「コナン」はプロットなしで描いている!? コナン青山剛昌・ちはやふる末次由紀 対談

マンガ

公開日:2014/4/16

 今年、連載20周年を迎えたマンガ『名探偵コナン』。その歴史とともに、小学生から大人になった読者も多いことだろう。マンガ、アニメ、実写ドラマに『ルパン三世』とのコラボレーション、さまざまな形でファンを魅了し続ける『名探偵コナン』を、同じく創刊20周年を迎えた『ダ・ヴィンチ』5月号で大特集。

 ファンを公言する佐藤健と著者・青山剛昌との対談や、『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉による書き下ろしコラボ小説、青山自身の描きおろしイラストなど豪華企画を掲載。ここでは、大人気かるた漫画『ちはやふる』の著者、末次由紀との対談を一部公開!

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【末次】 先生はプロットは作るんですか?

【青山】 全然。まったく作りません。

【末次】 ほんとですか!? でも『名探偵コナン』って、いろいろな謎の伏線を、とても上手に長い時間をかけて張っているじゃないですか。

──たとえば灰原は2巻で存在が匂わされていましたが、コナンの学校に転校してきたのは18巻でした。

【青山】 灰原はね、もう少し早く出そうと思っていたんです。でもアニメが始まって、コナンのライバルがほしいと言われまして、服部平次を先に出したんです。『ちはやふる』の伏線だって、すごいじゃないですか。そもそも1話目は、千早ちゃんのクイーン戦から始まってる。あの絵を見て、いろいろ深読みしてしまいます。千早ちゃんの「お願い だれも息をしないで」っていうセリフもいい。あれを超えるセリフはなかなかないですよ。

【末次】 ああいう始め方にすれば、読者に安心して読んでいただけるかなと思いまして。これは千早がクイーンを目指すストーリーなんだとわかる。

【青山】 それと俺、机君は絶対に千早ちゃんが好きだと思ってたんですよ。「1字決まりが20枚ある」と教えたお礼に、キャンディーもらうでしょ。机君はそれを食べずに、大事に宝物にしているはず。あとでこのキャンディー出てくるぞって、アシスタントにドヤ顔で言ったんだけど、一向に……(笑)。

【末次】 なんて細かい着眼点!

【青山】 来年は、きっと新がチームを作って高校選手権の団体戦に出てくるでしょ? それで瑞沢高校と戦う。

【末次】 うーーん、それを描くと長くなっちゃう。ほら、私、長期連載恐怖症ですから(笑)。先生は、プロットがないということは、伏線を張るタイミングや内容は、計画を立てているわけではないんですね?

【青山】 ないです、ないです。カンというか気分というかですね。

【末次】 えーっ、それで描けますか!? 忘れちゃいませんか!?

【青山】 ほぼ覚えてますね。過去の伏線も、これから描かなきゃいけないことも。アニメの監督にも全部教えてるんですよ。黒ずくめの組織の“あの方”は誰か、とか。単行本の伏線部分に付箋を付けて渡したんです。あれ返してほしいなあ、便利だから(笑)。

【末次】 それ、ファンが見たら大変! 私、毎回の事件も解けないし、黒ずくめの組織も全然わからない。皆さん、ネットで熱心に推理してるじゃないですか。それを見て、展開を変えたこととかありますか? 裏切ってやるって(笑)。

【青山】 ないですね。今さら変えられませんし。当たったらおめでとうございます、という感じ。アガサ・クリスティが『カーテン』というエルキュール・ポアロの最後の事件を書くんだけど、自分の死後出版するように言うんですね。あれ、かっこいいなと思って。俺もそうしようかなと思ったり(笑)。

【末次】 先生の死後に“あの方”が判明!? でも先生、長生きされそうですから、120歳とかになっちゃうかも(笑)。それまで待てません!

取材・文=松井美緒より/ダ・ヴィンチ5月号「祝! 連載20周年『名探偵コナン』特集