『MOZU』原作者が語る、本とカレーの意外な共通点

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

TBS×WOWOWの共同制作で話題のドラマ『MOZU Season1 ~百舌の叫ぶ夜~』。原作『百舌の叫ぶ夜』の著者である逢坂剛は、神保町に事務所を構え、古書と食に精通することでも知られている。『ダ・ヴィンチ』7月号の巻頭を飾る異色の「本VS.カレー」特集では、「4食連続でカレーを食べたこともある」という逢坂さんお気に入りの「ボンディ」にて、その魅力をインタビュー。本とカレーのかかわりとは?

「神保町には180軒以上の古書店があるんだけど、どの書店もそれぞれ専門が違うから共存できている。それと同じで、カレーもいろいろなタイプの店があるから、決して飽きることはないんですよ」

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そう言う逢坂剛さんのお気に入りは、欧風カレーの老舗「ボンディ」。逢坂さんと同い年の初代店主が、フランス修業で培った技術をすべてカレーに注ぎ込み、36年前に開店した。チーズのかかったライス、ブラウンソースを基調としたまろやかでこくのあるソース、そしてバターと一緒にまるごと出てくるアツアツのジャガイモが特徴。逢坂さんがいつも食べるのは、ミックスカレー(辛口)だ。

「カレー屋に限らず、神保町のうまい店は、12時過ぎるとどこもいっぱいで入れなくなるんですよ。その日はたまたま出遅れて食べる場所が見つからず、しかたなく古書センタービルに入ったんです。すると、なぜだかカレーのいい匂いがする。店主が昼飯でも食べているのかな、と思いながらをたどっていくと、ボンディにたどりついた。開店して1週間も経っていなかったせいか、お客さんはまばら。でも入ってみたら、これが異常においしいわけ。これはいい店を見つけたとまた1週間後に来てみたら、口コミというのはおそろしいですね、もう大行列で賑わっていました」

ボンディ以外にも、神保町には逢坂さん行きつけの数々の名店があるという。

「インドカレーの『マンダラ』が開店したときは、ボンディに近いせいもあり、やっていけるのかと思ったものですが、まるで別の味わいでうまく競合してるなと思いますね。スープカレーの『鴻(オオドリー)』もよく行きます。知られざる味でいうと、『新世界菜館』という中華屋のカレーがおすすめ。昔ながらの小麦粉を使ったカレーでね。食べきれないくらいでかいんですが、うまいです。それから最近よく行くのは『CRAFT BEER MARKET』。数年前にできた地ビール専門店で、売りのローストチキンがカレーの端に載っている。よほどうまくないと神保町でカレーは売れないと思うのですが、これは、出すほどのことはある、という味です」

神保町に事務所を構えて16年。膨大な古書店もカレー屋も、自身の図書館と社食のようなものだと笑う逢坂さん。ちなみにボンディは、『十字路に立つ女』をはじめとする逢坂さんの初期作品にも時折登場している。まさに、神保町の本とカレーとともに作家人生を歩んでいるのだ。

取材・文=立花もも/ダ・ヴィンチ7月号「禁断の最終決戦 本VS.カレー特集」