働かないオジサンにならないためにやっておくべきこと

ビジネス

公開日:2014/8/25

 トイレの中でスマホをいじっているオジサン、営業周りと言いながら外出ばかりしてどこで何をしているかわからないオジサン。そんな働かないオジサンの話をよく耳にする。

 どこにでもいる働かないオジサンだが、決してどのオジサンもラクして給料をもらおうなどと、若いころから考えていたわけではない。

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 『人事のプロが教える 働かないオジサンになる人、ならない人』(楠木新/東洋経済新報社)では、働かないオジサンが生み出されるメカニズムとそうならないための対策について書かれている。

 本書の著者である楠木氏は、現在の会社のしくみ、会社員人生のしくみのままでは、若者の8割程度が働かないオジサンになってしまうと言う。働かないオジサンに対して給料泥棒などと陰口を言っていると、いつの間にか自分が言われる立場になってしまいかねない。働かないオジサンにならないためには、どうすればいいのだろうか。本書から探ってみよう。

■働かないオジサンを産み出すメカニズムとは

 働かないオジサンにならないためには、まず働かないオジサンを作りだすメカニズムについて知ることが必要だ。

 働かないオジサンが増える理由のひとつは、新卒一括採用とピラミッド組織構造にある。新卒一括採用により毎年大量の新入社員が入社する一方で、会社はピラミッド構造になっており上位職になるほどポストの数は先細りする。課長、部長、取締役、社長など役職につけるのは僅かな人々だ。そのため、新卒一括採用で入社した社員が40歳ごろからピラミッドの外に押し出されていく。

 もうひとつの理由は会社員人生のしくみにある。会社員人生は、大きく分けると入社してから仕事を通じて自立していく時期、組織での仕事に一定のメドがついてから自分のあり方を考える時期の2段階ある。

 それぞれの時期に別の通過儀礼がある。前者の通過儀礼は組織の中で一緒に働く仲間や顧客に役立つ自分をどう作り上げていくかということ、後者の通過儀礼は自分自身が老いることや死ぬことを意識して、どのような距離で組織と付き合っていくかということだ。会社員人生の真ん中である40歳ごろに切り替え時期があり、楠木氏はそこを「こころの定年」と呼んでいる。

 どちらの理由も40歳ころに転換期があり、うまく心の切り替えをできなかった人が仕事に意欲をなくし働かないオジサンになっていく。

■こころの定年をうまく乗り切るには

 こころの定年をうまく乗り切ることができれば働かないオジサンになることは避けられる。

 ここでKさんの事例を紹介しよう。Kさんは「会社の同期が毎年毎年、課長職に登用されていくのに自分だけが取り残されている」と、ショックを受けていた。また、趣味のスノーボードも仕事が忙しく、休暇もとりづらいとぼやいていた。仕事自体は嫌ではないが、会社組織の中に自分を埋め込んでおり、将来に明るい希望も持てないでいる。そんなKさんに楠木氏は社外に充実できる場を作るため、趣味のスノーボードに力を入れるようにアドバイスした。

 そこからアドバイス通り趣味の時間を多く持ちはじめたKさん。会社勤めの傍ら3年かけてスノーボードの公認インストラクターのC級を取得した。シーズン中の土日にインストラクターをする。子どもを教えることにより、子どもとその両親から感謝してもらう、他の職業をしているインストラクター同士交流を持てるようになる。など、会社以外での自分の居場所を見つけることができた。

 Kさんは「それまでは、会社という塀の中にしか視野がおよんでいなかった。その塀の中の評価や序列を気にしながら過ごしていた。でも、その塀の外で自分が評価されることがわかって、自信がついた。それが社内の仕事にも好影響を与えている」と話す。

 Kさんが自分を変えたわけでもなく、会社が変わったわけでもない。会社の外に目を向けることにより、新たな価値観を見出すことができ、それによって自分と組織の関係を変えることができた。働かないオジサンになることを回避できたのである。

 Kさんの話は一例でしかない。本書では、タイプ別に働かないオジサンにならない対処法が載っている。自分はどのタイプでどのように働けばいいのだろう。気になった方はぜひ本書を読んでほしい。働かないオジサンを回避するだけでなく、イキイキと働く方法が見つかるはずだ。

文=舟崎泉美