かわいい外国・ポーランドの陶器が静かなブーム

暮らし

更新日:2014/5/19

 薔薇が咲く季節になると思い出す─ポンチキ。ポーランドのソウルフードで、薔薇の花びらのジャムの入ったドーナツだ。ポーランドを旅したときに、パン屋さんや露店、駅の売店など、あらゆるところで買い食いしたほど、美味しかった。

 思い出すと無性に食べたくなるが、そう簡単にポーランドには行けないから、気分だけでもと、輸入食材店で薔薇のジャムを買い、ドーナツにのせて食べる。紺と白が特徴的なポーリッシュポタリーのティーポットで紅茶を淹れて。

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 ポーリッシュポタリーとは、名前から想像できる通り、ポーランドの陶器のこと。タレントの優香さんや小倉優子さん、梨花さんなどが愛用していることでも知られ、近頃では、専門店だけではなく、「everyday by collex」や「CIBONE」「Madu」といったおしゃれ度の高いセレクトショップにも並んでいる。

 職場の女の子に聞いてみると、「このお店にある世界観が好き」という人たちが店でポーリッシュポタリーに出会い、人気がじわじわと広がって、この数年、しずかなブームとなっているそうな。



写真:Z C “BOLESŁAWIEC”



写真:Daniel Jędzura

 「ポーリッシュポタリーは北欧系に近いデザイン性がありつつ、けれどベタじゃない感じがいいんだよね。西洋、北欧のデザインが定番化し“未知のかわいいもの”感がなくなりつつある一方で、東欧はまだ見慣れすぎてないし、雑貨好き女子にとって“かわいい外国”と映るところもあるし。ぴしっとしすぎない、ほっこり感があるところが、今の気分ぽかったりして」と丁寧に教えてくれた。

 そんなポーリッシュポタリーをはじめ、東欧の陶器や文化を紹介しているのが『東欧のかわいい陶器』(誠文堂新光社)だ。

ダウントン・アビー
写真:ソルネク流 由樹

 本書では、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、チェコという知ってるけどあまり行ったことがない東欧の陶器が、国ごと、用途ごとにセレクトされ、数多くの写真が掲載されている。眺めているだけでも、東欧の陶器のかわいらしさに楽しくなる。

 同時に、陶器を作っている工場や修道院での製造工程の紹介や、食器と食文化についてのコラム、当地で開催される陶器祭のレポート、ショップ情報など、東欧の魅力が優しい文章と明るい写真で伝わってくる。

 中でも興味深かったのは、ポーリッシュポタリーの代表的な「ボレスワヴィエツ陶器」の工場訪問。首都ワルシャワの南西400kmにあるボレスワヴィエツは陶器の町。大手メーカー・マヌファクトゥラ(MANUFAKTURA)社の工場では、日々、職人たちの手によって陶器が作られているが、あの印象的な模様をどのように描いているのか? 答えは「スタンプ」。一部手描きのものもあるが、多くは様々な模様のスタンプを組み合わせて、職人さんたちがポンポンとテンポ良く模様を押していく。花柄などの場合は、茎を下書きもなく手描きでサラサラと描いてしまう。


ダウントン・アビー
写真:ソルネク流 由樹

 伝統的なシンプルな柄もあれば、職人さんのオリジナルデザインの模様もあり、そういった陶器の底(裏側)には、社名と並んで、職人さんの名前も記されている。製造工程の中でも絵付けはまさに「花形」。お気に入りの職人さんを見つけてコレクションするのもおもしろそうだ。

 ポーランドをはじめとする東欧諸国は、食べ物も日本人の口に合うし、物価も安く、治安もけっこう良くて、実は旅しやすい。

 6~7月はサラッとして過ごしやすくてビールも美味しいし、8月にはボレスワヴィエツの陶器祭もある。10月半ば以降は「黄金の秋」と呼ばれるほどに美しい紅葉も見られる。

 連休は終わったばかりだが、夏以降の旅先に東欧諸国を選んではいかが? 文化に根付いた陶器の使われ方をその目で見て、触れれば、旅先で運命的に出会ったカップやポットは、かわいい宝物になるはず。

 そうそう、ポーランドを旅する際は、ポンチキもお忘れなく。

文=水陶マコト