三浦ゆえ×深沢潮×朴順梨トークショー「SAY! 性! 生!~やめられないとまらない、女の性(さが)と生~」レポート
更新日:2017/11/21
どしゃぶりの雨が降りしきる5月22日(木)、下北沢にある本屋B&Bにて、トークショー「SAY!性!生!~やめられないとまらない、女の性(さが)と生~」が行われた。登壇者は三浦ゆえさん、深沢潮さん、朴順梨さんの3人。ビール片手にほろ酔い気分で本が選べたり、作家さんたちのトークが聞けるなんて、なんて居心地がよい空間なのだ!
女性が性の悩みを解決しつつ、軽やかに性を楽しむために作られた平成女子性欲事典『セックスぺディア』(三浦ゆえ/文藝春秋)、実家で母と2人暮らしである35歳の主人公を中心に、一筋縄ではいかない大学時代の女友だち同士の関係を描いた小説『伴侶の偏差値』(深沢潮/新潮社)、北原みのりさんとの共著であり、愛国活動にはまる女性たちを取材した『奥さまは愛国』(朴順梨/河出書房新社)。実用書、小説、ノンフィクションと、ジャンルも毛色もそれぞれ異なるものの、「女の生き方 女の性(サガ)」をテーマにした3冊の出版時期がちょうど重なり、著者同士の親交も深かったことから、今回の刊行イベントが実現したという。
観客は約30人ほど。女性と男性の割合は9対1くらいか。…が、この日のトークを盛り上げたのが、30代40代の男性向けに電子書籍で復刊することが発表されたばかりの『Hot-Dog PRESS』(講談社)。若いねーちゃんとどうしたらHできるかな? Hしたいな! ハァハァ…なんてことばかりを特集している週刊現代や週刊ポストのオジサン編集者たちが青春時代、ティッシュ箱片手に拠り所とした伝説の男性向けデート・マニュアル雑誌。そう考えると、この2雑誌が萎びた『Hot-Dog PRESS』に見えてくるから不思議である。
が、パンドラの箱を開けてしまった以上は後には引けない。当時、大流行したワンレグヘアの女性に男性器の大きさやかたちについて猥談させる特集や、小説家の北方謙三さんが「ボク、童貞なんですが、どうすれば……」という相談に真剣に答えるコーナーなど、レアな情報が盛りだくさん。それを女3人がバッサバッサと斬っていく。
「今も昔も、男が気にしているのは結局のところモノの大きさ。川島なお美のような女の子たちをズラーッとならべて、女の口を借りて、“小さくても全然気にならない!”と言わせているのは、男性編集者」
「タンポンよりは大きいから気持ちいいだろうって…」
「童貞を捨てたいという男性に対して“ソープへ行け”とアドバイスする北方先生のスタンスは、今も昔もズレがない。村上龍先生のテニスウェア姿もこの時代を象徴している」
「ピルや避妊について具体的にきちんと書いている一方で、処女性をものすごく重視。セカンドバージンをあげる/もらうという価値観に関しては、この頃の男性と今とではだいぶ変わったのでは?」
『Hot-Dog PRESS』が音読されるたびに、会場中にどよめきが起こる。それもそのはず。同誌に出てくる女性を真似るときの3人の声は、揃いもそろって「させられている感」アリアリのブリッコ声。うわぁ、クラスにひとりはいたわ、こういう子。
また、官能小説用語特集を取り上げて、性の描き方の違いについても指摘。深沢さんいわく、性が描かれている小説には大きく分けて2つあるという。ひとつは欲情や勃起目的の小説。もうひとつは人間の関係を表現するときに自然と出てくる描写だ。デビュー前はそこをはき違え、「女による女のためのR-18文学賞」に応募するために、アダルトサイトのカリビアンコム漬けの日々を送っていた時期があったという。人間を描いたり、女性を描いたりするための性描写を求められていると気づいてからは、一般の主婦が書いた赤裸々なブログなどを参考にして、キャラクターを考えるようになったと語った。
後半は、膣や子宮の神格化現象についても言及。パワーストーンの棒を膣にいれると、体の中心から浄化して、相手の男性と交わるときに太古まで戻れる…といった話が一部のスピリチュアルの人たちにまことしやかに広まっているが、医師によると「浄化どころか、炎症を起こす」とのこと。取材の際、小型カメラが先端に点いている最新の大人のオモチャで確認したところ、「どこからどう見てもタダの臓器だった」と三浦さんは語った。自分の膣や子宮を大事にするのはよいけれど、大事にするあまりに仏壇や神棚がわりに奉るのは、やはり健康上問題がありそうだ。
イベント終了後、会場にいた数少ない男性に感想を聞くと、一様に「耳が痛い話ばかりだったが、勉強になった」と言っていたのが、なんとも印象的だった。今度は女性誌に描かれる男性について、男性の登壇者がつっこみを入れるトークショーへ行ってみたい。
文=山葵夕子