美と知が究極の融合! 「世界の図書館」を旅してみよう 第2回 壮麗&エレガント編】

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/21

世界の夢の図書館(エクスナレッジ)』(エクスナレッジ)

世界中から選りすぐった37の魅力的な図書館を美しい写真で紹介する『世界の夢の図書館』(エクスナレッジ)。第2回は「壮麗&エレガント編」として、美しい装飾や素晴らしい空間を持つ図書館をご紹介しよう。

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「フランス国立図書館 リシュリュー館」(フランス)

シャルル5世の王立図書館を起源とする、フランス・パリにある公共図書館。1854~75年に建て替えが行われたリシュリュー館は現代的な建材である鉄を使いながらも、教会をモデルに作られたというだけあってエレガントで優美だ。

建築家ジャン=ルイ・パスカルの設計による、開放的な43.7×32.8メートルの楕円形をした広い閲覧室の天井の高さは18メートル、円窓が16あり(換気用でもある)、それを支えているのはイオニア式(古代ギリシャの建築様式)柱頭のある鋳鉄製の16本の柱だ。もともとリシュリュー館にあった所蔵品は、1996年に作られた新館「フランソワ・ミッテラン図書館」に移されており、現在この図書館に収蔵されているのは印刷技術発明前の写本から現代作家の原稿、フランス王室由来のコレクションなどが中心となっている。

また30~50年の周期で時代のニーズに合うように改築されるのがこの図書館の伝統だという。歴史ある建物を守るだけではなく、前例や慣習にこだわらず柔軟に対応する進取の気性に富んだフランスらしいスタンスといえるだろう。

 

「大英博物館図書室」(イギリス)

「あの大英博物館に図書室があるの?」という声が聞こえてきそうだが、大英博物館図書室は博物館の中庭に屋根をかけて作られた「グレート・コート」の中心、円形の閲覧室を持つ建物にある。1753年、ロンドンにで大英博物館が開館した際に「印刷物部門」が創設されたことが図書室の起源だそうだ。

円形の閲覧室は1854年に建設が始まり、鋳鉄、コンクリート、ガラスという近代的な材質を用い、大きな丸天井を備えていて、1857年に完成している。この図書室を利用するためには第一司書に利用証を発行してもらう必要があったそうで、それに選ばれたのは『資本論』を記したカール・マルクス、ソビエト連邦の初代指導者のウラジーミル・レーニン、『ドラキュラ』のブラム・ストーカー、「シャーロック・ホームズ」シリーズのアーサー・コナン・ドイル、『オリバー・ツイスト』のチャールズ・ディケンズ、『ボヴァリー夫人』のヴァージニア・ウルフなど、そうそうたるメンバーだったという。中でもマルクスは約30年間この図書室を利用し、『資本論』などを執筆したそうだ。中央カウンターを中心に放射状に並んだ閲覧席を取り囲むように並ぶ本の存在感は圧倒的だ。

 

「アドモント修道院図書館」(オーストリア)

オーストリアのほぼ中央、シュタイヤマルク州にあるベネディクト会アドモント修道院。そこにあるのが世界で最も大きな修道院図書館であり、本書の表紙にもなっているアドモント修道院図書館だ。

1074年に設立されたアドモント修道院の図書館は、ザンクト・ペーター修道院から書物が移送されたことがその始まりだ。1776年に完成したという後期バロック様式の図書館は「壮麗」のひと言に尽きる。7つある丸天井に描かれた芸術と宗教、学問と宗教の結びつきをモチーフとしたフレスコ画、菩提樹の木にブロンズメッキを施すなどされた数々のバロック様式の彫刻、磨き上げられた白、赤、グレーの3色の大理石を組み合わせた幾何学模様の床(見方によって浮き出て見える)、白地に金細工を施されたロココ調の書架など、豪奢で華麗な空間には約20万点の本が収蔵されているが、完成時はあまりの凄さに人々は度肝を抜かれたという。

2008年には創設以来初となる改修が終わり、図書館は往時のきらめくような明るさを取り戻している。中世ヨーロッパの美を感じる、高貴な図書館だ。

ちなみに本書には所在地や電話番号、ウェブサイトのアドレスはもちろんこと、開館時間や休館日、入館料、見学ツアーの有無まで記されているので、行ってみたい図書館のデータベースやガイドブック(持ち歩くにはちょっと大きくて重いが)としても使える作りになっている。

次回は最終回「自由闊達&モダン編」と題して、現代建築や最先端の技術を導入している図書館をご紹介する。

文=成田全(ナリタタモツ)