『オサムグッズ』『リカちゃん人形』80年代人気商品の知られざるエピソード

社会

公開日:2014/4/21

 昨年8月に、1980年代の少女マンガの金字塔『ときめきトゥナイト』(池野恋/集英社)のスピンオフ作品『ときめきトゥナイト 真壁俊の事情』が発売され、即日完売したことが話題を呼んだ。作品自体のおもしろさはもちろん、80年代の空気を懐かしみ、そのころの自分を思い出す手段として、『ときめきトゥナイト 真壁俊の事情』を手にした人も多いはず。このように、いま、にわかに80年代のカルチャーが見直されている。そこで今回は、『80’sガールズ大百科 おとめちっくよ、もういちど』(実業之日本社)から、80年代に少女たちの心を虜にしたグッズや作品をプレイバックしながら、知られざるエピソードをご紹介しよう。

 まずはなんといっても『ときめきトゥナイト』。作品自体は、真壁俊と江藤蘭世の恋愛模様を描いた第1部、蘭世の弟・鈴世と彼の幼馴染・なるみが主人公の第2部、蘭世の娘が主人公の第3部と、少女マンガ誌『りぼん』(集英社)で12年にわたる長寿連載だったが、オールドファンとっては、やはり第1部に別格の思いがある。

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 作者の池野恋自身は、お気に入りのキャラを聞かれ、「大切なキャラは真壁俊とダーク=カルロです。これは自分の中でも格別です」とやはり第1部に並々ならぬ思い入れがあることを明らかにしている。ダークは、俊の先祖の直系の子孫で、顔も性格も俊に似ており、多くのファンを持つキャラクター。作中で亡くなってしまったが、そのときには、「“どうして殺したの!?”という抗議の手紙がたくさん来ました。なかにはカミソリが入っていたもの」とすさまじい反響だったことがうかがえる。同じく脇役として人気だったのが、蘭世の恋のライバル・神谷曜子。この名前、「曜子」という名前を使いたかったというのが池野氏の希望だったようだが、「神谷」という名字はなんと、「声優の神谷明さんからピーンときて」とのこと。今後、作中に曜子が出てきたときは、神谷明の声で脳内再生してしまいそう!?

 同じく80年代に乙女の心をわしづかみしたのは、イラストレーター・原田治氏による「オサムグッズ」。イギリスの童謡『マザー・グース』をベースにした、ジャックやジルといったポップな絵柄のキャラクターが人気を博し、ミスター・ドーナッツの景品として覚えている人も多いのでは? カフェ・オ・レボールやミニBAGのグッズのためにドーナツを買う人もいたぐらいで、原田氏も「ミスドは当時、一度に500万個の景品を作り、それがたった3日でなくなったこともあったそうです……バブルって、やっぱり異様な時代でした」と振り返っている。たしかにバブルの恩恵もあっただろうが、ヴィヴィッドな配色とポップなデザインは当時流行っていたアメリカカンカルチャーを感じさせ、今見てもときめいてしまう。

 また、当時の女の子たちの宝ものと言えば、ジェニー&リカちゃんといったお人形たちだ。しかし、この2つの違いを知っているだろうか。販売元であるタカラ(現・タカラトミー)の関係者によると、「バービー(ジェニー)はちょっと高い年齢層に向けて、オシャレをコンセプトに販売したもの」で、リカちゃんは「“ごっこ遊び”が主体の商品展開でしたので、ターゲットはちょっと低めでした」とのこと。振り返ってみると、当時はジェニー専門誌が創刊し、カタログのような完璧な世界観と人形用とは思えない洗練されたファッションが紹介されている。一方、リカちゃんは看護婦さんといったお仕事ものの衣装や、リカちゃんハウスの「ゆったりさん」などが展開されていて、「ごっご遊び」にぴったり。また関係者によると、お人形の関連グッズでは靴がよく売れたという。それは「日本では玄関で靴を脱いだり履いたりしますよね」「子どもにとって玄関というのは、お人形遊びをするうえで必須なんです」という理由だというから、興味深い。

 幼いころは、目の前にある商品を集めることに夢中だったが、大人になるとカルチャーを体系的に整理し楽しめるようになる。“あの頃”が一瞬にして蘇る、『80’sガールズ大百科』。改めて眺めてみると、当時は気付かなかったオモチャやマンガの新たな一面が見つかるかもしれない。