怪獣が人間を襲う理由、 怪獣に襲撃されやすい地域…、真剣で深遠な『怪獣学』の世界

文芸・カルチャー

2014/5/25

さて、突然ですがここでクイズです。

日本で一番最初に現れたロボット怪獣は何でしょう?

答えは「モゲラ」。

1957年、怪遊星人ミステリアンが地球侵略を企んだ事件の際に富士山麓に現れた1号機が…えっ、何の話をしているかって?3月にカンゼンより発売された『怪獣学 怪獣の歴史と生態~KAIJU ANALYZE BOOK~』(レッカ社)で、ロボット怪獣の歴史を勉強しているのですよ。「歴史とか、勉強とか、大の大人が真面目に怪獣の話なんかするんじゃない!」とか怒らないで下さいよ。だって『怪獣学』はその名の通り、怪獣を学問する本なんですからね。

『怪獣学』は映画・ドラマに登場する怪獣たちの生態や分類、その対処法までを現実の科学や法律に則りながら真剣に分析し、解説した本である。本書の中において怪獣は虚構の存在ではない。地球上に実在し、本当に暴れまわった生物として書かれているのだ。『ゴジラ』や『パシフィックリム』といった映画は“怪獣記録映像”という名前で呼ばれ、事後の再現映像やドキュメンタリー作品という扱いを受けている。何とも遊び心に溢れているではないですか。

それではハリウッド版『ゴジラ』の公開も近いことだし、ここはひとつ、怪獣たちの入る世界の住民になりきって怪獣のことをちょっと学んでみますか。

【怪獣の謎 その1】怪獣はなぜ人間を襲うの?
怪獣が人を襲う理由として、(1)破壊衝動説、(2)帰巣本能説、(3)復讐説、(4)被コントロール説がある。(1)の場合は生物として外敵から身を守るため、というごく当たり前のもの。(3)の復讐説はちょっと感情と知性が発達している怪獣じゃないと当てはまらないだろう。(4)は宇宙人の手先になっているケースが多い。面白いのは(2)の説で、鮭が生まれた川に戻ったり、伝書鳩がメッセージを届けるのと同じように、怪獣にも自分の巣へと戻る習性があるため、町を破壊しながら歩くというもの。この説は1984年、東京に現れたゴジラを帰巣本能を利用して三原山に誘導、封じることに成功したことで実証されている(1984年公開『ゴジラ』)。

【怪獣の謎その2】怪獣出現は予知できるの?
日本では怪獣災害の予知予報を行う気象庁特異生物部対策課が、独自に「モンスターマグニチュード」を設定している(2010年放映『MM9』)。また、21世紀に入り軍事レベルでは新たな観測尺度「セリザワスケール」が設けられた(2013年公開『パシフィックリム』)。人類は怪獣の襲来に備えるべく万全の対策を取っているのだ。

【怪獣の謎その3】怪獣は東京都内のどこに現れることが多いの?
今までの怪獣の襲撃ポイントを分析してみると、千代田区と中央区が多い。考えてみれば千代田区には国会議事堂があり、ゴジラやキングコングなどに度々襲われているではないか。ただし中央区の銀座はゴジラが暴れたくらいで、ほかに目立った破壊の記録は残っていない。銀座は怪獣にとってもハイソで近寄りがたい街なのか。

とまあ、こんな具合に怪獣に関する疑問にシリアス(?)な返答をしてくれる。

なぜこんな愉快な本が出来上がってしまうほど、日本人は怪獣に熱中するのだろうか。それについては、巻末にある俳優・佐野史郎のインタビューに答えがある。

「怪獣は、自分と自分以外のもの=世界を意識させる鏡のようなもので、向き合わずにはいられない」

「あの冬彦(執筆者注:大ヒットドラマ『ずっとあなたが好きだった』で佐野が演じ、大ブームを巻き起こした狂気のマザコン夫のこと)……(笑)、あれもぼくは怪獣の役だと思って演じてました。(中略)時代が抱える不安や畏れを、冬彦として具現化したかった。それがゴジラと重なって感じられたんです」

怪獣は時代を映す鏡。怪獣は単なるキャラクターではなく、社会の空気を象徴させるものとして人々の共感を呼び、愛され続けてきたのだろう。ハリウッド版『ゴジラ』は北米ですでに公開され、好成績をおさめている。今度のゴジラはきっとアメリカの「いま」を教えてくれるに違いない。

あ、忘れてた。冒頭で紹介したモゲラ、あれは1957年公開の『地球防衛軍』に登場する怪獣ですからね。あくまでもフィクションのなかの出来事ですからね、念のため。

文=若林踏