女の子にエッチなことをしてロボを動かせ! 『健全ロボ ダイミダラー』

マンガ

公開日:2014/8/28

 アニメ化もされた『健全ロボ ダイミダラー』。その設定などで、視聴者の度肝をぬき、話題を集めた作品である。マンガが原作なのは周知のとおりだが、じつは新シリーズが作られていたりもする。それが『健全ロボ ダイミダラーOGS』である。

 ここまでの時点で、まるでピンときていない流行に乗り遅れた人々のために、本書からあらすじを抜粋しよう。「人類だけが生成できる未知のエネルギー“Hi-ERo粒子”を狙って、どこからともなく侵攻してきた、ペンギン帝王率いるペンギン帝国。一方、この侵略を阻止しようと結成されたのが、巨大ロボット“ダイダミラー”シリーズを保有する秘密組織“美容室プリンス”だ(以下略)」。もうお分かりだろうが、王道的な“ロボットモノ”の皮はかぶっているものの、説明するまでもなく、本書はバカバカしさに満ちあふれたおバカマンガである。ペンギン帝王は「新ペンギン計画」という謎の恐るべき計画を進める96歳の高齢者で、ペンギン・コマンド、略してペンコマと呼ばれる、人間がスマートな着ぐるみで変装したような兵士を従え、人類に敵対している。ペンコマメンバーは全員24歳で、「前シッポ」と呼ばれる独特な形の尻尾を生やしているのが特徴。その見た目は完全に、布のようなものをかぶせたうえで屹立させた股間ではあるのだが、本書が「前シッポ」と言い張る以上、余計な詮索は止めておこう。

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 対する人類の希望たる存在「美容室プリンス」。名前の時点でツッコみたい衝動がわきあがるが、作者に踊らされているような気がしてしゃくなのでスルーさせてもらう。さて、その秘密組織で巨大ロボット「ダイダミラー」を操る主人公のひとりが17歳(初登場時は16歳)の熱血パイロット、真玉橋孝一だ。強力なHi-ERo粒子を発生させることができる人間のひとりでもあり、そのエネルギーはダイダミラーの動力源となる。さて、そんな万能エネルギーであるHi-ERo粒子を、孝一がどのように発生させるかというと……ともに搭乗するスタイル抜群の美女、楚南恭子のおっぱいをもむのだ。いや、少し言葉が足りない。おっぱいをもみしだくのである! そう、孝一がHi-ERo粒子を発生させるには女性にエロいことをし、興奮を高める必要があるのだ。しかも、もみしだいた後、恭子に対して「相変わらずいいおっぱい いいよがり声だったぜ」とのたまう始末である。どうだろう、呆れてものも言えないのではないか。この作品がアニメ化され、公共の電波に乗り、日本各地で放送されているとは、日本のななめ上の発展は相変わらず留まるところを知らないようだ。

 しかしながら、随所に盛り込まれた王道的な“ロボットモノ”のスパイス、戦闘シーンの激しさは、否が応でも読者を作品に引き込んでいく。引き込んで、引き込んで、引き込んだあげくにおバカな設定やシーン、エロで落としていく様は、お見事のひとことだ。

 『健全ロボ ダイミダラーOGS』では、新たな主人公として南風原良輔が登場。同じく新たな敵として現れた、ペンギン帝王とは違い、人類への殺戮を繰り広げる「殺人ペンギン」を相手に激しい戦いを繰り広げるのだ。

 良輔は主人公の名に恥じぬ、正義感の強い性格で、悪への怒りを引き金にHi-ERo粒子を発生させる。おっと、『健全ロボ ダイミダラー』が人気を集めたことを機に大衆向けに路線変更しやがったのか! やっぱり大人は汚えよ! と思われるのはまだ早い。永遠のピーターパンたちよ、一旦落ち着いてほしい。物語が進むにつれ、良輔には悪への怒りよりも大きなHi-ERo粒子を発生させる引き金が見つかる。その引き金とは「背徳感」。他人の連れ合いである女性にエロいことをするという行為によって得られる背徳感が、良輔の感情や欲望を揺さぶり、ハイレベルのHi-ERo粒子を生み出すのだ。NTR(寝取り)を利用するとは……この作者のぶっ飛び具合、恐るべし……。また、良輔のエロ行為は留まることを知らず、おっぱいをもむという本書ではジャブレベルの行為から、社会の窓から片手を出し、女性を求めるという絶技「ガリバーチンポ」までも繰り出すようになる。初期の、老人を交通事故の危機から助けた正義感あふれる好青年ぶりはどこへやら。ある意味で、進化した後半の姿とのギャップに情けないやら誇らしいやらで涙があふれて止まらない……。まあ、そういった絶技によって見事殺人ペンギンを撃退することに成功するのだから、バカな技と一刀両断するのは止めておいたほうがいいだろう。

 股間を淡く刺激するほどよいエロ、ため息と感嘆の息がないまぜになるバカバカしさ、脳汁が出そうな勢いのバトルシーンが混ざり合い、おもしろさが極限まで引き上げられたこの作品。興味をもたれたのなら、一読してみるのもいいだろう。

文=オンダヒロ