ビットコインが分かれば経済が分かる――『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』

経済

2014/6/29

 ビットコインという言葉を、何となくニュースで見たことがある人は多いはずだ。でも、これが一体何なのか?怪しいという人もいれば、通貨の理想像だと語る人もいる。きちんと説明できる人は、かなり限られているのが現状だ。

 仮想通貨の一種ともされるビットコインについて、経済の初歩の初歩から解説したのが、この『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』(講談社)。ITジャーナリストの西田宗千佳氏と、『スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学』(ダイヤモンド社)などの著書で知られる経済学者の吉本佳生氏が、技術と経済の両面から、意見を交しながらまとめ上げられている。

 東京に拠点があったマウントゴックスという取引所が100億円以上の預かり金を失い破綻したことで、ビットコインは「怪しいもの」というイメージが世の中には広まっている。この本を書いた2人も、最初はビットコインについて懐疑的な見方もしていた、と正直に述べている。

 しかし、ビットコインの仕組みや経済における役割をつぶさに見ていくことで、通貨の「未来」がここにあるのではないか、という思いにまで至ったという。インターネットの暗号化技術によって成立しているビットコインは、国による中央銀行のような機能を持たない。意外と手間や手数料がかかる海外送金だって、ずっと少ないコストで実現できる。取引所の破綻によって負のイメージがつきまといがちだが、ビットコインそのものの安心感が揺らいだわけではない、と本書では指摘している。むしろ、今の国による通貨よりも技術・経済の両面から優れている面も多いというのだ。

 本書が面白いのは、最初は疑問も持っていたという専門家2人がそれぞれの視点から、ビットコインの仕組みや意味を解読しようとする過程が、章ごとに差し込まれたインタビューからも分かることだ。ナカモトサトシ氏という、謎の人物が考案したビットコインの輪郭が、ページが進んで行くことによって、経済やITの歴史も参照しながら徐々に明らかになっていく。

 私たちは国が発行する紙幣を、日々安心して使っている。しかし、戦争や災害とまでは行かなくとも、バブル崩壊やリーマンショックのように国が経済をコントロールしきれないことも同時に分かっている。著者らは中央銀行のような組織が管理していないビットコイン、あるいはそれに類する「暗号通貨」を、「国家破産に巻き込まれない通貨」としてそこに加えても良いのではないかと踏み込んだ提案で本書を締めくくっているのだ。

 通貨や経済について、私たちは学校できちんと教わる機会は少ない。平易な言葉で書かれ図解も多い本書は話題のビットコインだけでなく、経済の基本的な仕組みと、それを支えるITの両方を一度に学べる大変お得な1冊でもあると言えるだろう。

文=読書電脳