就活にも役立つ? 「売れる声優になるための30のこと」が勉強になりすぎる!

ビジネス

公開日:2014/4/12

 なりたい人、30万人。
仕事としている人、1万人。
うち、食べていける人、300人。

 とあるテレビ番組で人気声優さんが語った、アニメの花形・声優のキビシイ実態だ。週に何十本もオンエアされるアニメのメインキャラを演じる声優さんたちの顔ぶれは「毎度おなじみ」で、ひと握りの人気声優さんたちをシャッフルしているといっても過言ではない。声の仕事で食べていける“3%”に入るための秘訣が『売れる声優になるためにあなたが今しなければならない30のこと 現場が欲しいのはこんな人』(平光琢也/幻冬舎)にある。

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 平光氏は、『テニスの王子様』『HUNTER×HUNTER』など、数々のアニメの音響監督を務めた人物。本書は、現場を知り尽くした音響監督だからこそ書ける「売れる声優」になるための指南書である。ページをめくればめくるほど、声優としての心構えや役作りのポイントなどが、具体的に示されている。

 だが、本書は単なる声優指南書には留まらない! 「就活虎の巻」としても、大いに参考になるからだ。たとえ人気声優でも、大きな役を得るためには「オーディション」を受ける。声優はいわば、毎作品ごとに「就活」している。副題の「現場が欲しいのはこんな人」を知ることで、厳しい「就活」に勝つことができるかも?

■自分で自分をプロデュース
・あなたは何の商品か、「具体的」に考えよう
声優を商品だと考えた場合、その商品が何であるかがわからなければ、事務所やマネージャーは売り込みができない。
・「何でもできます」は「何もできない」
イメージできないオリジナリティを強調されても、採用側は困る

 就活において「自分がどんな人間なのか」を問われる場面は少なくない。自分がどんな人間なのかを客観的に把握しよう。その上で、自分に何ができるのかを明示したい。先方が「ドイツ語のできる人」を求めているのに、「自分は英語ができます」とアピールしても意味がないし、「広く浅くあちこちの外国語がわかります」と言っても、「で、ドイツ語は?」と突っ込まれるだけ。需要と供給が合えば、内定への道は開ける。

■感情を下半身に落とす
 あらゆる演技者に必要なのは、「解放(リラックス)」と「集中(コンセントレイション)」を同時に持つこと。観客に伝えるためには、あらゆる状況に対応し、冷静にコントロールできる解放と、役に入り込んで行く陶酔的な集中が求められる。それを体現するには、上半身を解放し、下半身に感情を落として集中することだと、平光氏は言う。上半身がリラックスしていれば、声も上ずることなく、頭も冷静で、舞い上がることはない。けれど、下半身に感情を抱え込んでいるのでテンションは下がらない。
 就活の面接では、緊張しすぎて考えていたことが飛んだり、トンチンカンなことを口走ったり、何も言えなくなることも多々ある。「上半身を解放、下半身に集中」は使える!

■制作側は、上手さより柔軟性を見ている
 声のオーディションで制作側がポイントに置くのは「柔軟さ」だという。ディレクションへの対応力、つまり「言われたことを理解する頭のよさと、臨機応変な演技力」。これは就活でも重要だ。たいていの企業は新卒社員に即戦力を期待しているわけではないし、入社後にはその企業ごとのルールや作法を覚えて仕事をしなくてはならない。勘所よく、現場に適応できる人材かどうかを、企業は面接で見ているのだ。この他にも本書には、オーディション前の準備の話は就活の応募にも応用できるし、就職後の仕事との向き合い方などにも参考になる話がいくつも並んでいる。

 そして。平光氏はこう記している。

「受かる受からないで一喜一憂しないあなたらしさが売り込めたかどうか、あなた自身が後悔のない、すっきりしたオーディションが受けられたかどうかがすべてだと思ってください」と。落ちた時に、そんな風に思えないかもしれないけれど。

「良い芝居さえすれば、必ずどこかで誰かが聞いてくれています」

 がんばっていれば、必ず誰かが見てくれている。そう信じることが一番大切なのかもしれない。

文=水陶マコト