【マンガ】歪んだ愛、狂気と暴力の交錯するエロティック・ホラー

マンガ

公開日:2014/4/20

 エロとホラーは意外ととりあわせがいい。ホラー映画ではだいたい美女がシャワーシーンを披露したあとに殺されるし、淫靡で耽美な雰囲気が背徳感とともに恐怖の扉を開くこともある。『ダ・ヴィンチ』5月号では、そんな混濁する性愛と恐怖を描いたエロティック・ホラーマンガを紹介している。

――男女の関係がときにダークサイドに迷い込むことがある。想いが強すぎる恋愛感情が、心のバランスを崩し、非日常の扉を開いてしまうのだ。

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 『被愛妄想』のタイトルは「エロトマニア」という精神疾患のこと。自分が相手に愛されていると曲解する極度の妄想癖であり、ストーカーの原因になるとされている。物語では男性教師に恋をした女子高生の妄想がエスカレート。白昼の性的アピールやつきまといなど、常軌を逸した行動に出る。

 『危ノーマル系女子』の主人公は女子にモテモテ。しかし、彼に好意を寄せる女子は、電波系やストーカー、極度のマゾなど、どこかしら壊れている。アブノーマルであることがキャラの個性として日常的に描かれることが、アンバランスな今日の時代を映し出す。

 『ジェノサイダー』で描かれるナツミは、半グレ組織の男に心を支配され、美人局(つつもたせ)に加担している。そんな自分を「下衆だ」と感じてナツミは苦しんでいるわけだが、彼女を憐れんだ中年男性が半グレ組織の標的となり、平和な日常は一挙に崩壊に向かうのだ。

 魔性の女を描いた作品が『籠女の邑』だ。今なお因習や言い伝えが残る人里離れた村で暮らす清楚な美人だが、実は「憑き物筋」として忌み嫌われ、村八分にされている。その美貌に魅せられた男は、人生が破滅するというのだ。

 かように男女の関係は、ときに人間の底知れない闇を覗かせる。

■『被愛妄想(ひあい)』(1巻) 中村卯月 少年画報社ヤングキングC 590円(税別)
新米教師・門前一真が受け持った野枝奏は学園長の娘。一見、おとなしそうな彼女だが、通学バスで身体を密着させてきたり、他の女生徒がいる教室で性的アピールをしたりと過剰な求愛行動に出る。さらには一真の愛娘に接近し、その一途さは常軌を逸していた。

 

■『危(アブ)ノーマル系女子』(1~2巻) 真田ジューイチ フレックスコミックス メテオC 各571円(税別)
高校生の秕シンヤは女子にモテモテだが、「ロクなものじゃない」と冷ややかな目で見ている。なぜならシンヤのとり巻きの女子は、妄想電波女、極度のマゾ、ストーカー、快楽殺人犯、吸血女等々、みんなアブノーマル。かわいさと狂気が同居する学園ストーリー。

■『ジェノサイダー』(1巻) 宮崎摩耶/原作 秋吉宣宏/マンガ 徳間書店ゼノンC 580円(税別)
陰のある美少女・ナツミは、半グレ集団のリーダー格の男と付き合っている。性処理の玩具のように扱われながら、ナツミは男の暴力に支配され、心が壊れかけている。救いを求めたナツミがSNSで知り合った中年男性と会ったことが男に知れ、無残な事件へと発展……。

■『籠女(かごめ)の邑(むら)』(全3巻) Cuvie 講談社シリウスKC 600~619円(税別)
怪奇マニアの岩松は心霊スポット巡りの途中で謎の村に辿り着いた。二人は姉妹と出会い、一族の豪邸に滞在することに。しかし、どこか様子がおかしい。その一族は「憑き物筋」として村人から忌み嫌われ、長女のあやめが、男を食らう鬼女になると信じられていた。

構成・文=大寺 明/ダ・ヴィンチ5月号「コミック ダ・ヴィンチ」