手法の違いにあると断言する。よく指摘される「ベンチャースピリット」の有無などではなく、起業したばかり(アーリーステージ)の会社に、きちんと出資を行うベンチャーキャピタルが少ないのだ。それはなぜか? 筆者は「ベンチャーキャピタルがベンチャーではない」点を指摘する。大企業が多い日本のベンチャーキャピタルは、ある程度事業が軌道に乗った段階(ミドルステージ)以降でないと資本を投じないという訳だ。

 成功している企業の表面的な華やかさに惑わされず、その「しくみ」を知ることが大切と筆者は説く。そうすることで、社会人ならば自分がそのしくみのどこを担っているのか、どうすれば、より良いしくみに向かうことができるのか、あるいは自らそのしくみを創り出す=ビジネスを生み出すことができるのか、そのヒントを本書から掴むことも可能だろう。

文=読書電脳