「6月病」にも負けない、五感をゆるめて疲れない身体を手に入れる方法

健康

公開日:2014/6/16

 かつて「5月病」と呼ばれていた“やる気レス”で“だるおも”な心のスランプが、近年では「6月病」として、メンタルヘルスの現場でも注目されている。

 振り返れば、誰もがそれなりに気力に満ちていたはずの4月。入学したての学生や、新社会人のフレッシャーズには、生活環境ごと仕切り直しのできる季節でもある。

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 ところが、GWを過ぎてひと段落するころから、にわかに「やる気が出ない」「プチうつかも…」などと心がざわつく不安感が徐々に現れる。4月は新人研修など新しい環境に慣れるのに手一杯、5月からいざ仕事が本格始動したものの、6月にはそれがひと段落。学生の場合は新生活に夢中なうちはいいけれど、知らず知らずのうちにストレスが蓄積されて、心身に疲れがじわりとたまる。やはりひと段落して「ふう。」と、緊張の糸がとぎれた瞬間、ブルーな気分に飲み込まれてしまうのだ。

 ちなみに「5月病」も「6月病」も正式な医学用語ではなく、精神的な症状の総称だ。急激な環境の変化に心と体がついていけない「適応障害」に位置づけられる。

 そんな“心のだるおも”状態をできれば事前に回避すべく、その解決策を『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本 目・耳・口・鼻の使い方を変えるだけで身体の芯から楽になる!』(藤本靖/さくら舎)に求めてみた。

 著者の藤本氏は、ロルフィング(筋膜を柔らかくすることで体全体のバランスをとる手技療法)の第一人者であり、心と体をゆるめる達人である。この本では目や耳、口や鼻など“感覚器官(身体のセンサー)の力み”をとることで「疲れない身体」を手に入れられるという。いったいどのような方法なのか。早速ご紹介していこう。

 まず、著者が提唱する“感覚器官の力み”が疲れにつながる論をざっくりかいつまんでみる。

 たとえば、感覚器官が力む状況を「パソコンを長時間見ていると目が疲れる」「聞きたくない話や騒音で耳が緊張して肩がこる」「ガマンしていると口元が力んで固くなる」「嗅ぎたくない臭いや空気にさらされるとストレスになる」と、具体的に思い浮かべると、すんなりイメージできるのではないか。つまり、人のストレスは“五感にまつわる器官からやってくる”と言い換えられる。

 各感覚器官のゆるめ方については、できれば本書を読んでほしい。概略だけお伝えすると、目の場合は、仰向けになってまぶたを閉じ指で眼球に触れるワーク。耳の場合は、横向きに寝ながら耳をつまんで軽くひっぱるワーク。口の場合は、アゴの力を抜く前屈のワーク。鼻の場合は、つけ根を軽くはさんでゆるめるワーク。感覚器官をゆるめることで身体の芯からゆるんで、疲れがとれて楽になるのだという。

 次なるステップとしては、感覚器官の上手な使い方を学ぶこと。さらに自分の軸をつくる呼吸法を学ぶことと続く。その中から、疲れを寄せ付けない目の使い方と、軸をつくる呼吸法のポイントをまとめてみた。

■長時間のパソコンワークでも疲れを寄せ付けない目の使い方

 本書によれば、パソコン作業で腰や背中が疲労するのは、目の緊張による姿勢の乱れが原因であるとのこと。

1)パソコン画面を見たまま、周りの空間も自然に目に入ってくるように、視野を広げて作業してみる
2)画面の中の情報を捉えようと前のめりになるのではなく、目のほうにやってきた情報を「受け取る」ように見つめてみる

 試してみると、それまで目に入っていた異様な力みが抜けて、心なしか姿勢も改善されたような感じがする。キーボードを打つときも、親のかたきのようにものすごい音でカシャカシャ叩きまくるのではなく、キーボードと指の間に薄皮1枚入れたような感覚で、やわらか~く、肩や首の力を抜いてソフトにタイピングしてみると、さらに効果的なのだとか。

■ピンチのときにも自分を見失わない呼吸法

 たとえば予期せぬ災害やトラブルに巻き込まれてしまったとき。パニックにならず、確実に自分を取り戻す方法を知っていると、日常のストレスは軽減する。

1)ストロー呼吸で身を守る。下腹のあたりに軽く手を置き、口をすぼめて息を吐き、鼻からゆっくり息を吸う
2)この呼吸を、いつでもどこでも行ってみる

 腹式呼吸と少し似ていて、身体の中になんとなく芯というか、ぼんやり軸ができたような感覚になってくるから不思議なものだ。

 著者はこれらの方法を試す際に、大切なことが3つあると述べている。ひとつは、自分の中で起こる小さな変化を信じてみる。「なんとなく、ゆるんだかも」というその感覚を大切にし、変化を受け取る意識をもつことである、と。

 残念にも今、ストレスフルな環境のまっただ中にある人は、せめて五感からくるストレスに負けないように、本書に書かれた方法をぜひ一度試してみてほしい。

文=タニハタマユミ