20周年だけど“過去は振り返らないタイプ” ドアラが愛される理由とは?

スポーツ

2014/7/26

 世間ではくまモンにふなっしー、バリィさん、さのまるなど、ゆるキャラが大人気だが、球界にも長年絶大な人気を誇っているマスコットキャラがいる。それが、中日ドラゴンズのドアラだ。近頃は特技であるはずのバク転も成功率5割を下回っており、それどころか左手中指を骨折した昨年に続き、今年は右足の靭帯損傷、2015年は半月板損傷と、ケガ続きである。それでも、彼の人気はまったく衰える気配がない。むしろ、そのケガすらもネタにして発売された「じんたい損傷グッズ」が話題になるほど。そんなドアラも、今年でマスコットキャラに就任して20年以上が経った。そこで、彼の著書『ドアラの愛した硬式 きおくにございません』(PHP研究所)から、改めて彼が愛される理由を探ってみよう。

 まず、じんたい損傷グッズを作ってしまうことからもわかるように、とても自虐的なドアラ。「さいふをなくした」というエッセイコーナーでは、昨年末25%の減給を命じられ、記者会見を開いたことについて語っているのだが、それまでの年俸は食パン1キロだった。つまり、今年の給料は25%引かれた750グラム。そこで、ドアラは記者に「そこまでしなくてもいいと思うよ」と言われながら、自ら25%分の食パンをちぎって返却したのだ。それに、「最近ドラゴンズのみんなとうまくやれてますか?」という質問には「ドラゴンズのみんなには、本当に良くしてもらっています。ほんと、こんな自分のために……」と語っている。

 また、空気を読まず、選手や監督に攻撃やセクハラを仕掛けることもあるドアラは、傍若無人キャラとしても有名だ。この本でも、その傍若無人っぷりは発揮されている。ドアラが幼稚園を訪れ、子どもたちと触れ合う「ドアラちゃんのようちえん」というコーナーがあるのだが、そこで園児たちとかけっこをしたときも、大人気ない全力疾走でドアラが圧勝。子ども相手でもまったく容赦せず、ボルトを真似した勝利のポーズまで決めているのだ。でも、「毎日が誕生日のつもり」と語るドアラは、その言葉通り毎日を全力で楽しんでいる。それが傍若無人に見えることもあるが、その楽しそうな様子や全力で取り組む姿勢に惹きつけられる人も多いのだろう。

 そして、筆談形式で会話するドアラだが、その受け答えもいい加減なものが多い。せっかくの20周年記念にも関わらず、ドアラから出てくる言葉は「きおくにございません」「過去は振り返らないタイプ」というのらりくらりとかわすものばかり。1日警察署長も務めたことのあるドアラが、昔の警察風の制服で取り調べをするというコーナーがあるのだが、ここでも答えになっているのかよくわからない回答が並んでいる。たとえば、取り調べ中の男に「ドアラさん! 夢とか希望ってどこで見つかるんですか?」と聞かれると、「スマホとかで出てくる」。「正しく生きるためには、どうすればいいのですか?」という問いにも「よくかんで食べるといいと思うよ」と答えている。「社会のルールってどういうものがありますか?」という質問にいたっては、「ドアラを大切にする」「守らないと不幸になる」など、自由すぎる回答を笑顔で出してくるのだ。でも、こういったつかみどころのない部分が、ファンの心をつかんで離さないのかもしれない。

 そういえば、本著のタイトルは小川洋子のベストセラー『博士の愛した数式』(新潮社)のパロディのようだが、主人公の博士は記憶をすぐ失う設定なので、それと「記憶があいまい」と語るドアラをかけているのだろうか。ちなみに、『博士の愛した数式』に登場する博士は阪神ファンなのだが、ドアラはそのことすらも忘れてしまっているのか? ただの自虐ネタなのか、あるいは、それもわかったうえでタイトルをパロディにし、「きおくにございません」などと言ってつかみどころのない傍若無人キャラを演じているのか……。どちらにせよ、もしそこまで考えてつけられているのだとすれば、ドアラはかなり頭がキレるタイプなのかもしれない。

文=小里樹