BL作家が続々と一般向け作品を発表!? そこで描かれる「男の魅力」とは…

BL

公開日:2014/8/31

 「王子様のとなりにはお姫様、なんて誰が決めたのかしら?」「王子様のとなりには王子様。それでいいじゃない、それがいいじゃない!」。のっけから濃ゆいセリフでスミマセン。全国の腐女子のみなさんが喜びそうなこの言葉、実はBL作家のぢゅん子さんが連載している漫画『私がモテてどうすんだ』(講談社)の冒頭に登場するもの。一部の方面から、「そうそうそうなのよ!」と厚い支持を集めそうなセリフがバンバン登場するこの漫画、実はBLではなく、あくまでも男子と女子の恋愛をコメディチックに描いた、一般向け漫画なのである。

 そう、一昔前までは、BLというとコッソリ読まれるものだった。男性同士の恋愛が描かれた作品が好き! なんて大声で言おうものなら、「あの人ってちょっと…」と、きつめのオタク認定されたものだ。さらに、その作品を書いている作家となれば、なおのこと。専門誌で作品を発表はするものの、決してその枠組みを超えるような人はいなかった。

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 ところが、最近ではそれを打ち破り、BL作家でありながらも一般向け漫画を描く作家が続々と登場しているのだ。描かれるのは、ラブコメにサスペンスホラー、はたまた“落語”を題材にした人情ものまで幅広い。そして、そこにはあるひとつの共通点がある。それは、登場する男性が非常に魅力的である、ということ。男性を色っぽく描くことに長けているBL作家たちの才覚は、一般向け作品でもいかんなく発揮されているのだ。

 冒頭で紹介した『私がモテてどうすんだ』も、そのひとつ。これは腐女子である花依(かえ)と、それを取り巻く4人のイケメン、五十嵐・七島・四ノ宮・六見とのドタバタを描いたラブコメ漫画だ。

 花依はイケメン同士の絡みを妄想して楽しむのが生きがいの女の子。太っている容姿ゆえに、男子生徒から見向きもされないのだが、その分彼らをコッソリ観察できると喜んでいる、ある意味ポジティブな思考の持ち主だ。ところが、あるとき、お気に入りのアニメのキャラクターが死んでしまい、そのショックから激ヤセしてしまう。すっきりヤセた花依は、同一人物とは思えないほどの絶世の美少女に変貌。その姿に一目ぼれした前述のイケメンカルテットから求愛されてしまい、まさに「私がモテてどうすんだ」という展開に…。

 作品に登場するイケメン4人は、まさに「イケメンの見本市」だ。正統派の王子様系、ちょい悪のヤンキー系、ツンデレ後輩にぼんやりとした天然の先輩。「二人きりになれないなら、ちょっとだけ独占させて?」という正統派王子様の歯の浮くようなセリフや、ヤンキーがふと見せるやさしい仕草…。そこには、世の女子の願望を具現化したイケメンたちが待っている。

 また、ヤマシタトモコが描く『さんかく窓の外側は夜』(リブレ出版)は、BLではないが、男性同士の色っぽい絡みが魅力の作品だ。こちらは霊が見えてしまう三角と、除霊を生業としている冷川の活躍を描いたサスペンスホラー。

 除霊をしていくうちに、死体を使った呪術事件に巻き込まれていき…というストーリー展開も気になるところだが、特筆すべきは三角と冷川の除霊の仕方。除霊をするには、冷川が三角を媒介にし、霊を“ぶん投げて”しまうのだが、その際、三角は冷川の手によって魂に“触れられてしまう”。そして、魂に触れられる、というのは想像を絶するほど“気持ちいい”のだそう。そのせいで、三角は除霊のたびに恍惚とした表情を浮かべ、足をガクつかせる。これは並大抵のセックスシーンよりも色っぽいといえるだろう。三角の気持ちよさそうな顔を見るために、ちょいちょい魂に触れさせようとするドSな冷川も見ものだ。

 最後に紹介するのは、雲田はるこの『昭和元禄落語心中』(講談社)。漫画としては珍しい、落語を題材とした作品である。この作品に登場する男性陣のなかで一番魅力的なのは、やはり主人公・与太郎の師匠である、八雲だろう。作中では明言されていないが、年齢はおそらく50代。一般的には“枯れた”といわれてもおかしくない世代だが、八雲には枯れてもなお周囲の人間を魅了するセクシーさが漂う。それも“ちょい悪おやじ”的な魅力ではなく、清潔感がありながらも、どこか危うさを感じさせる、大人の色気だ。刑務所帰りの与太郎を引き取り弟子にする懐の深さも、その魅力に拍車をかけているだろう。「アタシ」「おまいさん」などといった下町言葉を使っているところも、妙な色気を感じさせる所以かもしれない。人気を受けて、来春にはアニメ化が決定。単行本7巻・8巻にそれぞれオリジナルアニメDVDがついてくるそうだ。アニメとなって動いたとき、八雲の色気はどのように表現されるのか、期待が寄せられる。

 世の中は、草食系にはじまり、肉食、ロールキャベツ、雑食など、さまざまな男子がクローズアップされている。ここらへんで、「BL系男子」などという、一風変わった男のカタチが取りざたされてもおかしくないのではないだろうか。腐女子のみなさん、(それ以外の方も)ぜひぜひお楽しみに!

文=前田レゴ