「一人娘が妹を連れて井戸に飛び込んで焼け死ぬ」、その心は? 死んでしまった“ことわざ”たち

文芸・カルチャー

2014/4/14

クイズ番組で「動物が出てくることわざを5つあげよ」なんで問題が出たりする。「猫に小判」「猿も木から落ちる」「犬も歩けば棒にあたる」「馬の耳に念仏」…うーん、出てこない! あるはずだけど、限られた時間にそんなのいくつも出てきやしない。ことわざ辞典でもひょいと引けば、いくらでもあるだろうに。

…などと思いきや、実は辞書にも出てこなくなったことわざがいくらでもあるという。『辞書から消えたことわざ』(時田昌瑞/KADOKAWA 角川マガジンズ)によると、日本には本来古代から現代まで5万以上のことわざがあるという。今では消えたことわざまで使いこなすことができれば、日常のあらゆるシーンで相手をアッと言わせられること請け合いだ!

○ムカつく上司に言い返したいとき
例えば、上司に度重なるミスをしつこく説教されたとき、こんな風に言ってみてはいかがだろうか?

「“百人を殺さねば良医になれぬ”って言いますよね?」

これは、明治時代以前の文献には見られない比較的新しいことわざという。失敗を繰り返しながら、発展した医学の時代背景を感じさせるもの。100人も殺すなんて、その響きに相手を驚かせることができそうだ。

上司が問題をきちんと把握せず何やら誤解している様子であれば、こう返そう。

「それは“尻に目薬”です」

目薬は眼の病に用いるものであって、尻に使っても効き目はない。つまり、見当違いも甚だしいということ。

さらに、再三抗議をしても、立場が上だからと威張って話を聞かない相手に対する決めゼリフがこちら。

「“虎の皮を着る羊”ですね」

「それをいうなら“虎の威を借る狐”だろう」と言われるかもしれない。その通り、同じ意味のことわざだが、一般的に知られる後者が抽象的な表現であるのに対し、前者はより鮮明なイメージだ。

斜め上をいく言葉のオンパレードで、上司に一目置かれるようになるかも…?

○草食系男子が恋愛をしたとき
流行りの草食系男子。もし相手に気持ちをうまく伝えられないのなら、こんな言葉で相手の気を引いてみてはいかが?

「“鳴く蝉より鳴かぬ蛍が身をこがす”というものです」

『後拾遺和歌集』に登場する和歌を元にしたもので、自分の思いを音にだして騒がしく鳴く蝉よりも、自分でだす光で我が身をこがすような蛍の思いの方が熱い、という意味。口に出さない方が出すより思いが深いという、日本独特の感性が表れている。この切ないニュアンスに相手はほだされるかもしれない…。

また、好きな相手の気を引こうとしてお金を貢いでばかりいることに気付いたときには、次のようにチクリといってやるといい。

「まるで“黒焼きにせねど小判はもっと効き”だね」

“黒焼き”とは、イモリを黒焼きにしたもので惚れ薬のことらしい。要するに、相手の気持ちを自分に向けさせるためには、惚れ薬などよりお金の方がよっぽど効果があるというもの。そして、そんなお金のかかる恋は早めに諦めたほうがいいだろう。

○面倒な相手を煙に巻きたいとき
正論ばかり吐いて面倒な相手を黙らせたいときは、このことわざがオススメ。

「“雨の降る日は天気が悪い”からね」

「そんなの当たり前」と言われるだろうけれど、まさにその通り。わかり切ったことを臆面もなく言い募る相手を批判する言葉である。

さらに、相手がくどくどと言い募るようであれば、次のようにいって逃げてしまおう。

「“一人娘が妹を連れて井戸に飛び込んで焼け死”んだらしいよ」

一瞬、ギョッとしてしまう。でも、よくよく考えてみると、おかしな話であることに気付く。一人娘ならば妹がいるはずがないし、井戸に飛び込んだなら水死はあっても焼け死ぬことはない。つまり、あり得ないということ。

こんなにユニークでまだまだ使えるのに、辞書にも載ることなく忘れ去られつつあることわざたち。知れば知るほど、日本の古きよき文化も再発見できそうだ。もちろん、番組のことわざクイズなんて“余裕のよっちゃん”になるはず…。

文=佐藤来未(Office Ti+)