美しい階段はお好きですか? 「いい階段」ばかりを集めた写真集

文芸・カルチャー

2014/6/21

いい階段の写真集』(BMC:著、西岡潔:写真/パイインターナショナル)

「機能美」という言葉がある。もともとの用途のために装飾を排除した姿が美しさを持つことをいうが、『いい階段の写真集』(BMC:著、西岡潔:写真/パイインターナショナル)に掲載されている階段は、「昇り降りをする」という本来の機能だけではなく、装飾美や建築美、造形美などまでを内包した美しさを有しているものばかりで、これまで気付かなかった階段の持つ新しい魅力まで見せてくれる。

本書は「1950~70年代のビルがかっこいい」という思いを同じくして集まった5人による「ビルマニアカフェ」という活動体が出版した『いいビルの写真集 WEST』(BMC:著 西岡潔:写真/パイインターナショナル)に続くシリーズ。その『いいビルの写真集 WEST』を撮影した写真家の西岡潔氏がビルの撮影をするごとに階段の魅力にハマり、「階段いいわぁ」から「階段の本を出したい」となって、出版に至ったそうだ。本書には古いビルを中心に40の「いい階段」が収録され、素材、用途、年代、見る角度などによって表情が変わる姿を捉えている。

階段にはさまざまな見どころがあるそうだ。まずは「手すり」。手触りや握りやすさ、材質や木の曲げなどに注目する。「金物」は手すりを支える支柱や、その隙間を埋める「手すり子」などの意匠、足を乗せる部分である「踏面、踏板」と、階段の段と段の間の高さである「蹴上げ」とその面をふさぐ「蹴込み」、経年変化で色が変わる「床面」、吹き抜けなどにある豪華な「照明」、様々な材質やフォントを使った「階数表示」、通は見逃さないという階段の裏側である「段裏」、その他に装飾的な壁面や、踏板を左右で固定して荷重を支える桁「ささら」、さらには階段を見る角度によって変わる不思議な形を見出すなど、いい意味で偏愛っぷりが爆発している。そのマニアっぷりに思わず感化されて、これから階段にハマってしまう人も出てくるかもしれない。

ではここで本書から美しい階段の写真を見てみよう。

水が流れ落ちるようにスッと曲がっている、有楽町ビルの階段の金属製の手すり。艶のある壁面のタイルと相まって、どことなく幾何学的なイメージを受ける。

 

上野駅の目の前、上野恩賜公園にある東京文化会館のらせん階段。上から覗き込むと、黄金比のシルエットを持つといわれるアンモナイトのような美しさだ。

 

村野藤吾の設計による旧千代田生命保険本社ビル(現在は目黒区総合庁舎)。まるで有機体のような階段は宙吊りにされているため、すっきりとした印象になっている。

 

木の手すりに鮮やかな青い床面、それをつなぐ細く白い金属製の手すり子と、白いささらのコントラストが素晴らしい、塩野義製薬旧中央研究所の階段。

 

さまざまなビルの階数表示。材質やフォント、色、表示のある場所(壁や床)などを見比べると楽しい。ちなみに本書のページ数の表示も、階数表示のようなデザインになっている。

 

最近は疲れるからと階段は遠慮して、もっぱらエスカレーターかエレベーターという人は、階段の持つ美しさと魅力を再確認するため、さらには健康のためにも利用してみてはどうだろう?

文=成田全(ナリタタモツ)