「銀行は性悪説にたって物事を考える」 銀行マンのリアル座談会

ビジネス

公開日:2014/7/14

 流行語大賞にも輝いた「倍返しだ!」で一躍注目を浴びた“銀行マン”という仕事。ドラマ『半沢直樹』の原作者・池井戸潤の作品にも多く登場し、不祥事や不正、権力争いなど、ダークな話題に事欠かないが、実際はどんな仕事をしているのだろう。『ダ・ヴィンチ』8月号の池井戸潤特集では、現役銀行マンの覆面座談会を開催している。

【座談会参加者】
Aさん:地銀に勤めて8年。営業や管理を経験
Bさん:都市銀行に勤めて6年。営業一筋
Cさん:都市銀行に勤めて5年。営業一筋

――池井戸作品を読んでいると、一度、失敗をすると出世コースからはずれてしまうように感じますが、実際は?

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【A】それはないと思います。私自身、いろいろな失敗をしていますから。

【B】パワハラ的なことをされたとしても、フォローしてくれる人もいる。そういう熱い方が上司だと頑張んなきゃなと。

【C】上司も私たちと同じように、下積みのつらい時代を経験しているから、いま上にいるわけですもんね。

【A】叱咤激励をする人がいるのも、それをフォローしてくれる人がいるのも、やっぱり銀行の文化なのかな。

【C】人によると思いますけれど、激詰めする(※理詰めで相手を必要以上に追い込む)人っていますよね? 部下を理不尽に問い詰めるタイプ。

【A】いますね。

【C】「なんで達成できないの? なんで? なんで?」と、繰り返されると、「うっ」て言葉に詰まっちゃう。これが激詰め状態。

【B】そこから転じてただ怒鳴ってる人を指すこともある!

【一同】 爆笑

【B】そういう人って、人格否定をしちゃったり、理屈っぽかったり。

【A】理屈っぽい人って多くないですか? 私は理屈で返しても勝てないので、抽象的に誤魔化そうとして……。

【C】そこで激詰めされる!

――不祥事ってあるんですか?

【B】お金を扱う仕事なので、たとえばお金を横領するなど、悪いことをしようと思ったら、不正ができちゃうんです。だからお金に困っていないか、ギャンブルにハマっていないかなど、プライベートに踏み込んだヒヤリングはあります。

【C】自分が勤めている銀行に給与振込口座があるので、なにか怪しい動きがあれば、たぶんその口座をチェックしているんじゃないでしょうか。

【B】いつもではなく、不正が発覚したあとにチェックしているでしょうね。

【A】おそらく人事は見てます。

【B】まあ滅多に不祥事はないと思いますが、不祥事が起きると、金融庁=国に報告するので新聞沙汰になります。

【A】だから個人情報の流出や紛失には気を使います。お客さまの伝票や申込書、契約書など、なにを預かったか事細かに記録に残さないといけない。

【C】管理は厳しいですね。

【A】専用の複写になっている紙に記して、検印じゃないですが直属の上司からその上までのチェックがある。

【B】銀行は性悪説に立って物事を考えているので。

【C】際限なくルールが積み重なっていて、なにかあれば再発防止策は?と、ドンドンかぶさってきます。

――「半沢直樹」シリーズは、読まれましたか?

【A】小説は上司が好きで勧められましたが、ドラマが始まって支店長が危なくなったら、会話がなくなって(笑)。

【C】デフォルメされてるけど大筋は間違ってない。男同士の嫉妬は、少なからずある世界なので、そこはリアル!

【B】みんなプライドが高くて、自分がかわいいのかも?

【A】あーそうかも。でもドラマの半沢直樹は、仕事終わりに同期とよく飲んでますけど、みなさんはどうですか?

【C】同期とは飲みますが、支店のそばでは飲まないですね。

【B】支店の近所だとお客さまに会ったりして、日頃「お金貸して」とか言われてるのに、それやらないで飲んでたら、さすがに気まずい(笑)。

【A】その飲み屋がお客さまの場合もある。

【一同】爆笑

【A】今月売り上げヤバそうだから行っとこう、とか。そこで割引券なんか使ったら、あとでめっちゃ怒られる。

 同誌ではほかにも、みんな大好きだという「人事異動」についてや、電車内での銀行マンの見分け方、銀行マンとしての生きがいについてなど、作品と照らしながら現場の裏話を語っている。

取材・文=大久保寛子/ダ・ヴィンチ8月号 「池井戸潤」特集