東大院生の男性ジャニーズファンが綴った、ジャニーズの魅力とは?

芸能

更新日:2014/4/24

 アイドルファンの一般的なイメージは、やはり“異性に惹かれる”という見方だろう。男性は女性アイドルに、女性は男性アイドルに惹かれるというのが思い浮かぶが、同性のアイドルを追いかける人たちの姿も、コンサートやイベントなどへ足を運べば意外と少なくない。

 そのような状況がある中で、ひじょうに興味深い実録が綴られた1冊がある。男性ジャニーズファンである福博充著の『東大院生。僕、ジャニ男(ヲ)タです。』(アールズ出版)だ。熱狂的な女性ファンたちがひしめき合うイメージの強いジャニーズのコンサートを通して、嵐やタッキー&翼、ジャニーズJr.、ジュニアからメジャーデビューを果たした各ユニットへ傾倒していく同性ファンの姿が、時系列をたどる形で詳細に描かれている。

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 著者がジャニーズへ惹かれるきっかけとなったのは、2002年。古くから付き合いのある友人であり、Kinki Kidsの堂本光一を追いかけていた大先輩“ねえさん”に誘われて、嵐のコンサート「HERE WE GO!」へ参加したのがジャニーズとの出会いだった。初めてのコンサートでは「今でも忘れない」ほどの衝撃を受けたと語る著者だが、とにかく「きらきら」していたジャニーズのとりこになった。

 その後、嵐の握手会やコンサート、年末恒例のカウントダウンライブなどへ参加する中で次第に、嵐からジャニーズそのものへ惹かれるようになっていく。それは、ひとりのファンとしてだけではなく、東京大学大学院生としてジャニーズを研究対象として捉えるようになったのも理由だった。ジャニーズを社会における「総体」と位置づける中で、公私ともにジャニーズへ身を捧げる中、コンサートで隣り合ったファンたちとの交流を通して、ますます「J(ジャニーズ)化」していった。

 著者は本書の中で、ジャニーズ最大の魅力は「脈々と受け継がれる“伝統”を必死で継承しようとする姿(一部改訂)」だと語る。ジャニーズは独自の育成システムが確立されている。オーディションで選ばれた人間は、ジャニーズジュニアとして先輩たちのバックダンサーなどを務めるかたわら、ジュニア内でのグループ競争を通じて“下積み”を重ねる。

 そして、さらに選ばれた中でメジャーデビューを果たすという、さながら野球やサッカーのように次の世代を発掘して育て上げるシステムがあるからこそ、ジャニーズというひとつのブランドへ多くのファンたちが、ときに世代を超えて魅了される理由なのだろう。

 最後に、本書では存在が大きくなるにつれてライブやイベントから遠ざかる、いわゆる“他界”していくファンの姿なども綴られている。本書の中では、ジャニーズファンだけではなく、アイドル好きならば共感できるであろう悲喜こもごもがたくさん詰まっている。加えて、ファン目線からアイドルという存在を考察する上でも参考になると思われるので、ぜひとも手に取っていただきたい。

文=カネコシュウヘイ