自炊で電子化もいいけど… 大切な紙の本を修理する方法

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/22

連休に実家へ帰省して、屋根裏の倉庫を片付けろと言われた。アルバムや教科書、カセットテープやビデオ、オモチャ、服…思い出に浸りながら仕分けし、大半は処分したけれど、写真アルバムと何冊かの本が残った。

好きだった絵本や児童書は、けれどもう30年近く前のモノ。開くとページが取れたり、表紙と本分の部分がパカッと分離してしまったり、正直、コンディションは悪い。 いっそバラして自炊・電子化も考えたが、思いきれない。本の重さも、ページの触り心地も、紙の匂いも全部引っくるめて大切な一冊だからだ。

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かといって、このまま朽ちていくのは忍びない。図書館で働く友人に、修理の方法を相談したところ、「まずはこれを読もうね」と渡されたのが、絵本『ルリユールおじさん』(いせひでこ/講談社)だ。物語の舞台はパリ。ある朝、少女ソフィーが大切にしていた『植物図鑑』が壊れてしまった。新しい図鑑ではなく、「この本をなおしたいの」という少女は、“ルリユールおじさん”と呼ばれる職人と出会う。

ルリユールとは、フランス語で製本や製本技術を意味する。フランスでは16世紀末頃からルリユール職人が存在したと言われ、長く伝わる修復技術だ。ソフィーの大切な図鑑が、ルリユールおじさんの工房で丁寧に修復され、新たな本となって蘇る作業工程と、本を修復する職人の思いが、やさしい絵と文章で描かれている。読み終わった後、筆者は「自炊しなくてよかった」と思った。「でしょ?」と笑いながら、図書館勤務の友人は修復のアドバイスをくれた。

■セロテープで修理しない
「破れ」や「割れ」「外れ」た箇所に、セロテープは禁物だ。経年によってセロテープは劣化してパリパリになるし、本もテープも変色する。専用の本修理用テープやページヘルパーを使おう。

■「製本用接着剤」を使おう
「割れ」や「外れ」た箇所は、修理用テープでも修理できるが、貼り方を失敗すると、そのテープが紙を引っ張ってしまって、今度はそのテンションのせいで別の箇所が外れたり割れたりする。そこで使うのが「製本用接着剤(通称ノリ・笑)」だ。専用の接着剤は、紙に染み込まず、膜を作って張り付くので、本の傷みが少ない。

■「外れ」たページを修理するコツ
1ページだけ取れてしまったり、数ページが束で抜けてしまうことがある。これを「外れ」と言うが、専用のノリを入れて元のページに入れようとしても、ミリ単位でページが小口(本の背以外の三辺)からはみ出てしまうことがある。ノリを付け、ページを挿入した後、小口を平らなところでトントンとやって整えよう。それでもはみ出る場合は、定規とカッターで丁寧にカットしよう。

■ヤケやクスミはサンドペーパーで
某古書店でも見かけるが、ヤケて変色したり、読みすぎて小口に汚れが付いた場合は、目の細かいペーパーで擦ろう。やり過ぎに注意。これは、紙のエッジがなくなるので、それが気になる人はペーパーがけはせず、裁断機などで丁寧に隅をカットしよう。

■水濡れにはプレス!
本が濡れた場合、ドライヤーなどでいきなり乾かすとヨレヨレになってしまう。まずは水分を吸い取り、濡れたページに乾いた紙をはさみ、重石を載せて平らにする。時々、紙を交換してあげよう。

簡単にできることを紹介したが、古い希少本や糸綴じ本など、高度な技術を必要とする本は、職人さんに修復を依頼するのがベターだ。ネットで調べればルリユール工房も見つかる。

ルリユールおじさんの父親の言葉を借りるなら、「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリユールの仕事」だ。

断捨離も悪くないけれど、あなたの本につまった大切なモノを忘れないように、1冊ぐらいは本を修理して、棚に置いておくのも悪くない。

文=水陶マコト