実写映画化も決定! 腐女子支持1位のBLマンガ家ヨネダコウの新作が切ない!

BL

2014/4/25

 昨年、『囀る鳥は羽ばたかない』(大洋図書)や『NightS』(リブレ出版)など、数々の人気作品を生み出し、腐女子のレビューサイトである「ちるちる」のBLアワード2014コミックアーティスト部門で1位に選ばれたヨネダコウ。そんな彼女のデビュー作で、「このBLがやばい! 2009年版」では3位にも選ばれた『どうしても触れたくない』(大洋図書)が実写映画化され、5月31日から公開されることが決まった。さらに、根強いファンを掴んだこの作品のスピンオフ『それでも、やさしい恋をする』(大洋図書)も4月1日に発売されて人気になっているよう。彼女の原点でもある作品のスピンオフということで、期待値も高かったようだが、いったいどんなところが人々の心を惹きつけたのだろうか。

 まず、『それでも、やさしい恋をする』は、『どうしても触れたくない』と同じように、少しずつ主人公たちの気持ちが変化していく過程が丁寧に描かれている。『どうしても触れたくない』では、ゲイの嶋がノンケの上司・外川を好きになり、互いに葛藤するのだが、『それでも、やさしい恋をする』でもゲイの出口と友達の紹介で知り合ったノンケの小野田が惹かれあっていく。はじめは、ノンケを好きになってツライ思いをしている嶋を見て「なんでそう簡単にノンケになんか惚れるんだよ!? 普通はどっかでブレーキかけんだろ…っ」とイライラした出口だが、自分も小野田に惚れてブレーキがかけられなくなる。それに、もともとノンケだった小野田も、はじめは「出口さんとなんてありえませんって」と言っていたのに、だんだん惹かれていって、最後には「出口さんの気持ちに気づかなかった三年が悔しい」と言うほど好きになっていくのだ。こうやって見ていくと、人を好きになるのに男だからとかは関係ないと思わせてくれる。

 また、ゲイ側の臆病な描写がリアルで、見ている方も胸が苦しくなる。ずっと一緒にいながら「俺って友達?」と聞けず、友達を装いながら、なんでもないことのように「あのさ今日お前んち行っていい?」と震える手で電話をする出口を応援したくなったのはひとりやふたりではないはず。それに、そんな関係を3年も続けながら、小野田が嶋に気があると言うと、自分にも可能性があるんじゃないかと浮かれ、小野田の家の前で彼の帰りを待ちながら、告白の練習をする姿はとてもいじらしい。両思いになっても、寝ている小野田の顔を見つめ、寝起きの彼に平気な素振りで「まだ早いから寝てろよ」と言うが、小野田が再び眠りにつくと顔を赤らめ、長い長いため息をつく。「好きな奴の寝顔が見れる」「好きな奴のメガネが外されてる」「好きな奴と好きなだけ一緒にいられる」。そんな何でもないことの幸せを噛みしめる姿を見ると、こちらまで幸せな気分にさせられる。

 そして、「映画を観ているよう」と評されることもある彼女の作品は、読んでいるだけで映像が浮かぶような描写がたくさんある。途中の駅で降りて別れる小野田を眺めながら、それを目に焼きつけるようにそっと目を閉じる出口。小野田が駅のホームで彼女と手をつなぎながら歩いている姿を見るシーンでも、セリフやモノローグはないのに、その視線だけで出口の気持ちが伝わってくるよう。さらに、風邪で寝込んでいる小野田の手をそっと握り、顔を赤らめながら切ない表情で寝顔を見つめ、彼女と小野田が手をつないで歩く姿を思い返す姿には、きゅんとするはず。間や空気感まで伝わってくるような無言の描写。それこそが、彼女の作品の魅力とも言える。

 心理描写やBLならではの切なさを、その情景が目に浮かぶほど丁寧に描き出すヨネダコウだからこそ、腐女子も惹かれるのだろう。原作ファンには実写映画化が敬遠されがちだが、彼女の作品ならイメージに近い作品が期待できるかもしれない。

文=小里樹