これはブラック過ぎる… 新卒女子大生が会社を8日で辞めた理由

社会

公開日:2014/5/2

 ゆとり世代の若者が短期間で仕事を辞めてしまうと「これだから、ゆとりは…」などと、ぼやく言葉が聞こえてくる。

 最近の若い子は叱られ慣れていない。辛いことがあると簡単に逃げ出す。責任感がない。などと思われがち。新卒で入社したゆとり世代の社員が、たった8日で辞めてしまったとしたら「やっぱり、ゆとりはダメだ…」と思ってしまう人も多いだろう。

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 そんな人に読んでもらいたいのが『どこにでもいる普通の女子大生が新卒入社した会社で地獄を見てたった8日で辞めた話』(小林リズム/泰文堂)。著者である小林リズムさんが実際に経験したブラック企業での出来事が書かれた1冊。

 たった8日で地獄を見るなんてことあるの? と、思ってしまうが、彼女の働いた会社はあまりにもブラックだ…。

 小林さんは4月1日に入社して、4月8日に仕事を辞めた。正社員としては8日の勤務だが、実際には2月の半ばから研修を行っている。
彼女の入社した“株式会社ウージャリ”は、当時、初めて新卒採用を行う右肩上がりのベンチャー企業。これだけだと聞こえがいいかもしれないが、中身は想像もできないほどひどかった。

 最初におかしいと感じるのは面接を行った“代表”と呼ばれる人が“社長”ではないということ。代表はある会社に訴えられており、社長の役職につけないと言う。そのため、社員が肩書きだけ社長の代わりをしている。また、社員全員が発達障害というよくわからない点も。何か問題があれば「お前らはこの会社から出たら生きていかれんのや! 破滅するで! わかっとんか!」と怒声が響く。代表は発達障害という言葉を使い社員たちを洗脳していたのだった。発達障害と言われた社員は、代表の知り合い医師に発達障害の診断書をもらってきている。その様子は一種の宗教のよう。ここで辞めてしまえば良かったのだが彼女は社会人とはこういうもの、不条理なのも仕方ないと思い込もうとしていた。

 そして、代表のセクハラも激しくなる。高級レストランでの社長の話し相手は毎晩、深夜まで続く…性欲について語り、愛人にならないかと誘ってくる。また、衣装代を渡されミニスカートを買ってくるように言われたことも…。

 疑いながらも研修を続け4月1日、正社員になる。すると今度は朝の6時半から無給の講義が始まる。講義と言っても代表の話を聞くだけなのだが、ここでもセクハラ発言は続く。「お前たちは全員エロいんや」なんて朝から言われればたまったものではない。少しでも代表が気に入らないことがあれば怒鳴られるのも辛い。代表からのセクハラや怒声だけならばまだ我慢できたかもしれないが、同時期に入った中途入社の社員にも裏切られ、ひどい目に…どんなことが起こるかは、ぜひ本書を読んで確認してほしい。

 彼女が入社して8日目で辞めてしまうのは仕方がない…。ゆとり世代だから我慢がないわけでもないようだ。休みがない、残業代が出ない、だけがブラック企業ではない。中には彼女の働いた会社のように、ありえない現実が繰り広げられている会社もある。

 もし、入社した会社がブラック企業だったならば、自分の心と体を守るためにも無理せず早めに辞めてしまうということもひとつの選択肢なのかもしれない。

文=舟崎泉美