昔も今も変わらない“いまの母親”に注がれる厳しい目

出産・子育て

2014/8/18

 もっともこの書籍は、小児科医が監修したわけでもなく、映像作家である著者が独自の子育て論を説いているものであり、その大部分はテレビやアニメの台頭によって思いやりと思考力のない子どもを育てる事になるということに割かれているので、トンデモ本である可能性も否めない。「夫は家の外で社会と触れ合い、子どもも学校で膨大な量の学習を取り込んでいる。あなただけがのんびりとしていては、ついていくことがむずかしくなるでしょう」と専業主婦であることが前提となっていたり「動きやすい地味な服装でがんばりとおしてください」など女性の権利は完全無視なところも目につく。

 しかし、当時から母親の振る舞いに対しては厳しい目が注がれていた事が分かる書籍ではある。また、時代の流れによる新たな電化製品が家庭に浸透することへの拒否感、詰め込み教育への批判など、時代は変われど、心配の目が向けられるポイントも変わってはいない。現在ベビーカーマークについて苦情を申し入れている世代の女性もかつては、当時の年配者に眉をひそめられていた時代があったのである。

 一昨年には漫画家のさかもと未明が飛行機に乗った際、同乗していた1歳ぐらいの赤ちゃんが泣き出した事についてコラムで触れ物議を醸した。泣き止まない赤ちゃんの母親に「あなたのお子さんは、もう少し大きくなるまで、飛行機に乗せてはいけません」と告げ、着陸後も航空会社側へクレームを入れた、という内容である。また今年1月、ホリエモンが新幹線で泣く子どもについて、ツイッターで「睡眠薬飲ませればいい」などと発言したことも話題となった。このさいホリエモンは「なく子にイラつくんじゃなくて親の対応にイラつくんだよね」と子ども自身でなく親の態度についていらだちを感じるともつぶやいており、子育てを巡ってはいまも常に周囲からの厳しい目が注がれる。ブログ炎上女王として名高いタレント・辻希美は、常に「料理のウインナー率高すぎ」といった声や「子連れでグリーン車に乗るなんて迷惑」など、子育てにおける一挙手一投足がネット上の燃料となり、燃え続けている。“いまどきの若いお母さん”としての批判が集中しているのが彼女だろう。

 2002年に文部科学省が発表した「今後の家庭教育支援の充実についての懇談会」報告によると、昔は三世代同居が多く、親以外に多くの大人が子どもと接し、子育てに関わってきたという。また地域のつながりも今よりは密で、どの家の子どもたちも「地域の子ども」として見守り、育てていた。ところが現在は「急速な都市化の進展、職場と住居の分離などに伴い、家族の形態や生活様式は大きく変わり、核家族化や地域のつながりの希薄化が進んだ結果、今日では多くの地域において、子育てを助けてくれる人や子育てについて相談できる人がそばにいないという状態」が見られるようだ。“昔の方が大変だった”という意見は、確かにベビーカーや便利な抱っこ紐など、育児を助ける道具が格段に増えた事を見れば真だが、現在の社会状況を鑑みると必ずしもそうとはいえない。昔も今も何かしら大変なのである。

 もちろん中には批判されても仕方のないような態度の母親もいるだろうが、厳格すぎる周囲の目はまだ母親になっていない女性も萎縮させ、少子化を加速させる事にしかならないのではないだろうか。

文=寺西京子