今日マチ子から目が離せない! この夏刊行された5作品を紹介

アニメ・マンガ

2014/8/29

 ひめゆり学徒隊をモチーフとしたマンガ『cocoon』は、“戦争”に新たな視点と解釈を与えたものとして高く評価され、それ以上に“戦争を知らない”世代の若者たちに心を大きく揺らした。著者は今日マチ子。『ダ・ヴィンチ』9月号では、今年、第18回手塚治虫文化賞「新生賞」に輝いた今日マチ子を特集している。

――『cocoon』以後の作品は、デビュー以来のポエジーはそのままに、「物語ること」「マンガであろうとすること」への意思が高まっている。この夏刊行の5作でもそれは如実だ。

 『ヒカリとツエのうた』は、近代日本に実在したマイノリティという社会派テーマを扱いながらも、マンガ的なキャラクター性、RPG的な仲間集めの楽しさを取り入れ、エンターテインメントに昇華させている。『ペコポコ』に漂うのは、子どもの頃に児童幼年誌で誰もが読んだ、ショートギャグマンガの薫りだ。『5つ数えれば君の夢』は、実在するアイドルをモデルにした、いわゆる“企画モノ”。「夢」と「現実」、「1人」と「みんな」という過去作で積み上げてきたテーマを反響させながら、青春マンガとして抜群の完成度を達成した。『センネン画報』から続く実験性も手放してはいない。『cocoon on stage』に収録されたマンガは、他人の手により戯曲化&演劇化された『cocoon』を、本人がマンガ化するという試みだ。『いちご戦争』には、明確なストーリーはない。だが、サイレントの画面に描き込まれている情報が、読み進めるうちに徐々に、大きな像を成していく。

 今日マチ子作品の特徴は、誰をも拒まないシンプルな絵柄。入りやすく、軽やかで、読みやすい。しかしその世界の奥は深い。彼女の想像力は今も、濃縮しながら発散し、尖りながら広がり続ける。

■『ヒカリとツエのうた』 今日マチ子 集英社ヤングジャンプC 514円(税別)
 目の見えない少女ゴゼは、親方と弟子、目の見える「手引き」とともに、三味線を弾く旅芸人となる。やがて、一人歩きをすることに。旅先でさまざまな人と交流し、小さな幸せをかみしめる。かつて東北地方に実在した「瞽女(ごぜ)」をモチーフとする連作短編集。

■『ペコポコ』 今日マチ子 PHP研究所 1000円(税別)
 女の子のペコと男の子のポコ、双子の何気ない日常を切り取った2ページマンガ。風でスカートがめくれるとドキドキするのはなぜ? お城みたいなふしぎなホテルの「空」「満」のランプの意味は? 古き良き児童マンガのノリに、ちょっとエッチなスパイス入り。

■『5つ数えれば君の夢』 今日マチ子 秋田書店 900円(税別)
 5人組アイドルグループ・東京女子流をモデルにした同名映画のコミカライズ……と思いきや、今日マチ子ワールド全開のオリジナル作品に仕上がっている。アイドルにとっては、学校が夢で、ステージの上が現実。爽やかな希望とかすかな絶望が横たわる、全5編。

■『cocoon on stage』 今日マチ子、藤田貴大 青土社 2400円(税別)
 昨年夏、劇団「マームとジプシー」によって演劇化された自作『cocoon』(2010年刊)を巡る一冊。原作にはない学校の風景を描きながら、リフレインの技法が多用された戯曲、舞台公演の一部コミカライズ(!)、クリエイター座談会など、バラエティに富んだ内容となっている。

■『いちご戦争』 今日マチ子 河出書房新社 1400円(税別)
 ブログ「センネン画報」連載の戦争画シリーズをまとめた一冊。少女たちがフォークの武器を持ち、血ではなくいちご味のお菓子を流す姿がサイレント形式で綴られていく。書籍化にあたりテキストを書き下ろし、冒頭からエンディングまで連なる一冊の物語に進化した。

構成・文=吉田大助/ダ・ヴィンチ9月号「コミック ダ・ヴィンチ」