体外受精にかかる費用やその妊娠率は? いま知っておきたい不妊治療の基礎知識

出産・子育て

更新日:2014/9/1

 7組に1組のカップルが不妊に苦しんでいると言われている。そんな中、昨年8月、厚生労働省は不妊治療の公費助成の対象を、2016年より42歳までの年齢制限を設けるとする方針を決めた。

 しかし、働く女性にとって、20代後半から30代前半は、やっと仕事が面白くなり、さらなるキャリアアップを目指したい年齢。この時期が、ちょうど妊娠しやすい年齢と重なっているのだ。女性だけでなく、パートナーである男性にとっても、同世代のカップルであれば、同様に仕事に集中したい時期。「いつかは子どもは欲しい」と思いながらも、なかなか決断できないまま、30代後半を迎えるカップルも多いのではないだろうか。

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 そんなカップルにぜひ読んでおいてもらいたいのが、『「2人」で知っておきたい妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)だ。著者は、産婦人科医で不妊治療を専門としている富坂美織医師。女性の体の仕組みから、20代、30代の女性がかかりやすい病気、赤ちゃんがお腹の中でどう育つかなど、妊娠・出産についての基本的な情報が網羅されている。その中でも、著者の専門である不妊治療について、検査方法や治療のプロセス、治療の成功率、費用などについて、フラットな視点から、わかりやすく具体的に書かれている。メディアでは、40代後半の著名人が出産したなど、おめでたいニュースだけが取り上げられ、高齢出産でも、望めば子どもを授かることができる考えがちだが、その裏には乗り越えなければならない多くのハードルがあるということが改めてわかる。

 不妊治療の章で、最初に書かれているのが、不妊の原因を突き止めるための検査について。女性の場合、検査だけでも4回は病院に通わなければならないとのこと。低温期のホルモン量を採血により調べる、月経から排卵までの間に造影剤を使って卵管が詰まっていないかを調べる、排卵の時期に夫婦生活を持った後、子宮頸管粘膜と精子の相性を見る、高温期のホルモン量を採血によって調べるという4つの項目があるそう。この一連の検査だけでも、時間、体力的に女性の負担は大きそうだ。一方、男性は精液検査のみだそう。

 これらの検査の結果により、例えば、左右の卵管が詰まっていたら卵管再建の手術を検討したり、ホルモン値に異常があったらホルモンを補充する薬を出されたり、精液の状態によっては人工授精や体外受精を行うなど、その後の方針が決まっていくという。不妊治療と言っても、人工授精や体外受精だけを行うのではなく、原因がわかれば、その原因を解決するために様々な治療が考えられるのだ。

 ここで気になるのが、治療を受けた場合、どれくらいの確率で子どもを授かることができるか、また費用はいったいどれくらいかかるかということ。まず妊娠率については以下のような数字が提示されている。体外受精の妊娠率は30代後半で30.54%、40代前半で15.78%、40代後半では3.58%。当然のことながら、治療を受けたからといって必ずしも子どもを授かれるわけではないということ、また、治療を始める時期が早ければ早い程可能性は高いということがわかる。また、1回の体外受精の費用については、採卵から凍結させるまでに30万~60万円、子宮に戻す時に10万~20万円ほどがかかるのだとか。

 これらの情報を知ることで、もし今後子どもを自然に授からなかった場合に不妊治療を受けるのかどうか、いつ始めるのか、その際仕事を続けるのか、また治療をやめるタイミングなどを2人で話し合う際の、ヒントになるのではないだろうか。

 その他にも、不妊の原因になることがある子宮内膜症や子宮筋腫、子宮頸癌の治療法や、高齢の妊婦がかかりやすい妊娠高血圧症候群、NICUをめぐる日本の現状など、気になってはいたけれど、きちんと把握できていなかった情報が、この1冊にまとめられている。「出産はまだまだ先」と思っている人でも、今後の人生プランを考えたり、将来のために今何をしておくべきかを考えるきっかけになるかもしれない。正しい知識を身につけて事前にある程度の選択肢を持っておくことが、より豊かな人生を送ることにつながるということも言えそうだ。

文=相馬由子