ビーナスベルト、天使の梯子…空と海はなぜあんなに美しいのか?

科学

公開日:2014/7/5

 先日東京に降った大量のひょうは、数十センチにも積もった。ゲリラ豪雨は道路を川に変えた。

 止まない雨と黒い空を見上げて、明日は晴れるのかな、と溜息がこぼれる。

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 梅雨もまた、日本の風物詩のひとつだし、農業にとっては必要な雨だとわかっているが、気分は沈みがち。

 ココロだけでもひと足先に夏の扉を開けよう! というわけで、『海洋地球研究船「みらい」とっておきの空と海』(柏野祐二、堀E.正岳、内田裕:著、ネイチャープロ編集室:構成・文/幻冬舎)から、空と海にまつわるとっておきの話を紹介しよう。

 豊かな水、澄んだ大気、振りそそぐ太陽の光…広い宇宙を探しても、地球のような星は見つかっていない。そんな「地球の、真の姿を探るため」に海洋地球研究船「みらい」に乗って熱帯、北極域、南極域の海を渡った、研究者たち。彼らが出逢い、撮影した美しい光景や現象を、詩のように優しい言葉で伝えてくれるのが本書だ。

 まるで湖のように空を映し出す波を失った鏡の海。

P14 「鏡の海」 撮影:柏野祐二(JAMSTEC)

 高さ1万メートル、飛行機の航行高度ほどもそびえる巨大な雲、タワークラウド。

 雨と晴れの境界がくっきりわかる熱帯の海。

 北極域の海面に広がる蓮葉氷─粘り気のあるグリースアイスが凍り、ハスの葉のように丸みを帯びる。

 南極域の白夜─真夜中の2時に陽が昇り、よる23時に日没を迎える。夕日に染まる甲板の上はマイナス1.4度。

 眺めているだけでため息が出るような光景の数々。そんな中で印象深かったのは─。

■天使の梯子
 雲間から太陽の光がシャワーのように降り注ぐ、あの空は「天使の梯子」と呼ばれている。
 逆に、日の出の前の太陽の光が、雲間から天に向って広がる現象を「薄明光線」と呼ぶ。

P29 「薄明光線」 撮影:柏野祐二(JAMSTEC)

 どちらも海だけではなく、地上でも見られるとのことなので、雨上がりや、朝早く起きたときなどに、あなたの空でも見られるかもしれない。

■幸せの光、グリーンフラッシュ
 太陽が昇る瞬間や沈む瞬間、ほんの一瞬だけ太陽が緑色の光を放つ。それがグリーンフラッシュ。

P33 「グリーンフラッシュ」 撮影:柏野祐二(JAMSTEC)

 地表近くの大気がプリズムの役割をして、通過した光が屈折し、緑色の光だけが目に届く。本書によれば、「これを見た人は幸せになる」と言われているそうな。空気の澄んだところほど発生しやすいみたいなので、海や山など自然豊かな場所で見てみたい。

■ビーナスベルトと地球影
 日没直後、西ではなく「東の空」に現れるピンクの帯が「ビーナスベルト」。沈んだ後の太陽の光が東の空に届き、低い空を帯状に染める。

P35 「ビーナスベルト」 撮影:柏野祐二(JAMSTEC)

 写真にある、ビーナスベルトの下、海面近くの暗い部分は「地球影(ちきゅうえい)」。
 地球の影って、どういうこと? 一瞬ハテナが頭に浮かぶが、その理由は「地球が丸いために、日没後の光が地球に遮られ、東の水平線まで届かない」ことだという。
 地球が丸いことを実感することができる、幻想的な瞬間だ。

 まもなく本格的な夏がやって来る。海洋地球研究船「みらい」のように、遠くの海を旅することはできないかもしれないが、あなたが出逢うこの夏の空と海が、とっておきになりますように。そんなミライを願いつつ、もうしばらく雨空を眺めている。

文=水陶マコト