いまさらですが! メールは、LINEは、なぜ届くのか?

IT

公開日:2014/6/30

 『メールはなぜ届くのか』(草野真一/講談社)という本を紹介させていただきたいと思うのですが、画面越しに「いまどきメールかよ!」という熱いツッコミの波動を感じています。この本の著者も正直そう思ったそうなのですが(!)、なぜあえて今メールなのかと申しますと、電子メールは、ITの世界では古くからある「枯れた」技術で(「枯れた」というのは、たくさん使われて問題が出尽くして安定した、というニュアンス)、「インターネットそのもの」がどういうものであるかを知るのに持ってこいの題材だからです。

 さっそくですが、「メールが届く仕組み」を理解するためには、把握しておくべき前提が3つあります。
(1)メールとはなんなのか?
(2)インターネットはどんなものか?
(3)プロトコルとはなんなのか?

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……(1)の「メールとはなんなのか?」ですが、これは「すべて一様にデジタルデータなのだ」ということを押さえておく必要があります。メールに限らず、コンピュータが音楽や画像や映像などを取り扱うときも、すべて一様にデジタルデータです。デジタルデータというは、「10001010101010……」という1と0で表される列のことです。なぜ1と0なのかというと、それがコンピュータが扱うのに適したかたちだからです。

 次に(2)の「インターネットはどんなものか?」というのを理解するには、コンピュータ・ネットワークについて知る必要があります。コンピュータが複数つながって、相互に「通信」が可能になったもの、それがコンピュータ・ネットワークです。例えば、家庭内でルータを中心にしてパソコンやスマートフォンや携帯ゲーム機なんかがつながっているのが、コンピュータ・ネットワーク。家庭のルータは、そこから外に出て、プロバイダさんのネットワークにつながっていて、プロバイダさんはさらに上位のネットワークにつながっています。こうしてつくられた巨大なコンピュータ・ネットワークの集合体が「インターネット」です。

 ここまでをまとめると、「メールを送る」というのは「10001010101010……」というようなデジタルデータ(1)を、複数のネットワーク間で相互に通信する(2)こと、ということになるわけですが、これだけだとじゃあ「10001010101010……」というデジタルデータが、「どこに届けるものなのか」とか「どういうタイトル・メッセージなのか」がなんで分かるんだ? という疑問が生まれます。その疑問を解決するのが(3)の「プロトコル」です。

 ちょっと聞きなれない言葉かもしれませんが、「プロトコル」はインターネットへの理解が一気にググッと深まる超重要キーワードです。「プロトコル」というのは、もともとは国家の間で交わす「約束ごと」「決めごと」「取り決め」というような意味。インターネットの通信の場面でも、プロトコルは「(異なるもの同士の)取り決め」を意味します。通信のプロトコルは、例えば「データをどうやって送ったり受け取ったりするのか」「データをどのように記述したらいいのか」「データが届かなかったり、壊れたりしたらどうするのか」といったことの「取り決め」です。インターネットは、これらの取り決めをすべて守ることによって通信ができるようになります。

 具体的にメールのプロトコルは、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)と呼ばれます。SMTPは、「これから送るのはメールです! メールの形式で受け取ってください!」と宣言するわけです。パソコンや携帯電話からメールを送信すると、SMTPのルールに従ってメールサーバ(インターネット上のメールを貯めておくコンピュータ)にメールが送られます。ここまでがSMTPの仕事。メールを送られた側は、こちらもパソコンや携帯電話から、メールサーバに溜まったメールを取りに行く必要があるのですが、これにはまた別のメール受信専用のプロトコルがあって、POP3もしくはIMAP4というプロトコルを用います。

 これらのプロトコルがあることで、単なるデジタルデータのメールは、宛先が地球の裏側であっても、複数のネットワークを経由して、一瞬で正しい宛先にそのメッセージを届けられるわけです。まぁ、だいぶ端折って書いたので、ご興味のある方はぜひ本書を読んでみてください。とても丁寧にその仕組みが紹介されています。

 ちなみに、いつもみなさんがよく目にする、WebサイトのURLの先頭についている「http://www.~」の「HTTP」も通信プロトコルのひとつです。これは、「Hypertext Transfer Protocol」の略で、主にブラウザでWebページを表示するための通信プロトコルです。先ほどの言い方で言えばHTTPは、「これからデジタルデータのやり取りをします! そのデータはウェブページであり、ブラウザで表示するものです!」と宣言しているわけです。メールもWebサイトもアプリでも、デジタルデータを扱うものは、みなそれぞれの通信プロトコルに従って通信をしている、ということです。

 じゃあ例えば、流行りのLINE。トークも音声通話もできて、一体どんなプロトコル使ってるんだろう? と思ったりしませんか? これがなんとLINEの通信プロトコルは「非公開」だったりします。気になりますねー。一部では、これだけ大規模に通信をしてるのに、非公開とはどういうことだ、という議論もあったりもするのですが、それはまた別の話。様々な形態のデジタルデータを早く・確実に届けるために、プロトコルをどのように利用するのかは、「非公開」にするほど重要な技術ノウハウなのだ、ということが察せられるわけです。

文=村田チェーンソー