むっちりを愛する男性諸君! あなたは女性の“むちむち”を守れるか!?

アニメ・マンガ

2014/8/22

 「世界が歪んでしまった」と語るひとりの少年がいる。歪んだ世界を直そうと、少年は立ち上がった。神の力「神器」を宿した右手を武器に、Mゲームを戦いの舞台として。そんな少年の物語を描いた作品、それが8月16日に第2巻が発売される『M・ゲーム』(少年画報社)だ。

 じつはMゲームとは略称にすぎない。このゲームの正式な名を教えよう。それは「ムチムチゲーム」。

 申し訳ない。ファンタジックな少年の成長冒険譚を期待された方、大変申し訳ない。そう、この作品、いわゆる“おバカマンガ”。しかも、期待させるような前フリをせざるを得ないほど、バカバカしさに満ちあふれているのだ。

 作者は、『オニデレ』(小学館)などで人気を集めたクリスタルな洋介。彼の欲望がギュッと詰まっているのかどうかは定かではないが、この作品からは「ふくよかな女性=むっちりとした女性」に対する愛が禍々しいほどに感じられる。前述した少年、タケハヤこと第150代タケハヤスサノオノミコトを中心とした物語なのだが、彼の目的は「むっちり」や「むちむち」を守ること。むちむちの女性、中でもよりむちむちな部分である太ももをこよなく愛しているニッチな嗜好をもつ少年なのだ。

 そんな彼の右手は常にグルグルと包帯が幾重にも巻かれている。まるでなにかを封印しているかのようなその様は、事実「神器」という存在を包み隠しているのである。Mゲームの際はそれを解放。包帯の下からは禍々しい模様の入った右手が、ほとばしるオーラとともに姿を表す。「草薙の剣」という中二心をくすぐるような名前の「神器」。その特殊能力とは、すごくヌルヌルしていること。それを武器に、タケハヤはMゲームを制するのである。ダメだ。なにを言っているのかわからなくなってきた。途中まではかっこいい話だったのに、「ヌルヌル」のキーワードが出てきた瞬間、すべてが狂いだしてしまった。

 とにかく、物語のキーとなるMゲームについて説明しよう。Mゲームの参加者は基本的に2人。両者は攻と守に分かれ、果物などを巡り戦うことになる。攻は守が守る果物を取れば勝ちで、守は果物を守りきれば勝ち。勝負場所は主に部屋の中で、守は果物を部屋のどこに置いてもいいし、家具や自分を使って、果物のまわりにバリケードを作ってもいい。しかし、果物を持って逃げ回ることを防ぐため、ゲームスタートと同時に、守は動くことを禁じられる。さらに守は足だけを使い果物を守らなければいけないという制約があり、身体をバリケードにしても、背中などを使って立ちふさがることはできない。必然的に、果物の前に閉じた両脚をまるで盾のようにして守ることになる。攻めは動き回ることができるものの、手だけを使い、果物を奪わなければいけないという制約がある。攻はだいたいタケハヤになるのだが、ここで役に立つのが「草薙の剣」ことヌルヌルした右手の存在。ピッチリと閉じた両脚の間、というか太ももの間にあえて、ヌルヌルした手を差し込み、そのヌルヌルさを最大限利用して、手を押し込んでいく。太ももの肉圧に押し負けるか、それを乗り越えて果物を手にするか……まさに一瞬も目が離せない、熱のこもった勝負になるのだ。まあ、実際、はたから見たら苦悶の表情を浮かべながら、太ももと太ももの間にヌルヌルした手を差し込んでいるだけの変態としか言えない絵面になるのだが。

 作品中、最初にMゲームの参加者となったのは甘物をこよなく愛する女性、羽千木内子。もちろん、主に太ももがむちむちである。彼女は健闘もむなしく、そのヌルヌルした右手を閉じた太ももの間にヌルっと滑り込まされてしまい、果物を奪われる。敗者となった内子は「従者」としてタケハヤに従う羽目になってしまい、その活躍にツッコミを入れつつ見守ることになる。

 ここまでで、Mゲームをただの、女性の最もむちむちな部分を思う存分堪能するゲームと捉えられているのならば、それは大きな間違いである。Mゲームの真の目的、それは女性の「むちむちを嫌う」という感情……いや「呪い」を解き放つ儀式なのだ。敗者となった女性は、「むちむちを嫌う」という感情から解放され、むちむちであることを受け入れるようになる。そう、Mゲームを続けることで、徐々に世界は「むちむちを嫌う」という歪みが正されていくという寸法なのだ。もういいだろうか。いろいろと限界である。なんだか説明しているこっちの頭が疑われそうなほどぶっ飛んだ世界観で展開するこの作品。ハイテンションで常に進んでいくので、追いつくのがやっとなほどである。

 タケハヤが言う「歪んでしまった」世界とは現実を指す言葉でもある。「思わずつかみたくなる」がキャッチフレーズの、太っているわけではないが、思わずつかみたくなるようなほどよい肉付きの女の子たちを紹介した写真集『むちり』(岡戸雅樹/扶桑社)が出版され人気を博していることからもわかるとおり、近年はむちむちした女性に光が当てられている。とはいっても、未だリア充どもの間では「スリムスタイル信仰」とも言うべきものが蔓延しており、女性たちはやっきになって細くあろうとする。「あんた十分痩せてるじゃん」という人でも、口ぐせのように「痩せなきゃ」と言うのが現実だ。そんなもの、行き着く先は骨と皮だけのガイコツだろう。あなたはガイコツを愛せるだろうか。否、否である!

 現実世界にもタケハヤのような、女性の心から「むちむちを嫌う」という感情を解き放つことができる人間が必要だ。いや違う。今こそ、男ひとりひとりがタケハヤになるべきなのだ。ヌルヌルした右手をその身に宿し、かたっぱしから女性にMゲームを仕掛ける……。警察に捕まることを、女性から嫌われることを、社会からつまはじきにされることを恐れるな! 女性のガイコツ化を防ぐため、今こそ立ち上がれ男たちよ! 立ち上がったのなら、右手をヌルヌルにするために、ローションを買いに走るのだ!

文=オンダヒロ