【PTAの実態と問題点を探る】「年間166日、計430時間に上る活動」「役員の主婦がストレスで不登校に」

社会

更新日:2014/5/19

 教師の体罰やいじめ問題など、教育現場の問題は枚挙にいとまがない。しかし、学校という現場そのものにはメスを入れづらく、その実態がある種の“ブラックボックス”と化している様子も垣間見える。なかでも、子どもたちを預ける保護者たちのあいだで問題視されているのが“PTA”という組織についてだ。

 そこで、自身もPTAに悩まされたという川端裕人氏の著書『PTA再活用論 悩ましき現実を超えて』(中央公論新社)にもとづき、その実態と問題点を明らかにしていこう。

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 そもそもPTAの歴史は古く、起源は終戦直後にまでさかのぼる。1946年、日本の民主化に伴う政策の一貫として米国教育使節団が「両親と教師の会」と称する組織を提案したのがきっかけだ。もともとは大人たちへの「民主主義」教育と子どもたちの教育を考える場所として機能するはずだったが、現状では、学校運営を担うひとつの組織として捉えられている側面が大きい。

 そして、現代のPTAは様々な問題をはらんでいると本書は語っている。

 ひとつは、任意加入の問題だ。PTAは本来「強制ではない」と文部科学省も公式にうたっている。しかし現状では、保護者をはじめとした学校関係者の中にある同調圧力により、100%に近い状態で加入が“義務化”されている。そして、任意加入が形骸化する中で保護者たちの頭を悩ませているのが、役員会をきっかけとした問題である。

 PTAは組織内部が細分化されており、保護者をはじめとした会員から派生して、クラスや学年を取りまとめる学年・学級委員、文化厚生委員会、広報委員会などの組織が、各学校ごとに作られている。

 ただ、役員になると必然的にPTA活動への拘束時間が増える。本書の著者はみずからの事例を挙げて、子どもがある学年のときに「年間166日、計403時間」をその活動へ費やしたと語っている。その上で「経済的な不安がなく、自分や家族の心身の健康が保たれ、家庭や職場の理解がある」人のみが役員になれると説く一方、なかば強迫的な「義務・強制・負担」が強いられる中で、「激務や人間関係のせいで体調を崩すことだってありうる」と指摘している。

 そのため役員選びは“ババ抜き”の様相を呈すことが多く、本書の中では、くじ引きで役員になったある主婦がストレスにより「不登校」になってしまった事例も紹介されていた。本来は子どもたちの教育を考えるため、保護者と教師が“自発的”に関わるべきものだったはずだが、現状ではとりわけ保護者側がPTA内外の問題に悩まされる場面が少なくないようだ。また、原則的には対等であるべき学校との関係性が崩れ、実際には学校の「下請け」となっている状況についても、本書の中では危惧されている。

 最後に、著者は「“親”どうし、顔を見て、一緒に仕事をするというのは、すごく健全なことだ」と語っている。子どもたちを取り巻く人たちそれぞれの負担がかたよることなく、教育について意見交換しあえる仕組みをいま一度見つめなおす必要がありそうだ。

文=カネコシュウヘイ