フランス人は赤ちゃんの夜泣きをあえて放置! フランス式育児は合理的?

出産・子育て

更新日:2014/6/6

 子育てに対する関心が高まっている機運に乗って、すっかり定着した感のある「産後クライシス」というワード。出産を機に、子育てへの知識量や接する時間の隔たりから、夫婦仲が悪化することを指す言葉だが、産後クライシスの一因が、赤ん坊の夜泣きである。2~3時間ごとに夜泣きをする赤ん坊に付き合い、日中も睡眠不足のままに子育てする母親と、それに関知しない父親という構図がネットの相談サイトでも散見されるパターンだ。

 そんな中、4月に発売された子育て本が注目を集めている。タイトルはズバリ、『フランスの子どもは夜泣きをしない パリ発「子育て」の秘密』(パメラ・ドラッカーマン:著、鹿田昌美:訳/集英社)だ。言葉や文化の違いがあるように、国によっては子育ての違いがある。夜泣きに悩む日本の母親たちに、解決のヒントはあるのだろうか? 本書からフランス流の子育て法を見てみよう。

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 まず、フランスにおける子育ての大前提にあるのが、子どもを「小さな大人」として扱うという思想だ。

 赤ん坊が泣き始めたときも、なにを望んでいるのかを把握するために、すぐに抱き上げたりあやしたりせずに、5分~10分、泣いている赤ん坊を観察しながら「ちょっと待つ」。これが重要なポイントなのだ。

 というのも、赤ん坊には2時間という睡眠サイクルがあり、「サイクルをつなげる学習をしているうちには、泣くのがふつう」なのだそう。これが夜泣きの原因のひとつなのだ。それを親が、お腹を空かせている、おむつが濡れていると先回りして抱き上げると、赤ん坊の睡眠サイクルをつなげる練習を邪魔してしまう。

 そばにいるとはいえ、泣いている赤ちゃんを5分も放っておくことに違和感を覚える人も多いだろうが、「フランス人の親は、上手な眠りかたを赤ちゃんに優しく教えてあげるのが、親の仕事だと信じている」「生後八か月の赤ちゃんにつきあって夜中に何時間も起きているのが親の献身的な愛情だとは思わない」という確固たる態度があるのだ。愛情は惜しみなく与えるが、赤ん坊の睡眠に対する科学的なアプローチも忘れないという姿勢は、日本人にも取り入れやすい考え方なのではないだろうか。

 子どもへの叱り方もフランス人の哲学が貫かれている。「小さな大人」に対して、社会や家庭における「枠組み」を教えることに重視しているという。子どもがいたずらをしているとき、「○○を叩かないで」ではなく、「あなたには○○を叩く権利がない」というのが一般的。これによって、子どもは「べつのことをする権利」があることを無意識に認識する。このように「子どもに、なにが許されてなにがだめなのかを伝えることに、たっぷりと時間をかける」のだとか。なぜそこまで「枠組み」を重要視するのか。それは「制限を与えなければ、子どもが自分の衝動に支配されてしまうから」だという。こういった基盤があるためか、パリの公園でかんしゃくを起こしている子どもがほとんどいないというのだから、感嘆してしまう。

 そもそもフランス人は、「親」に対する意識が日本人と大きく異なる。日本では、親になった以上、ある程度の自由を犠牲にしても子どもに付きっきりになることが賛美される傾向があるが、フランスでその考えはない。多くのフランス映画では、たとえ子持ちの女性が主人公であっても、娘の登場シーンは少なく、主人公のベッドシーンもある。それは、「親であることは非常に大切だが、ほかの役割まで吸いとられてはいけない」というフランスで優勢な社会的メッセージが隠されているからだという。

 文化的な背景が異なるため、フランス流子育てを手放しで賛美し、取り入れることは難しい。しかし、どう言い聞かせても子どもが言うことを聞かないとき、自分の子育て法に親自身が消耗してしまったときに、本書を参考にしてみればヒントが得られるはずだ。